宮崎大学は7月27日、白血球の一種である「樹状細胞」が免疫バランスを維持することにより、アトピー性皮膚炎の増悪化を阻止する仕組みを明らかにしたと発表した。

同成果は、宮崎大 医学部医学科 免疫学の佐藤克明教授、同・皮膚科学の天野正宏教授らの研究チームによるもの。詳細は、国際免疫学会連合学術誌「Frontiers in Immunology」にオンライン掲載された。

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が全身または部分的に発生する皮膚のアレルギー疾患として知られるが、その原因は、まだ完全解明には至っておらず、遺伝的・体質的な要因や環境要因、生活動作など、さまざまな要因が複雑に関わることで発症すると考えられている。

アトピー性皮膚炎の治療方法は、主に適切なスキンケアと塗り薬(ステロイド、アトピー性皮膚炎治療薬など)による薬物治療が知られているが、根本的な治療法ではないため、さらなる研究が求められている。

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下などを背景として、皮膚から入った無害な異物(アレルゲン)に対する過剰な免疫応答(アレルギー反応)により生じると推測されている。一方、細菌やウイルスなどの病原性微生物に対する免疫応答は、これらを捕食した「樹状細胞」が起点となると想定されている。しかし、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患における樹状細胞の役割については、不明な点が多く残されているという。

そこで研究チームは今回、樹状細胞を欠損させたマウス(樹状細胞欠損マウス)を用いた実験を実施。その結果、野生型マウスとは異なり、アレルギー発症に寄与する複数種類の白血球が増加し、免疫バランスが喪失していることが判明したほか、野生型マウスと比較して、アトピー性皮膚炎が増悪化することが示されたという。

これまで樹状細胞は、アトピー性皮膚炎の発症や増悪化にも重要な役割を担っていると考えられてきたが、今回の研究から、樹状細胞の欠損状態におけるアトピー性皮膚炎が示されたことから、樹状細胞はアトピー性皮膚炎の発症や増悪化には必要ではなく、むしろ免疫バランスを維持することよりアトピー性皮膚炎の増悪化阻止に作用するという重要な知見が得られたと研究チームでは説明しており、この成果を応用することで、アトピー性皮膚炎に対する新たな治療法の開発につながる可能性が期待されるとしている。

  • アトピー性皮膚炎

    アトピー性皮膚炎における樹状細胞の意義 (出所:宮崎大Webサイト)