10月28日、ニコンがフルサイズミラーレスのフラッグシップモデル「Z 9」を正式に発表しました。「狙った被写体を確実にとらえるAF性能と連続撮影性能」「8K/30pに対応する高画質動画機能」「光学ファインダー並みの自然な見え方で、連続撮影時も消失しない電子ビューファインダー」「縦位置撮影時も有効な4軸チルト式液晶を搭載しながらD6並みの堅牢性を確保したボディ」など、デジタル一眼レフのフラッグシップモデル「D6」を超える性能に仕上げたのが特徴。

キヤノンやソニーのフラッグシップ機を上回る部分も多く、名実ともに「ニコン復活」を感じさせる意欲的な1台に仕上げてきました。ファインダーや堅牢性に物足りなさを感じてD6などの一眼レフを使い続けてきた人も、納得してミラーレスに移行できるカメラといえるでしょう。

価格はオープンで、予想実売価格は70万円前後。発売は2021年内の予定。予約は11月2日の10時から受け付けます。

  • すでに外観や一部の機能を公開していた「Z 9」が正式にお披露目に。D6など一眼レフのフラッグシップモデルを愛用してきた人も、満を持して乗り換えを検討できる1台に仕上がった

Z 9のおもな特徴

Z 9のおもな特徴は以下の通り。

  • 撮像素子は有効4571万画素の積層型CMOSセンサー。データの読み出し速度はZ 7IIの約12倍に
  • 画像処理エンジンは新開発のEXPEED 7。処理性能はZ 7IIの約10倍に
  • 動画は8K/30pの撮影に対応(最長125分)。ProRes 422 HQにも出荷時から対応。今後、ファームウエアのアップデートで8K/60pに対応予定。EXPEED 7により動画の画質が向上
  • 感度はISO64~25600、Hi 2(ISO102400相当)の拡張にも対応
  • ミラーレスでは初めて3D-トラッキングに対応。ディープラーニングを利用して被写体を高精度に検出して追尾する。被写体検出は車、バイク、自転車、列車、飛行機などを含む9種類に対応
  • ニコンのフルサイズセンサー搭載カメラでは初めてメカシャッターを省略。高速データ読み出し対応の撮像素子とEXPEED 7により、電子シャッターでの撮影でもローリングシャッターゆがみはほとんどない
  • AF/AE追従時の連写速度は20コマ/秒
  • 120コマ/秒で11メガ相当の超高速撮影が可能な「ハイスピードフレームキャプチャ+」
  • 高速連写時もブラックアウトしない電子ビューファインダー「Real-live Viewfinder」。同じコマが表示されたりコマが飛ぶ不自然な表示を排除。輝度はこれまでで最高の3000cd/m2。光学系も工夫し、光学ファインダーに匹敵する見え具合に
  • Zシリーズで初めて縦位置グリップ一体型のボディを採用。D6の操作性を色濃く継承
  • 体積はD6比で約20%コンパクトに、ボディはマグネシウム合金製
  • 縦位置撮影時にも対応する4軸チルト式の背面液晶
  • VRユニットをロックする機構を追加、持ち歩き時などにセンサーがダメージを受けないように
  • 電源オフ時に自動で閉じ、センサーを守る「センサーシールド」を搭載(撮影時のシャッター代わりにはならない)
  • バッテリー撮影枚数は約700コマ、動画撮影は約170分

当初からメカシャッターなしで設計したわけではない

Z 9の特徴が、メカシャッターを搭載しておらず、すべて電子シャッターでの撮影となること。メカシャッターを搭載していないカメラは、すでに販売終了となった「Nikon 1」シリーズがありましたが、フルサイズセンサー搭載モデルでは初めてとなります。

電子シャッターだと、素早く動く被写体がゆがんでしまう「ローリングシャッターゆがみ」の発生が気になります。Z 9では、データの高速読み出しに対応した積層型CMOSセンサーと処理性能を高めたEXPEED 7の組み合わせにより、ゴルフのスイングでもゆがみが気にならないレベルに抑えたとしています。

ニコンによると、当初からメカシャッターレスで設計していたわけではないそう。積層型CMOSセンサーとEXPEED 7を組み合わせるとローリングシャッターゆがみを抑えた撮影ができることが分かり、メカシャッターを省くことを決断したといいます。高速かつ精密に動くシャッターユニットがなくなることで、故障の可能性が大幅に抑えられるメリットもあります。

EVFはデータ処理や光学系の工夫で表示を劇的に改善

これまでのミラーレスのEVF(電子ビューファインダー)で指摘されていた欠点を解消し、一眼レフの光学ファインダーを上回る表示性能にしたのが、Z 9のEVF「Real-live Viewfinder」の特徴です。

まず、高速連写中も表示が黒くならず被写体を表示し続けるブラックアウトフリーになった点が挙げられます。他社のフルサイズミラーレスもブラックアウトフリーをうたっていますが、状況によって同じコマを連続で表示したり、コマが飛ぶ場合も。Z 9ではそれを避けるため、撮像素子がとらえたデータを記録用とは別にEVF用にも確保し、専用の処理回路でよどみなく表示できるようにしています。

EVFに用いられる有機ELパネルのドット数は標準的ですが、輝度が300cd/m2と最高輝度のパネルとしています。さらに、接眼部の光学系の設計もこだわり、被写体をクリアに確認できるようにしたといいます。

  • 縦位置グリップ一体型のボディを採用。横位置、縦位置ともにしっかりとしたホールド感だ

  • 操作性はD6にできるだけ近づけている印象。丸型のファインダー接眼部が誇らしい

  • 撮像素子は47メガピクセルの積層型CMOSセンサー。かなり高画素だが、データの読み出し速度はZ 7IIの約12倍に達するといい、ローリングシャッターゆがみの低減に貢献している

  • 電源オフ時に自動で閉じてセンサーを守るセンサーシールドを搭載。一見するとメカシャッターのようだが、撮影時は機能しない

  • 背面の液晶パネルは4軸チルト式。オーソドックスな横位置の状態

  • 縦位置撮影時もチルトできるのが特徴だ

  • 縦位置でも横位置とほぼ変わらない操作性やホールド感で撮影できる。三脚穴は光軸上に用意

  • 情報表示パネルはZシリーズで共通の多機能パネルで、サイズは大きくなっている。「Z 9」のロゴはここにあった

  • 拡大縮小やメニュー、再生などのボタンは液晶パネル右側に固めて配置され、横位置でも縦位置でも操作しやすくしている

  • D6(右)と並べたところ。高さがだいぶ抑えられているのが分かる。前面の3つのファンクションボタンは継承している

  • チルト式液晶の採用で操作ボタンの配置は差が見られるものの、極力D6の操作性を継承すべく工夫しているのが分かる

  • 左肩にはオーソドックスなモードダイヤルがなく、モードボタンとしているのもDのひとケタ機風だ

  • メインコマンドダイヤルの形状も一眼レフ伝統のスタイルとした

  • Z 7II(右)がとても小さく見える

  • 操作ボタン類の配置はほとんど同じだが、再生ボタンの位置などわずかな違いも

  • 大きく異なるのが上面で、モードダイヤルやメインコマンドダイヤルはD6風に改められた

  • ニコン伝統の「24-120mm/F4」の標準ズームレンズがZマウント「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」に。105mm止まりでなく120mmまでカバーしており、使い勝手がよさそう。希望小売価格は154,000円で、2022年2月発売予定

  • S-Lineに属する高画質モデルだ

  • 人気の100-400mmの超望遠ズームもついにZマウント版「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」が。80mm始まりではない代わりに、かなり軽量に仕上げた。希望小売価格は385,000円で、2022年2月発売予定

  • ズーム時の重心の移動を最小限に抑えたのがポイント。写真はテレ端時

  • ワイド端時

  • こちらもS-Lineに属するレンズだ

  • マウントアダプターは第2世代の「FTZ II」が登場。三脚座がなくなり、円形に近いコンパクトな形状になった。希望小売価格は36,300円で、2021年内に発売予定

  • 従来のFTZから少し軽くなったが、性能は変わらないという

  • Z 9にFマウントの標準ズームレンズ「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」を装着したところ

  • D6などDの“ひとケタ機”を愛用している人も満足できるミラーレスに仕上がったといえる

  • メモリーカードスロットはCFexpressのダブルスロットを採用

  • フルサイズのHDMI端子やマイク端子などは左側面に配置

  • 動画撮影は、標準でProRes 422 HQに対応する

  • 感度はISO25600までで、Hi 2.0までの拡張感度にも対応

  • レリーズモードの設定画面

  • 連続撮影コマ数は「∞」の設定項目が誇らしい

  • 電源オフ時にセンサーを保護するセンサーシールドは、機能を働かせない設定も可能

  • 撮影時の電子シャッター音は消すことも可能

  • 動画は8K/30pの撮影にも対応する

  • 撮像素子:5237万画素フルサイズ積層型CMOSセンサー(有効4571万画素)
  • ダスト低減機能:イメージセンサークリーニング
  • ボディ内手ブレ補正:5軸補正
  • 記録メディア:CFexpress カード(Type B)、XQDカード
  • ファインダー:0.5型 Quad-VGA OLED(約369万ドット)
  • 視野率:約100%
  • 倍率:約0.8倍(50mmレンズ使用時)
  • シャッタースピード:1/32000~30秒
  • 連続撮影速度:約10~20コマ/秒(高速連続撮影)、約120コマ/秒(ハイスピードフレームキャプチャ+)
  • ISO感度:ISO64~25600(ISO102400相当の拡張も可能)
  • オートフォーカス:ハイブリッドAF(位相差AF/コントラストAF)
  • フォーカスポイント:493点
  • 動画記録画素数:7680×4320(8K UHD)30p/25p/24p、3840×2160(4K UHD)120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p、1920×1080(Full HD)120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p
  • 最長記録時間:125分
  • 背面液晶:チルト式3.2型TFT液晶モニター(タッチパネル)、約210万ドット
  • Wi-Fi:IEEE802.11b/g/n/a/ac
  • Bluetooth:Bluetooth Ver.5.0
  • バッテリー撮影枚数:約740コマ
  • バッテリー撮影時間:約170分
  • 本体サイズ:W149×H149.5×D90.5mm
  • 重さ:約1340g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)、約1160g(本体のみ)