NECは10月7日、再生エネルギーの発電リソースを統合管理する「リソースアグリゲーション事業」の強化を発表した。

同事業は、2025中期経営計画で掲げた「社会価値創造へ向けた成長事業」である「カーボンニュートラル関連事業」の一環となり、同社は2025年度を目途に事業規模120億円を目指す。

  • 「カーボンニュートラル関連事業」の1つであるリソースアグリゲーション事業。2025年度を目途に事業規模120億円を目指す

事業の推進にあたって、NECは発電リソースを制御する「リソースアグリゲーター」(RA事業者)に参入しつつ、同事業者の業務を支援するSaaS「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」も提供する。

NECはRA事業者として、再生可能エネルギーによる発電に必要な太陽光発電設備や蓄電システムなどの分散型エネルギーリソースをICTで統合制御し、1つの発電設備のように機能させる「仮想発電所」(VPP)の仕組みを活用して、各エネルギーリソースの制御を行う。

太陽光や風力などの再生エネルギーを活用した電力システムは、自然条件によって発電の出力が変動するため、需要に合った電力供給が難しい。需要が供給を上回っても電気を安定して使えるようにするには、需要と供給を一致させるための電力、すなわち「調整力」の確保が求められる。

「調整力」は2021年4月に開設された「需給調整市場」で取引されており、NECは調整力の提供にあたって、分散型エネルギーリソースの制御で得た情報をRA事業者を束ねる「アグリゲーションコーディネーター」に提供する。

  • NECのリソースアグリゲーション事業のイメージ

「分散しているエネルギーリソースは比較的小型のものが多く、ネットワークを介した制御とIoT技術が必須となる。また、需要と供給を一致させるためには、需要者側の制御とコントロールを行うデマンドレスポンスが必要になり、各リソースの見える化にあたってはネットワーク、IoT制御とともにAIを活用する」と、NEC 執行役員の白石一彦氏は説明した。

  • NEC 執行役員 白石一彦氏

同時にNECは、需給調整市場に参画する他のRA事業者向けに、分散するエネルギーリソースを統合してクラウド上から管理・制御できる「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス」を提供する。同サービスを外部システムやエネルギーリソースと連携させることで、需要予測や制御可能量算出、リソースの管理・制御などが行える。

同サービスはVPP実証事業者向けに提供していたが、東京海上日動火災保険との協業によって、今回、自然災害による設備の損壊などの不可抗力に起因する追加コストを一部補償する機能を追加した。

東京海上日動火災保険 執行役員の船橋直靖氏は、「これまで培ってきたリスクマネジメントのノウハウをもとに、RA事業者がエネルギーリソースを管理するうえでの潜在的リスクをヘッジする手段を提供していきたい。保険も手段の一つとして活用しつつ、ビジネス推進の不安要素のカバーなどを検討している」と語った。

  • 東京海上日動火災保険 執行役員 船橋直靖氏

また、NECは自社グループ内で保有する蓄電システムや太陽光発電などから構成される「検証センター」を通じて、リソースアグリゲーションの効果やビジネスモデルの検証も行う予定だ。検証センター内には、遠隔から一元的にエネルギーリソースの管理・制御を行うリソースオペレーションセンターも設置される。

昨今、ESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)を念頭においた経営が求められる中で、企業は何らかの形で再生可能エネルギーの採用などの脱炭素への取り組みを進めている。

例えば、自社で太陽光発電設備を保有する、他の設備を利用する、利用するエネルギーをすべて再生可能エネルギー由来にするなどが挙げられる。しかし、これらの取り組みには投資が一定の必要で、時には投資コストが企業経営における負担となる。

そうした現状を踏まえて、NECは企業の設備をRA事業者として管理して、需給調整市場の調整力提供などから得られた対価を企業に還元する、「循環型ICTモデル」を提唱。事業として推進していくという。

  • 「循環型ICTモデル」のイメージ