米国時間の10月27日からオンラインで開催されているIntel Innovationにおいて、Alder Lakeこと第12世代Coreプロセッサの詳細が公開されたので、早速その情報をお届けしたい。

  • Alder Lakeこと第12世代Intel Coreプロセッサ

    Alder Lakeこと第12世代Intel Coreプロセッサ

製品情報その他

Alder Lakeの内部構造などの概略は、Intel Architecture DayHot Chips 33で公開されており、ここで内部構造などについてはある程度語られている。その一方でSKUとか登場時期については明らかにされていなかった。

さてそのAlder Lakeであるが、Desktop向けとMobile向けの2種類3製品が用意される(Photo01)という話は既にArchitecture Dayで公開されていた。このAlder LakeはP-Core(Performance Core)とE-Core(Efficient Core)のHybrid構成になっていると(Photo02)というのも既報の通り。これをうまく扱うために、Intel Thread Directorがハードウェア的に搭載されている、というのもこちらの記事で紹介している。

  • Photo01: パッケージサイズがMobileのみ公開されたのが、強いて言えば新情報。

では新情報だが、まずL3は最大30MBになることが発表された(Photo03)。こちらの図では、LLCのTile(というかBlock)は最大で10個搭載されるので、つまり1個あたり3MBになる計算だ。これまでは2MBだったから、大容量化が図られたことになる。

  • Photo03: LLCはP-CoreとE-Core、更にGPUでも共有されるという話だった。ただしGPUからのCache Coherencyは一部制限があるらしいのだが、これの説明を行っていたページが消えてしまったのは残念。多分また後で復活すると思われる。

また、Alder Lakeは業界初のPCIe Gen5/DDR5対応プラットフォームとなるが、これに合わせて投入されるIntel 600シリーズチップセットに関する情報がこちら(Photo04)。この600シリーズは最大28レーン(PCIe Gen4 x12+PCIe Gen3 x16)と2.5GBASE-TへのNative対応が謳われている。細かいところではUSB 3.2 Gen2x2の追加とか、新たにIntel Volume Management Deviceという機能も追加されたようだが、この辺りの詳細はまだ不明なままである。

  • Photo04: DMIがやっとPCIe Gen4 x8になり、またPCHからPCIe Gen4レーンも出る事になった。

またこれは一部製品に限られる話であるが、更にオーバークロック性能が高められているとする(Photo05)。具体的には、Alder Lakeではこんなオーバークロック機能が提供される(Photo06)。細かいところでは、コア単位でのHyperThreadingの有無が新たに追加された様だ(Photo07)。また新たに、Intel Extreme Tuning Utility 7.5が提供されるそうだ(Photo08)。DDR5に関しては、新たにDDR5に対応したXMP 3.0が提供されることになった(Photo09)。このXMPの特徴をまとめたのがこちら(Photo10)。Profileの数が増え、電圧制御とかCRC、更にProfileの書き換えなども可能になっている。このXMP 3.0対応メモリを利用した場合、Dynamic Boost Technologyが利用可能になる、という話であった(Photo11)。

  • Photo05: そもそもP-Core/E-Coreが動作周波数が違う事もあり、内部的にかなりの部分が非同期構成になっているようで、それもあってオーバークロック性が高まったということらしい(何か間違っている違う気はするが)。

  • Photo06: ついにBCLKをチップセット内部で生成できるようになった模様。

  • Photo07: 全部で20を超える設定が可能、とされているが具体的な項目はもうちょっと後にならないと公開されない模様。

  • Photo08: 従来はコアが1種類だったが、Alder LakeはP-CoreとE-Coreの2種類になるので、改めてE-Coreの制御とかモニタリングが可能、とされた形。

  • Photo09: "Corsairから制御ソフトが提供される"とあるが、別にCorsairだけが提供するという訳ではない模様。

  • Photo10: 原稿執筆時点では、まだSpecificationは一般公開されていないようだ。

  • Photo11: ついにメモリクロックまで動的に変化する様に。

これに絡む話であるが、ちょっと気になる情報も公開された。Alder Lakeのトップエンドは、PL1(=TDP)が125W、PL2が241Wに設定されているそうで、これはRocke LakeのPL1=125W、PL2=251Wよりもちょっとだけ低いが、問題は倍率アンロックなK SKUで、PL1 Tauが事実上∞になる(Photo12)。勿論Thermal Throttlingはあるが、逆に放熱に問題が無ければずーっとPL2のままで動作するという話である。かなりPower Hungryな構成になっている訳だ。ちなみにこれはK SKUだけで、他のSKUはちゃんとPL1 Tauが設定されている模様だ(時間は公開されていないが、Rocket Lakeが56secだったから、Alder Lakeもこのあたりではないかと思う)。

この、更に増えた消費電力(=更に増えた発熱)に対処するため、Dieの薄型化に加え、STIM(Solder Thermal Interface Material:ダイとパッケージの間を埋めるはんだ)も薄型化された、としている(Photo13)。

  • Photo12: 要するにTDPが241Wということに。

  • Photo13: STIMも薄型化された。

最後に性能評価の数字を。P-CoreのIPCの比較は以前示されたが、今回はGaming Performane(Photo14)が示されたほか、Ryzen 9 5950Xを含めた比較(Photo15)やContents Creation系(Photo16,17)の数字が示された。またSingle Thread Performanceの比較がこちら(Photo18)。Comet Lake比でP-Coreは28%向上するとしている。そしてエネルギー効率という意味では、E-CoreはComet Lake比で1/4程度の消費電力で同じ性能ということで、大幅に向上している、とする(Photo19)。

  • Photo14: これはゲームのフレームレート比較。

  • Photo15: GPU負荷が低いものほどフレームレート差が出る、というある意味筋の通った傾向である。

  • Photo16: ものによってはCore i9-11900K比で2倍の性能になるとする。

  • Photo17: 3Dモデリング系色々。

  • Photo18: むしろE-CoreがComet Lakeと同等以上である、というのがすごい。もっともこれはIPCの比較であって、動作周波数そのものはE-CoreがComet Lakeほど上がらないと思われるので、絶対性能ではまだComet Lakeの方に分がありそうだが。

  • Photo19: これを見ると、P-Coreは125W→241Wまで引き上げても性能は20%しか上がらないことが判る。であれば、むしろ125Wに制限して使った方が賢明なのでは? と思わなくもない。

ちなみに発売開始の時点で用意されるのは、Core i9-12900K/KF、Core i7-12700K/KF、Core i5-12600K/KFの6製品のみである(Photo20)。これ以外のSKUについては2022年第1四半期に追加投入される予定とされる。ただし今年第4四半期中に数十万個を出荷予定("hundreds of thousands of 12th-gen K-skew unit in Q4")で、2022年第1四半期末までには200万個以上を出荷する計画との事であった。

  • Photo20: E-CoreはCore i9のみ8コアで、Core i7/i5は4コアのみとなっている。ちなみに価格は現時点では未公表。

Unboxing

さて、実は筆者の手元にはAlder Lakeの評価キットが届いているので、まずはご紹介したい。パッケージ(Photo21)は評価キット専用のもので、市販品とは異なる。蓋を開けるとなにやら内蓋が(Photo22)。この内蓋を外すとCPUが出現する(Photo23)。ちなみに内蓋は表がダイの写真(Photo24)、裏がコード名のもとになったと思しきAlder Lakeである(Photo25)。ちなみにこれどこなのかはっきりしないが、ワシントン州にあるAlder Lakeじゃないか、と思う。

  • Photo21: 寸法は270mm×270mm×65mm。ちょっと重い。

  • Photo22: 内蓋はアクリル製。

  • Photo23: ここしばらくのIntelの評価キットはCore i9とCore i5の組み合わせばかり。なぜかCore i7が無い。

  • Photo24: 「精密なダイ写真ゲットだぜ」と一瞬喜んだが、表面が荒らしてあってスキャナにかけても綺麗に取り込めなかったのが残念。スタンド付き。

  • Photo25: Google Mapで"Alder Lake"を検索すると10近くヒットする。そこで"Alder Lakeという名前の湖はUSとカナダに一杯あるんだけど、一体これはどこにある湖なんだ?"と確認したが、担当者も判らなかった模様。

パッケージは紙箱に入った形で提供される(Photo26)が、中は通常のブリスターパックである(Photo27,28)。

CPUそのものはこんな感じ(Photo29,30)である。Rocket LakeベースのCore i9-11900Kと並べるとこんな具合(Photo31,32)。加えて言えば、厚みもはっきり違っている(Photo33)。

  • Photo26: LGA1200の紙箱は63mm×65mm×10mm(実測値)だったが、LGA1700は65mm×70mm×12mm(実測値)とちょっと大型化。

  • Photo27: 明らかに縦に長い。

  • Photo28: もう型番は明らかに量産品になっている。

  • Photo29: 左下の三角マークが、ちょっと大きくなっている。

  • Photo30: 裏面のパスコンの配置はCore i9(左)とCore i5(右)全く同じ。

  • Photo31: Core i9-11900K(左)は37.5mm×37.5mm、Core i9-12900K(右)は37.5mm×44.5mm(実測値)となっている。

  • Photo32: こうしてみると、Rocket Lakeのパスコンは随分取っ散らかっている印象を受ける。またLGAの接点そのものも微妙に小さくなっているっぽい。

  • Photo33: Core i9-11900K(左)は実測で4mm厚、Core i9-12900K(右)はやはり実測で5mm厚(どちらも裏面のパスコンの厚みは含まず)となっている。

これと組み合わせるマザーボードだが、今回はASUSよりROG MAXIMUS Z690 HEROをお借りした(Photo34~47)。ところでCPUソケットを見てみると、CPUクーラー取付穴の位置がLGA1200用と非常に似ている。試しにLGA1200用クーラー(Core i3-10100に付属の純正クーラー)を取り付けたところ、すっぽりと収まった(Photo48,49)。もっとも取付穴そのものの位置はLGA1200と同じであっても、Photo33で判るようにCPUそのものの厚みが異なるので、LGA1200用のクーラーはそのままでは装着できない。それもあって、今回はやはりASUSよりROG RYUJIN II 360を借用した(Photo50,51)。

  • Photo34: 今回ROG MAXIMUS Z690 HEROは化粧箱に入って届いたのだが、なんと重量5.4Kg。表面にアクリル板が組み合わされているから仕方ないのかもしれないが。

  • Photo35: 化粧箱を横から見た図。厚みがヤバい。

  • Photo36: 中にはいつものROGのパッケージが。ちなみにこの時点で重量3.8Kg。

  • Photo37: マザーボード表面。配置そのものは典型的なもの。

  • Photo38: 裏面から。製品ロゴの下に見えるのはPCIe Switchと思われる。

  • Photo39: CPU周辺。VRMが20-way構成という恐ろしい代物だが、PL1が241Wと聞くとそれもやむなしという気もする。

  • Photo40: CPUソケット。こちらにもパスコンが山のように。

  • Photo41: バックパネル。HDMIが縦置きなのが特徴的。こちら側にはUSB 3.2 Gen2x2端子は見当たらない。

  • Photo42: 補助電源コネクタは当然の様に8pin×2。

  • Photo43: 24pinコネクタの横にあるのは、PCIeスロットへの電源供給用コネクタ。ここにGPU用の6pinコネクタを装着すると、PCIeスロット経由で60Wの供給が可能になるそうだ。

  • Photo44: このボタンを押すと、PCIeスロットのカードリテンションが外れるという便利な仕組み。しばしば煩雑にGPUを差し替える筆者には非常にありがたい。

  • Photo45: 上側のPCIeスロットの上にM.2スロットが一つ、2番目のPCIeスロットの下にM.2スロットが2つ、それぞれカバーの下に隠れている。

  • Photo46: SATA×6+2×USB 3.2 Gen1×2。その右にあるのがUSB 3.2 Gen2×2コネクタ。フロントパネルに引っ張り出すのを前提にしているようだ。

  • Photo47: PCIe x16スロットに装着できる、NVMe M.2 SSD×4装着可能なアダプタが同梱される。

  • Photo48: 丁度うまく収まっているのが判る。

  • Photo49: 裏面から見ると、4つの取付穴からCPUクーラーの突起が突き出しているのが判る。

  • Photo50: ちなみにこれとマザーボードが入った箱は軽く総重量が10Kgを超えており、担当編集曰く「マザボキットは腰に来る重量物だったのでご注意ください」。

  • Photo51: 内容物一覧。LGA1700対応のリテンションキットが付属している。Rocket Lakeですら120mmラジエターでは熱暴走しがちだったことを考えると、Alder Lakeは360mmラジエターは半ば必須になるかも。

またROG MAXIMUS Z690 HEROはDDR5対応のマザーボードである。そこで今回はT-Force Delta RGB DDR5 16GB×2も借用した(Photo52~54)。

  • Photo52: 製品ニュースはこちら。勿論XMP 3.0対応となっている。

  • Photo53: XMP 3.0利用時はDDR5-6000 CL40 1.35Vとして動作する模様。

  • Photo54: 手持ちのDDR4 DIMMと並べてみた。切り欠けの位置が異なっているので、誤挿入は不可能である。

ということで取り急ぎ評価機をご紹介した。実際の性能評価などは、もう少々お待ちいただきたいと思う。