東芝は9月22日、水溶液に含まれる成分や物質(有価物)を抽出する濃縮技術おいて、従来の濃縮方法に対して1/4の消費エネルギーと、2.4倍の高濃縮率を両立した正浸透膜法向け浸透圧物質の開発に成功したことを発表した。

同成果の詳細は9月22日から24日にかけて岡山大学にて開催される「化学工学会第52回秋季大会(オンライン)」にて発表される予定だという。

濃縮技術は、濃縮還元ジュースでも知られるもので、化学品や医薬品の製造、排水処理、レアメタルの回収など、さまざまな場面で活用されている。一般的には、水溶液を加熱して水分を蒸発させて有価物を抽出する蒸発法や、水溶液に高圧をかける(加圧する)ことで、水分と有機物を分離する逆浸透膜法(RO膜法)が用いられてきたが、加熱に大量の熱エネルギーが必要であったり、加圧に大量の電気エネルギーを必要とするなど、環境負荷が高いということが課題となっていた。また、熱や圧力の負荷が濃縮対象の有価物にかかり、劣化する可能性もある。

  • FO膜法

    従来の濃縮技術の概要 (資料提供:東芝)

同社では、こうした課題の解決に向け、水が濃度の低い水溶液から濃度の高い水溶液へと膜を通過して移動し、濃度を均等に保とうとする現象を利用した濃縮方法である正浸透膜法(FO膜法)に着目。FO膜法は、RO膜法と比べ高圧ポンプや加熱がいらないため、消費エネルギーが1/4に低減できるという。

また、FO膜法は、被処理液から浸透圧溶液に水を吸引した後、浸透圧溶液から水を分離・回収する2つのプロセスで実現されることから、新たに水と混ぜると水の相と浸透圧物質の相に分離し、CO2を反応させると水と浸透圧物質が溶解する「CO2応答型浸透圧物質」を開発。加熱することで、2つの相に再び分離することも確認し、この2つのプロセスに対応できることを確認したという。

  • FO膜法
  • FO膜法
  • FO膜法
  • FO膜法
  • FO膜法と新たに開発した新技術の概要 (資料提供:東芝)

実際に8%のNaCl水溶液を用いた模擬実験を行った結果、模擬液(NaCl水溶液)と浸透圧溶液を低圧ポンプを使って濃縮したところ、19%まで濃縮できることを確認したという。従来のRO膜法の濃縮率の上限は8%とされており、2.4倍の濃縮率を達成できることが示されたと同社では説明する。また、水相と浸透圧溶液相の分離についても、70℃の加熱で99%分離できることを確認したもしている。

  • FO膜法
  • FO膜法
  • 実際に行った実験の結果 (資料提供:東芝)

ただし、現在は各工程ごとに作業を行っていることから、今後は最初の工程から最後の工程まで通しで試験を行いつつ、設備の大型化も進め、まずは東芝グループ内で活用の方向の模索を行っていき、2024年を目標に実証プラントの整備を進めていきたいとしている。

なお、ターゲットとしては、化学品や医薬品の製造、廃液処理、レアメタルの回収などの分野を想定しており、技術実証を経て、外部パートナーでの実用性検討などに進んでいければとしている。