7月17日から「Sony presents DinoScience 恐竜科学博 ~ララミディア大陸の恐竜物語~ 2021@YOKOHAMA」(恐竜科学博)がパシフィコ横浜(神奈川 横浜)にて開催中だ。同イベントは、白亜紀後期の地球上に存在したとされるララミディア大陸を舞台にして、恐竜の骨格標本や化石が展示されている。

イベントの目玉は、米ヒューストン自然科学博物館所蔵のトリケラトプス「レイン」の骨格標本で、アメリカ国外での展示は今回が初となる。期間限定で開催されるナイトミュージアムでは、「au 5Gで恐竜がよみがえる!スマートグラスをかけてAR体験」や「au 5G ムービーダウンロード ~LANE&STANと一緒に撮る来場記念ムービー~」が催される。

  • ほぼ完全なトリケラトプス標本「レイン」 ※ヒューストン自然科学博物館所蔵

    ほぼ完全なトリケラトプス標本「レイン」 ※ヒューストン自然科学博物館所蔵

今回、恐竜科学博に参加し、恐竜の骨格標本と最新の技術を掛け合わせて体験できるコンテンツについて、開発担当者に話を聞いたので紹介しよう。初めに、「au 5Gで恐竜がよみがえる!スマートグラスをかけてAR体験」について話してくれたのは、KDDI サービス統括本部 5G・XRサービス企画開発部 サービス・プロダクト企画2G 課長補佐 白石里咲氏だ。

  • KDDI サービス統括本部 5G・XRサービス企画開発部 サービス・プロダクト企画2G 課長補佐 白石里咲氏

--どのような経緯から、スマートグラス「NrealLight」と恐竜の骨格標本を組み合わせるコンテンツを開発したのでしょうか

白石氏:企画を考える段階から、来場者に楽しんでいただける企画にしたいと思っていました。化石や骨格標本の展示が多いので、反対に、恐竜が動的に感じられるコンテンツを当社ならではの通信技術でお届けしたいと思ったのが開発のきっかけです。

企画の初期段階から、5Gの特徴である高速で大容量な通信と低遅延な通信を活用したコンテンツを考えていました。スマートフォンに投影するARも構想していたのですが、せっかくの機会ですので、来場者の位置や目線に合わせた映像の投影が必要となるスマートグラスでの投影にチャレンジしました。

スマートフォンの画面ではなく、実際に装着するスマートグラスでの映像をお届けすることで、来場者の皆様により迫力のある映像を楽しんでいただけるのではないかと思っています。

  • スマートグラスを通すと、リアルなトリケラトプスが目の前に浮かび上がる 資料:KDDI

--開発では、どのような点が大変でしたか

白石氏:ARは、その場に投影するだけであれば技術的にはさほど難しくはありません。画像加工アプリの例がわかりやすいのですが、自分の顔にリアルタイムでメイクのようなエフェクト加工ができますよね。そういったアプリにもAR技術が使われています。手元のスマートフォン画面のように近距離に表示させる場合や位置情報に関係なく映像を表示させる場合は、比較的簡単に表示できます。

一方で、今回は目の前に実在する骨格標本とAR映像がぴったり重なるように、かつ、どの方向から見た場合にも対応するように映像を表現するのは大変です。今回の展示では、この点に最も注力しましたね。

今回のAR映像は基準となる地点を設定して、そこからの距離に応じた映像をスマートグラスに映し出しています。ARの基準となる点には恐竜の絵が置いてあり、毎回スマートグラスで読み取ることで位置関係を把握しています。

スマートグラスでのAR体験はナイトミュージアムの企画なので、基準になる絵は都度設営しています。そのため、基準となる点をいつも同じ位置に置くことで、体験価値にブレが生じないようにも注意しています。

コンテンツの開発には、2カ月ほどかかりました。レインの骨格標本は通常、アメリカの博物館が所蔵していますので、日本に来るのは展示の直前です。現場での位置合わせが全くできない状態が続いていましたので、直前まで焦っていましたね。

また、ナイトミュージアムですので展示会場は演出のために雰囲気が暗めに調整されています。暗い会場で絵を読み取るのはデバイスの能力的に非常に難しいのです。暗い会場の中でも来場者にスムーズにAR映像を楽しんでいただくために、調整するところも大変でした。

  • 写真手前の絵をスマートグラスに認識させることで、AR映像の距離感を調整しているのだという

--スマートグラス「NrealLight」の開発経緯について教えてください

白石氏:スマートグラスの開発主体は、中国にあるスタートアップ企業のNreal (エンリアル)です。この製品を日本国内で販売する際に当社が協力し、当社が販売を行っています。日本で製品を使用するにあたっては、クリアしなければならない規制や法律が中国とは異なります。当社は日本の法律に沿うための改善策の提供などにおいて協力しました。

スマートグラスはまだまだ新しい技術ですので、どのような仕様で完成するのかが最終段階まで見えない状態での開発を経験しました。

「NrealLight」は100g程度の小型なスマートグラスなのですが、実はこのデバイス自体が通信や描画を行っているわけではありません。デバイスはスマートフォンと接続可能で、演算や描画処理はスマートフォンが行っています。スマホのスペックでもリアルな映像を再現できるように、クラウドレンダリング技術を用いて映像処理をしています。

VRゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイは重いものが主流です。今回の展示では、装着しながら展示会場内を歩いて移動することを考えると、軽く小さなグラスが適切だと思いました。

--最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします

白石氏:まずはぜひとも会場でリアルな映像と最新の技術を体感してみてください。また、今回は恐竜をテーマにコンテンツを開発しましたが、もちろん他の展示会でも使える技術です。展示会だけでなく、道のナビゲーション機能などARは今後さらに活用できる場面は増えてくると思いますので、興味のある方は一緒に開発できればうれしいです。