eスポーツチームが持つ影響力と、必要な3つの柱
――最近の国内eスポーツシーンでは、影響力を重視したeスポーツチームの台頭が目立つ印象があります。こうしたシーンの流れを、どのように捉えられていますか?
西原:ゲーミングカルチャーがマスになればなるほど、当然の動きだと思います。NA(北米)シーンでは数年前からこういう事象が起きていて、そのわかりやすい例が「100 Thieves」のようなチームの台頭でしょう。
先にお話した内容とつながりますが、NAでは多くのeスポーツファンの間で、応援するチームに関係なく「100 Thievesはカッコいい」という位置づけになっているんですね。ゲーミングカルチャーが好きな人たちにとって、アイコンのブランドになっている。これこそ、まさにライフスタイルブランドです。
「100 Thieves」に限らず「FaZe Clan」など、成功していて勢いのある海外チームには共通点があります。競技シーンの柱と、それを動画や配信で世に広めるクリエイターの柱、そしてファンの欲求を満たすアパレルの柱、この3つの柱が確立されていることです。
いわゆるインフルエンサー的な影響力は、人気を獲得するうえで手っ取り早いですが、それだけではどうしても一過性のものになってしまう。競技シーンでの強さがあって、人気もあって、それに対して消費が生まれる、というサイクルが重要なんです。
今のところ国内では、これを実現できているチームは、我々も含めてまだないと思っています。僕らとしても、こうした部分を推し進めていくのが今後の目標です。
――クリエイターの柱を支える存在として、StylishNoobさんの加入はとても大きいと思います。加入後、チームとしての変化はいかがですか?
西原:彼の加入による恩恵は、すでにかなり受けていますね。StylishNoobの加入後、チーム公式Twitterのフォロワーは倍になりましたし、他部門に所属する選手たちの認知もすごく上がりました。
――チーム加入の発表配信も、かなりの同時接続数になっていましたね。
西原:あの配信は、最大で53,000人ほどの同接がありました。普通、配信は人が集まってくるまである程度の時間が必要じゃないですか。なので、配信に見立てた動画を流す冒頭の演出が、どれだけオンタイムで観てもらえるかドキドキしていたんです。でも、最初から一瞬でものすごい視聴者が集まって、さすがだなと思いましたね。
ストリーマーの及ぼす影響力は、シーンの土台あってこそ
――ストリーマーが持つeスポーツシーンへの影響力について、StylishNoobさんの目線ではどのように感じられますか?
StylishNoob:最近でいうと、僕を含むストリーマーが『VALORANT』をプレイしたことで、再び注目度が上がる流れがありました。でも、僕らストリーマーは、あくまで脇役。うまく噛み合ったときに、相乗効果が起きておもしろいことになるのであって、直近の『VALORANT』もその一例だと思っています。
ストリーマーがプレイすればどんなゲームでも流行るかというと、そんなことはありません。まず土台にあるのは、ゲームや競技シーンのおもしろさ。僕らはそこに乗っかっているようなもので、元がしっかりしていないと無理なんですよ。
『VALORANT』にはその土台があるから、ストリーマーがプレイすることで、普段『VALORANT』を観ない人たちにもおもしろさが伝わった。そういう意味で、僕らは配信を観てくれる人たちの視野を少し広げるような、そんな立ち位置にいると思います。
――最近では、VCTの大会ミラー配信も最大同接が約7万人となる注目ぶりでした。振り返ってみれば、Stage2の国内決勝(※)はオーバータイムが続く激戦で、試合内容の盛り上がりも重なっていましたね。
※Riot Games特別許諾のもと、StylishNoob氏のTwitchチャンネルで「2021 VALORANT Champions Tour – Challengers JAPAN Stage 2 Playoffs」のミラー配信が行われた。決勝では「Crazy Raccoon」と「Absolute JUPITER」が戦った。
StylishNoob:そうですね、間違いないです。以前から『VALORANT』の大会は観ていたんですけど、元がしっかりしていて本当におもしろいんですよね。携わるスタッフの方々や、各チームが支え続けてきたものがあるからこそだと思います。
WPRZTとの共同プロデュースによるイベントブランド「LIMITZ」の展開も
――今後の展開について、ウェルプレイド・ライゼスト(WPRZT)との取り組みも発表されました。この内容について教えていただけますか?
西原:「LIMITZ」というイベントブランドを、WPRZTさんと共同プロデュースで展開していきます。
競技シーンは、主に比較的コアな方々が楽しむコンテンツ。ストリーマーさんの配信をメインに見ている方やカジュアルにゲームを楽しんでいる方には、競技シーンの魅力がなかなか届いていないと感じています。
今まで競技シーンに触れてこなかった方々に興味を持ってもらうには、エンタメ的な要素が必要不可欠でしょう。なので「LIMITZ」は、インフルエンサーさんをはじめとするストリーミングシーンと選手やコーチ陣をはじめとする競技シーンを融合させて、エンタメイベントでありながら、競技シーンのおもしろさと選手たちの魅力を知ってもらうきっかけになるイベントにしたい。そして、両方のファンに楽しんでもらいつつ、コミュニティの発展を目指したいと考えています。
ただ、イベントを企画・運営するには、マンパワーもノウハウも機材も必要です。そこで、イベント運営に強みを持つWPRZTさんとお話しさせていただき、僕らの考えに共感いただいたWPRZTさんとともに、お互いの強みを活かしたブランド「LIMITZ」として取り組むことになりました。
――ほかには、料理企画「StylishNoob Kitchen(スタヌキッチン)」の予告もされていました。この企画は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?
StylishNoob:これは軽いノリから始まったんですけど(笑)。そういう企画ができるスタジオがあるので、やりましょうと。
西原:ある企業さんとの取り組みの中で、自由に使わせていただけるスタジオがありまして。そこにある立派なキッチンスタジオを見たスタッフが、ポロッと「スタヌキッチンやらない?」と言ったのが始まりですね。
――なるほど(笑)。ゲーム以外のコンテンツにもチャレンジしていく意図があるのかと思ったのですが、そういった面はいかがでしょうか。
西原:メンバーの人となりを見せるコンテンツが求められていることは、我々も理解しているので、それも根底にあります。
やはりパーソナルな部分が見えると、より深いファンになっていくじゃないですか。そういうものを日頃から探していたところ、すごくパーソナルな部分が見える「料理コンテンツ」がちょうど噛み合った感じですね。
StylishNoob:スタヌキッチンは、ゲストを呼んでやっていこうという話になっているんです。僕が1人でただ料理を作るだけでは、微妙じゃないですか(笑)。そういうのもたまにはいいかもしれないですけど、ゲストがいれば料理しながら話しもできると思うので。
ストリーマーと選手、それぞれの道を進む者の相乗効果
――スタヌキッチンのほかにも、ゲーム以外のコンテンツでの構想はありますか?
西原:今、海外の人気番組を参考にした企画を検討しています。その企画に、StylishNoobをはじめとするストリーマーや選手たちに参加してもらって、ゲーム以外の身近な一面を見せられたらいいなと。
なので、僕らとしてもStylishNoobのようなストリーマーをきっかけに、競技シーンで活躍する選手たちを知ってもらって、「大会も観てみよう」と思うファンを増やしたい。そうやって両者をうまくつなげていきたいという思いがあります。
――そうしたお話を聞くと、StylishNoobさんの加入で生まれる相乗効果のイメージがとても湧きますね。
StylishNoob:ストリーマーも選手も、チームのために動くというよりは、お互いにそれぞれの道を進みながら、よきタイミングで交わるとおもしろいんですよね。そういう相乗効果が、まさに「ZETA DIVISION」で生まれそうだなと感じています。
――今後公開されるコンテンツが楽しみです。それでは最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
西原:新たに加入したStylishNoobをはじめ、各部門の選手やストリーマーたちを今まで以上にしっかりとサポートし、ファンの皆さまにとってより魅力的なブランドにしていきます。新しく生まれ変わった「ZETA DIVISION」を、これからも応援よろしくお願いします。
StylishNoob:今後も変わらず楽しくやっていきますので、以前から配信を観ていただいている方は、これからも応援よろしくお願いします。そして、今回こうして加入させていただき、「ZETA DIVISION」の新人ストリーマーとしてもがんばっていきますので、ぜひよろしくお願いします。
――西原さん、StylishNoobさん、ありがとうございました!