東京大学、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、松尾研究所、経営共創基盤、KDDIの5者は8月18日に、オンラインで記者会見を開催し、東京大学などの日本の大学を起点とした世界市場を変える“ユニコーン”企業の創業を図るアントレプレナーシップ(起業者)教育プログラム「アントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座」を9月から開始すると発表した。まずは3年間実施する計画だ。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子。左からKDDIの中馬和彦氏、東京大学の染谷隆夫教授、松尾研究所 代表取締役CEOの川上登福氏、経営共創基盤 代表取締役CEOの村岡隆史氏、東京大学の坂田一郎教授、東京大学エッジキャピタルパートナーズ 代表取締役社長の郷治友孝氏

同記者会見の主催者として登壇した東京大工学系研究科長・工学部長の染谷隆夫教授は「東大はこれまでに東京大学発ベンチャー企業を430社以上創出し、日本の大学の中では群を抜いて優れたベンチャー企業の創業実績を上げてきたが、日本・世界の既存社会に大きな影響を与える“ユニコーン”のベンチャー企業は誕生していないが実情。この反省から既存社会を変えるような影響力を持つベンチャー企業の“ユニコーン”の創業を目指す東京大学アントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座を開講する」と説明した。

同寄付講座を担当する責任者の工学部、坂田一郎教授は「来月9月からアントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座を開始し、3年間でベンチャー企業の創業を目指す学生にアントレプレナーシップ教育を提供する」と説明し、選抜した約30人の学生にアントレプレナーシップ教育を行う計画を明らかにした。

この講座では「フィールドワークなどの実践教育も実施する」という。同デザイン寄付講座の運営資金は3年間で1.2億円の見通し。この運営資金を用いて「アントレプレナーシップ教育の体系化を目指し、日本の各大学にも体系化した教育法成果を公開する」と解説した。

カリキュラムには、複数の民間企業からも講師を招く想定だ。講座の最後には、ピッチの機会を設け、事業会社の役員に評価をしてもらう機会も設けている。

同記者会見に企業側として出席した経営共創基盤(IGPI 東京都千代田区)の村岡隆史代表取締役CEOは「ベンチャー企業との横連携によって、日本の大企業の再生も進む」と、日本の既存企業文化を変える意味合いを強調した。

また、同様に企業側として出席したKDDIの高橋誠代表取締役社長は、大企業側として、アントレプレナーシップ教育の受講者に「人財教育、販路などのコンシューマー営業支援、創業資金、パートナリングなどの教育ノウハウ・提供を実施し、その結果として創業したベンチャー企業と連携して、世界市場で通用する企業にKDDI側も進化していく」と語った。

KDDIはベンチャー企業の成長を支援・連携する仕組みをすでに持っており、過去には、通信プラットフォーム「SORACOM」を提供し、IoT領域におけるリーディングカンパニーのソラコム(東京都世田谷区)を数社とともに成長時に支援し、「2017年8月に同社の発行済株式をKDDIは取得し。協調して成長している実績を持っている」とした。

東京大学発ベンチャー企業とは、東大の卒業生が中心となって創業したベンチャー企業、あるいは東京大学の研究成果などを基に創業したベンチャー企業と定義されている。