日欧共同の水星探査計画「ベピコロンボ」の探査機が水星への初接近に成功したことを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)が明らかにした。航行中に天体の引力と公転を利用して軌道と速度を変える「スイングバイ」を実施し、観測も行った。2025年12月に水星の周回軌道に投入するまで、さらに5回のスイングバイを計画している。
スイングバイは日本時間2日に実施。午前8時34分頃の最接近時には高度約200キロまで接近した。スイングバイは一般に、探査機が燃料の消費を抑え、遠い天体に効率よく向かうために行う。太陽からみて地球より内側にある水星や金星に向かう探査機は、これにより減速させる。また、速度をなるべく落としておけば、周回軌道投入時に燃料を節約できる。到着に時間はかかるが、燃料が浮く分、観測機器などを多く搭載できる利点がある。
18年10月に欧州のロケットで打ち上げられた後、地球を利用して1回、金星で2回の減速スイングバイを実施済み。水星での6回を含め、計9回行うのは惑星探査機では史上最多となる。次の水星スイングバイは来年6月に行う。
ベピコロンボでは、JAXAが磁場や大気などを調べる磁気圏探査機「みお」を、ESAが地形や重力などを観測する表面探査機「MPO」と、水星までの航行を担う推進装置などをそれぞれ開発。これらが連結した状態で航行し、水星に到着すると分離。みおとMPOが別々の軌道を周回して観測する。
今回のスイングバイにあたり、みおはほぼ全機器を使い、水星の磁気圏や周辺環境の観測を試みた。計画のプロジェクトサイエンティストを務めるJAXA宇宙科学研究所の村上豪助教(惑星超高層物理学)は「ついにゴールである水星に一瞬でも接近でき、これまでとは別格の感動がこみ上げた。しかも過去の探査機が未踏の、南半球の高度200キロまで接近した。観測による科学成果を強く期待している。到着後の観測にも直結する作業なので、データの処理や解析をしっかり進めたい」と述べている。