NTTドコモが2022年1月にNTTコミュニケーションズ、エヌ・ティ・ティ・コムウェアを子会社化します。この『新ドコモグループ』では、スマートライフ+法人事業で収益の過半を創出するとともに、通信事業では「期待を上回る顧客体験」を実現していく考えです。

  • 3社の社長によるフォトセッション

    NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、エヌ・ティ・ティ・コムウェアによる「新ドコモグループ」の概要が明かされた

グループ再編の狙いと今後

両社の子会社化を発表した記者会見で、NTTドコモの井伊基之代表取締役社長(CEO)は「NTTコミュニケーションズ、エヌ・ティ・ティ・コムウェアをグループに迎え入れて、新たな世界の実現に向けて挑戦していきます。これまで3社が培ってきたテクノロジーをオープンにして、パートナーと共にイノベーションを起こし、社会に大きな変化をもたらしていきます」と意気込みました。

  • NTTドコモの井伊基之代表取締役社長

    NTTドコモの井伊基之代表取締役社長(CEO)

  • 新しいドコモグループのキャッチフレーズ

    新しいドコモグループの挑戦。キャッチフレーズは「あなたと世界を変えていく。」

3社では経営方針を統一して機能を統合し、迅速な意思決定と機動的な運営を実現していくと説明します。井伊社長は、機能統合によるシナジーについて「法人事業の拡大」「ネットワークの競争力強化」「サービス創出・開発力強化とDX推進」の3つを挙げました。

  • 機能統合によるシナジー

    機能統合によるシナジー。モバイルからサービス・ソリューションまで事業領域が拡大される

  • 新しいドコモグループの事業モデル

    新しいドコモグループによる、スマートライフ事業/法人事業/通信事業の位置づけ。成功モデルはグローバルにも展開していく

これまでドコモの事業を牽引してきたのは、法人事業、およびスマートライフ事業でした。これをさらに伸ばしていきます。法人事業についてはNTTコミュニケーションズを中心にして営業体制を強化し、移動 / 固定の両方を融合させたサービス・ソリューションを提供。2025年度には売上高2兆円以上を目指します(ちなみに現在の3社の法人事業の利益の合計は1.6兆円ほど)。

  • 法人事業について

    法人事業について

そして成長の原動力となるのが、スマートライフ事業です。会員基盤・データ活用により新たな生活価値を創出するとともに、金融・決済、映像・エンタメなど既存領域を強化。「融資」にも取り組みます。このほか、新規領域の拡大にもチャレンジしていくことで2025年には収益を現在の2倍まで拡大するとしています。井伊社長は「スマートライフ+法人の事業収益について、現在は45%ほどですが、これを50%超まで成長させます」としました。

  • スマートライフ事業について

    スマートライフ事業について。映像・エンタメ分野ではNTTドコモとNTTぷららの統合を行う

通信事業では5Gの早期拡大に加えて、NTTコミュニケーションズのネットワーク機能を統合することで高品質化とコスト削減を実現。低廉で使いやすい移動 / 固定サービスを提供します。

  • 通信事業について

    通信事業について。2021年12月から5G通信のスタンドアローンも提供予定

そして、期待を上回る顧客体験の実現に向けて「販売・手続きはデジタルシフトするなど、販売チャネルの変革にも取り組んでいきます。全国に2,300店ほどあるドコモショップは今後、端末の販売をする場所からお客様をサポートする場所、あるいは地域のICT化をサポートする場所へとシフトしていきます」と明言しました。

  • 期待を上回る顧客体験の実現

    期待を上回る顧客体験の実現にむけて

グループ再編には続きがあります。ステップ2として2022年度 第2四半期を目処に、各社が持っている法人事業はすべてNTTコミュニケーションズに統合。同社が持つ移動 / 固定の両ネットワーク機能はドコモに統合します。またNTTコミュニケーションズのコンシューマ向け事業はNTTレゾナントに統合。NTTレゾナントはドコモが完全子会社化する方針です。映像・エンタメ分野では、NTTぷららをドコモに統合。このほかドコモ・システムズはエヌ・ティ・ティ・コムウェアに統合し、同社ではソフトウェア開発・運用を強化します。

  • グループ再編のステップ

    グループ再編は2ステップで段階的に進めていく

NTTコミュニケーションズの丸岡代表取締役社長(CEO)は、法人事業の今後について「お客様に提供できる価値が大きくなると感じています。現在、固定系のサービスやソリューションをベースにしたDXをお客様と共に進めているところですが、産業、お客様の社会生活にはモバイルが浸透しています。機能統合により、一段高いDXを作り上げられると期待しています」と説明。

また、エヌ・ティ・ティ・コムウェアの黒岩真人代表取締役社長は「これまで培ってきたソフトウェア開発力を発揮することで、新ドコモグループにおける事業成長のドライバーとなる3つの事業に注力していきます。それは新たな顧客体験の創出、次世代ネットワーク・プラットフォームの柔軟で拡張性の高いアーキテクチャ、およびDXの加速です。我々、新ドコモグループでは革新的サービスや、DXの成果をいち早く提供することで”あなたと世界を変えていきます”」としました。

  • NTTコミュニケーションズ 丸岡代表取締役社長、エヌ・ティ・ティ・コムウェア 黒岩真人代表取締役社長

    NTTコミュニケーションズの丸岡代表取締役社長(左)と、エヌ・ティ・ティ・コムウェアの黒岩真人代表取締役社長(右)

やっと必要な武器が揃った

このあとの質疑応答では、記者団の質問に井伊社長らが対応しました。

通信料金の値下げなどを含め、今後の市場環境の変化について聞かれた井伊社長は「技術の進歩とともに、これからも引き続き通信料金は値下げされていく方向で間違いないと思います。我々の基盤事業は通信です。これをベースにしながらも、そのうえでご提供できるサービスを開発し、事業の柱にしていかなければならないとの認識です。(競合他社も含めて)各社ではスマートライフ的なもの、あるいは法人のお客様に向けたソリューションなどを展開しています。通信だけにとどまらず、グローバルな競争になってきました」と語ります。

さらに「こうした環境のなかで、ドコモは移動体通信が中心、NTTコミュニケーションズはネットワーク、クラウド、データセンター事業が中心で、コムウェアもソフトウェア開発に特化した会社でした。つまりバラバラだった。競合他社は、こうしたものをひと通り取り揃えて戦っています。パートナーと組んでいるところもある。我々としては、やっと必要な武器が揃って、一体となって進められる段階に立てたかな、というところです。これから、他社に勝てるような競争力のあるサービスを出せるか、コストを下げていけるか、今後の取り組みのイチバン大事なところです」と説明しました。

NTTレゾナントは存続へ

個人向け事業のNTTレゾナントを吸収せずに存続させる意味について聞かれると「NTTレゾナントは、新しいMVNO事業者として、あるいはOCNを提供する事業者として変化していきます。この領域の競争は激しいものがあります。自由に競争できる機動力のある経営をしたい。そして事業責任を個々で明確にしておきたい、という考えがあります。そこで、個別の子会社のままで進めていきます。ほかのMVNO事業者さんと横並びの関係を、今後もしっかり作っていくということです」との回答。

NTTレゾナントをサブブランドにする考えについては「現時点の考えでは、取り込んでサブブランド化することは考えていません。MVNOの市場で競争を加速させることも大事ですし、OCNモバイルONEのほか、他の事業者さんとも我々はエコノミー連携する機会があります。MVNOによるサービスの充実をお手伝いする方が、ドコモとしては最適な選択肢だと考えています」としました。

NTTコミュニケーションズとの連携について

あらためてNTTコミュニケーションズとのシナジーについて聞かれると「現在のドコモの法人事業は、回線サービスが主流です。事業者様向けのアプリを入れた携帯電話・スマートフォンを提供しています。いわゆるDXや、そのほか移動/固定を融合したサービスが提供できていなかった。でも今回の統合により、NTTコミュニケーションズが持っているサービス、ソフトウェア、システムも使えるようになります。クラウドの基盤サービスも利用できるため、中小企業さまに、より多くのサービスが提供できるようになる。一方で、大企業を顧客に抱えるNTTコミュニケーションズもモバイルという武器を組み込んでいけます。さらに成長できる、ということです。両社が足りなかったところを、お互いに補える。これから数字も伸ばしていきます」と述べました。

  • ドコモ ビジネス

    この日、新ドコモグループの法人事業の新しいブランド「ドコモ ビジネス」のロゴも発表された

NTTコミュニケーションズの丸岡氏は「現在、市場では様々な事業が融合しています。もはや世の中は『移動』と『固定』という産業構造ではなくなりました。そうしたマーケットに対応できるようになるのがイチバンのメリットです。お客様とDXをするにも、固定系だけでは限界があります。ドコモの5G、IoTなどのサービスを一緒に提供できればDXの価値も上がると考えています」といいます。

そして「お客様にはワンストップで対応できるでしょう。アフターコロナでは分散型の社会が広がっていきます。地域のお客様にも、回線レベルだけでないところのDXが必要になる。ドコモの地域におけるブランド力、営業力、そしてNTTコミュニケーションズのソリューション力などを合わせて提供することで、トータルで4,000億円の増収をはかっていきます」としました。

  • フォトセッション写真

    フォトセッションにて