この作品で描かれる世界各地の人物模様のうち、日本のパートで主人公を演じるのは、海外でも活躍中の俳優・忽那汐里さんです。忽那さん演じる大和美月は、宇宙開発を行う機関「JASA」の管制室で有人宇宙船の通信部門を担当するエンジニア。菊地凛子さん演じる宇宙飛行士の村井日向とは恋人関係にあり、第1話で美月は日向が船長を務める「ほし-12」を衛星軌道へ送り出します。

若く優秀で、自分の思いを貫く強さを持つ美月は、物語後半でストーリーを大きく動かす鍵を握る人物です。同時に、プライベートな感情を非常に繊細に表現する立ち位置でもあり、その両面を忽那さんは説得力を持って見せてくれます。『インベージョン』配信開始を前に、お話をうかがいました。

誇り高い、新しい世代の姿を演じたい

忽那汐里
1992年オーストラリア生まれ。14歳で日本に移り、2013年に『許されざる者』で日本アカデミー賞 新人俳優賞受賞。近年は『デッド・プール 2』『マーダー・ミステリー』など海外作品でも活躍中。

――今回、初めての海外ドラマご出演ということですが、映画の現場との違いはありましたか?

まず圧倒的に撮影期間が長いことですね。コロナの影響で半年ほど中断を挟みましたが、撮影は実質1年くらいやっていたと思います。それから、一人の監督が全編を撮るのとは違って、数人の監督がいて、周囲のスタッフの方も変わります。環境が変わる中で新しいスタッフの方々とコミュニケーションしながら撮影していくのは、新鮮な体験でした。

――日本でのロケもあったようですね。

はい。室内のシーンはほぼニューヨークのスタジオで、一部はロンドンで撮影しました。ロケでイギリス郊外にも行きました。日本は意外に少なかったのですが、お寺とか、渋谷の交差点など、日本にしかない場所での撮影をしています。

――あのスクランブル交差点は本当に渋谷だったんですか? 合成かと思いました!

そうなんですよ。もちろん許可は取っているんですけど、撮影中はずっとヒヤヒヤしていました(笑)。

――コロナの影響で制作が一時中断されたとのことですが、一番大変だったのはどんなことですか?

今までのキャリアで、1つの作品が途中で止まって時間を置いてからまた戻るというのは、初めての経験でした。特に今回は心情が重いというか、チャレンジングな役を演じる中で、半年のギャップを経ていざ撮影へ戻った時に、半年前と同じような気持ちがまだ自分の中にあるのか… 物理的なことよりそういった心情的な面がすごく心配でした。そういう私の役づくりの面で、今までにない課題があったと思います。

――女性でありセクシャルマイノリティである美月は、働く中でも社会の中でも味方を得にくい立場にありながら、パワフルで真っ直ぐな人柄が表現されていました。どんなふうにキャラクターを造形していかれたのでしょうか?

撮影にあたってJAXAを見学させてもらって、女性のエンジニアの方にもお会いしましたが、実際に美月のような若い女性があの位置に立つには、やはり相当な度胸のある人でないとたどり着けないだろうと想像しました。そこから、自分のアイデンティティや、セクシャリティにも誇りを持っている、日本の新しい、若い世代の女性像として、強さやプライドみたいなものを表現したかった部分はあります。ことさらそれを表に出すわけではないんですけど。

――なるほど、彼女を表すのに「誇り高い」という表現はピッタリですね。もう一つ、菊地凛子さんとの共演シーンがとても印象的でした。映像の中で一緒にいる時間は短く断片的なのですが、二人の深い結びつきがよく伝わってきました。

凛子さんとはニューヨークでの衣装合わせの日に初めてお会いしました。初対面だったのですが、とても速いスピードでお互いに理解できて、もちろん私にとって大先輩ということもありましたけど、すごく安心できたんです。凛子さんとの撮影は初日からベッドシーンで、いきなりそういう撮影だと気まずくなることもあると思うんですけど、そんな気持ちは全然なくて、あのシーンも安心して、むしろ楽しく撮ることができました。それは本当に凛子さんの人柄のおかげだと思います。凛子さんとは撮影を通してお会いする機会が少なかった分、それが後々長い間彼女の役を想い続けるシーンで、すごく救いになったと感じています。

――確かに、一緒に写っていたシーンに比べると、彼女を想い続けて行動する時間がすごく長かったですね。

そうなんです! ずっと凛子さんのことで頭がいっぱいになって。凛子さんもまさかそんなに想われているなんて思っていなかったかもしれませんけど(笑)、常にそんな感じでした。

――最後に、日本のファンの方に向けてメッセージをお願いします。

はい。こういう舞台で、日本でも活躍している役者さんと共演して、日本の物語を描けたことを、とてもうれしく感じています。日本のみなさんにも馴染みある風景が、私のストーリーラインには出てくるので、ぜひ多くの方に観ていただいたいと心から思っています。

――ありがとうございました!