パナソニックは7月20日、同社独自のクリーンテクノロジー「ナノイー/ナノイー X」に関するオンラインセミナーを開催した。セミナーの前半では「ナノイー」の概要と特徴、これまでの技術進化が説明された。

「ナノイー」は、空気中の水に高い電圧をかけることで発生する、水に包まれた微粒子イオンだ。「ナノイー」の内部には反応性の高い「OHラジカル」が生成されており、それが対象成分と反応することで脱臭、菌・ウイルス抑制、アレル物質(花粉、ダニのフン・死がい)の抑制などが起こる。

  • 水から生成される微粒子イオンの「ナノイー」

「ナノイー」は5~20ナノメートルという細菌やウイルスよりも小さなサイズであるため、繊維の奥に入り込みやすい。また、水でできた粒子なので、空気中の酸素や窒素に反応して消滅することなく菌やウイルス、アレル物質などの対象成分に到達できる、という特徴を持つ。

  • ナノイーの特徴(1)「ナノサイズ」

  • ナノイーの特徴(2)「水」

パナソニック アプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部 部長の中村浩二氏は、「ナノイーの飛散挙動を気流解析し、『ナノイーがどれぐらい飛散し、どの程度空間に残るか』を測ったところ、24畳の部屋でマイナスイオンは100秒で消滅したが、ナノイーは600秒後まで残存し、消滅するまでの間に部屋内に拡散された」と解析結果を示した。

7つの効果を持つ「ナノイー X」

「ナノイー X」は山形大学と共同開発した方法で発生に成功した、OHラジカルの量が10倍の「ナノイー」だ。現在、パナソニックは「ナノイー X」について、カビ抑制、花粉抑制、生活5大臭と加齢臭の脱臭、有害物質の分解、菌・ウイルスの抑制、アレル物質の抑制、美肌美髪の7つの効果を示している。

  • 「ナノイー X」の7つの効果

「ナノイー」は1997年に研究が開始され、2003年に初めて製品(空気清浄機)に搭載された。現在まで小型化・高性能化が続けられ、2021年7月時点でパナソニックが提供する40商品に「ナノイー/ナノイー X」発生装置が搭載されている。

パナソニック アプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部 主幹の中田隆行氏は、「製品化にあたってはハード、製品が生み出す効果、菌・ウイルス抑制から美容効果まで多岐にわたり、評価基準含めて独自のノウハウを生かしてきた」と振り返る。

また、「ナノイー」へ活用されているパナソニック独自のテクノロジーについては、同部主幹の山下幹弘氏が、「高電圧を発生させる技術部分には、他社にない独自技術を使用している」と明かした。

  • 「ナノイー」発生装置(左)、「ナノイー X」発生装置(右)

実車で効果を検証、菌とウイルスを99%以上抑制

セミナーの後半では、パナソニックが自動車内で行った車載向け「ナノイー」発生装置のウイルスなどの抑制効果と脱臭効果のエビデンスが示された。

パナソニックは実車を用いて「ナノイー」の効果検証を実施。菌、ウイルス、付着臭(タバコ臭)、花粉(スギ)を付着させた試験片を、ナノイー搭載のヴェルファイアの運転席、および2列目運転席後ろ、3列目中央のヘッドレスト高さに設置し、「ナノイー」を1時間曝露。それぞれの試料を回収し、効果を測定した。

その結果、自然放置状態から菌とウイルスを99%以上抑制し、付着臭の脱臭は六段階臭気強度において「弱い臭い」以下にまで低下。花粉も自然放置状態から69%以上抑制する結果となった。

  • 車載向け「ナノイー」の実車での実験結果

ただし、菌・ウイルスの検証にあたっては、検証の安全性から病原性ウイルスでの効果測定が難しいため、人体に対して害の少ない菌やウイルスが選択された。他方でパナソニックは、仏Texcellと共同で実施した実験にて、「ナノイーX」の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果を検証しており、こちらでは2時間で99.99%の抑制効果が出ている。

  • 中田隆行氏(左)、中村浩二氏(中)、山下幹弘氏(右)

パナソニックの「ナノイー」発生装置は現在、国内自動車メーカー8社の96車種に搭載されている。2021年度累計で車載向けの「ナノイー/ナノイーX」の販売台数は1000 万台を超え、2025年度には累計2000万台を目指す。

中村氏は、「当社がアンケート調査を行ったところ、自動車、バス・電車・タクシーなどの公共交通機関も含め、3人に1人が社内の空気室を気にしていることがわかった。車移動・清潔ニーズの高まりに、当社は『ナノイー』で貢献したい」と語った。