ドイツのカメラメーカーであるライカが開発したスマートフォン「LEITZ PHONE 1」(ライツフォンワン)が7月16日、発売されました。ソフトバンク限定での登場です。

ベースとなったのはシャープの「AQUOS R6」で、ハードウェア的には同等ですが、外観デザインと内部のソフトウェアの一部、カメラのUIや機能をライカが設計しており、「ライカブランド」としてリリースする初めてのスマートフォンです。

今回、ざっくりと本体デザインとカメラのファーストインプレッションをお届けします。

  • ライカ初のスマートフォン「LEITZ PHONE 1」。2,020万画素の1インチセンサーを搭載しています

    ライカ初のスマートフォン「LEITZ PHONE 1」。2,020万画素の1インチセンサーを搭載しています

側面のローレット加工までもライカらしい

ライカはドイツの名門カメラメーカーで、100年以上の歴史を誇り、今でも世界中にファンの多いカメラメーカーです。昨今はデジタルカメラも開発していますが、「スマートフォン」を開発したのは今回が初めて。

もともとはソフトバンクがライカ側に声をかけて協業を開始。そこにメーカーとして参加したのがシャープで、「ライカ監修」のカメラを搭載したAQUOS R6に対して、カメラだけでなくスマートフォン全体に関与して、ライカブランドで発売するのが、今回のLEITZ PHONE 1です。

これまでもファーウェイ製スマートフォンでライカ監修のカメラはありましたが、「ライカのスマートフォン」は世界初。しかも日本のみ、ソフトバンク限定という希少価値もあります。

AQUOS R6をベースにしているので、基本的なハードウェアスペックは同等です。異なるのはそのデザイン。特に背面が大きく異なり、カメラ部は円形のカメラ風デザインになりました。

もともと1インチという大型センサーを搭載している関係で、シングルカメラながらカメラ部には大きなスペースが必要になります。

  • 背面はシンプルで大型のカメラ部が目を引きます。ただ、カメラのマウントのようなデザインのため、これだけ大きなスペースを取っていても不自然な感じがありません

それをLEITZ PHONE 1はカメラのマウントのようなデザインで、スペースに意味を持たせることに成功しています。カメラ部の出っ張りもありますが、マウントだと考えればそれも当然のこと。デザイン的には全く気になりません。

カメラ以外はスッキリとしたデザインながら、カメラ横にはライカカメラと同様に赤バッジが鎮座しています。背面はつや消しのブラックで、側面にはライカカメラにも使われているシルバーカラーを採用。側面にはレンズの絞りリングなどにも使われるローレット加工を施してあるため、指の引っかかりが良くなっています。

  • ライカブランドを示す赤バッジ

  • 側面にあるローレット加工。滑りにくく持ちやすいのは、大画面で滑りやすいスマートフォンにはありがたい仕組み

この側面のローレット加工が実は結構重要なポイントにもなっています。実はAQUOS R6と比べてこの側面のシルバー部分が太くなっています。

AQUOS R6はディスプレイ側面がカーブしたエッジディスプレイですが、全画面に見える反面、側面にもディスプレイがあるため、手で持ったときに意図せず指が触れて誤反応してしまうことがあります。

  • 側面のローレット加工されている部分がやや太めで、画面に触りにくくなっています

LEITZ PHONE 1はこのシルバー部分が太く、手に持った際に画面側面に触れづらいようになっています。特に指先で持って構えるカメラ撮影の際に誤タッチが減らせるようです。

ローレット加工で滑りにくいのでしっかり構えることができて、初のスマートフォンながら撮影の際の使いやすさも配慮されている印象です。

撮影画面もライカ風! 「フレーム」を表示

実際にカメラを使ってみると、まずUI(操作画面)がAQUOS R6と異なっています。基本的には同じUIで、通常のスマートフォンカメラのように、下部にモード切り替えとシャッターボタン、インカメラとアウトカメラの切り替え、ズームボタンなどが配置されています。

大きな違いは、LEITZ PHONE 1には画面上にブライトフレームが表示されている点。これはカメラのビューファインダー内に表示される撮影範囲を示す枠です。

ライカのカメラでは、ファインダーは撮影範囲以上を表示しており、ブライトフレームでレンズの撮影範囲を示す、という仕組みになっており、それを踏襲した形です。

  • カメラアプリに表示されるブライトフレーム。分かりにくいのですが、右上(縦持ちすると右下)に「24」と焦点距離が表示されています。表示されているのは19mmの撮影範囲で、この状態で写真を撮るとブライトフレームの範囲が写ります

LEITZ PHONE 1は35mm判換算19mmのレンズを搭載し、ズームボタンを押すと超広角、広角、2倍ズームの3段階の切り替えができます。19mmは超広角で、広角は24mm、2倍は48mmの焦点距離になります。

  • レンズはもちろんライカブランドの「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」

  • 真正面から見るとほとんど見えず、斜めに傾けるとレンズ銘が浮かび上がります

シングルカメラなので、24mmと48mmはデジタルズームになっていますが、メインカメラとして位置づけられるのは19mmではなく24mmという独特の設計になっています。

複数のカメラを搭載できない関係上、使用頻度の高い超広角レンズ1つに絞って、最もよく使われる広角域をデジタルズームでカバーした、ということでしょう。ハードウェア設計上の制限があったのかもしれません。

  • 広角端(19mm)での撮影。広角レンズらしい歪みが残されており、少し被写体の配置に考慮が必要ですが、細部までよく表現されており、写りは悪くありません ※以下、作例は1,200ドットにリサイズ。画像クリックで原寸大画像にアクセスできます

  • 24mmでの撮影。落ち着いたトーンに高い解像力、立体感のある描写で際立った描写です。空はHDRによって復元されてますが、普通のスマートフォンカメラだと建物の影の部分を明るくしすぎてしまうところでしょう

いずれにしても、19mmの超広角で撮影する場合にブライトフレームは表示されません。メインの24mmにするとブライトフレームが表示され、「24(mm)」という表記が現れます。ディスプレイには19mmと変わらない範囲が表示されていますが、撮影したときに写るのはブライトフレームの範囲になる、ということです。

2倍に切り替えると表示される範囲もズームしますが、その中にさらにブライトフレームが現れます。どうやら28mmぐらいの範囲を表示して、その中の48mmの範囲を撮影するようです。

慣れないとブライトフレーム外も考慮して撮影してしまいそうですが、フレーム外は写真に写りません。

ただ、フレーム外に被写体がいる状態でシャッターを切る準備をしておけば、シャッターチャンスを逃しにくい、というメリットもあります。ほかのスマートフォンカメラにはない点で、ライカらしい特徴といえるでしょう。

  • シャープネスが強すぎないカメラ的な描写。光と影の描写も自然です

  • 近景から遠景まで破綻なく描写されていて、葉と空の境界の色ズレもよく抑えられており、レンズの実力が感じられます

写真は落ち着いた色合い。モノクロモードに注目

被写体にカメラを向けると、AQUOS R6よりもトーンを落とし目の色合いになります。AQUOS R6もほかのスマートフォンカメラに比べると落ち着いた色合いなのですが、LEITZ PHONE 1に比べると派手に見えます。

実際に撮影してみても、落ち着いたトーン、明るくなりすぎない露出制御で、AQUOS R6に比べてもより「カメラ的」な写真。

AF(オートフォーカス)はコントラストAFとレーザーAFによる仕組みですが、決してスピードは速くなく、さらにシャッタータイムラグも遅め。正直、動き回る動物や子供を撮るのは難しいと感じますが、MFでじっくり撮影する気分で撮影するなら許容できるでしょう。

ただし、MF(マニュアルフォーカス)機能はなく、ピント位置の拡大といった機能もないので、細かな被写体でじっくりピントを追い込むといった撮影はできません。

光学式手ブレ補正もなく、手ブレもしやすい印象なので、気軽に構えてサッと撮影、見栄えの良い派手な写真を撮る、というスマートフォンカメラの使い方とは異なる撮り方が必要です。

その意味では、LEITZ PHONE 1にのみ搭載されたモノクロモード「LEITZ LOOKS」は注目。モノクロ写真には一家言あるライカのモノクロモードであり、期待度の高い機能です。

  • 【写真上下】モノクロモードの「LEITZ LOOKS」で撮影。気軽にモノクロモードで撮影できるので、つい使いたくなります

ライカブランドとして次期モデルにも期待

LEITZ PHONE 1は、ファーストインプレッションとして触れただけでも、そのデザイン性やカメラの質の良さ、そして「ライカ初のスマートフォン」というブランド力の面からも魅力的な製品です。

スマートフォンとしてのアップデートはシャープ次第かもしれませんが、カメラのアップデートはライカ監修の元、今後も随時行ってほしいものです。すでにAQUOS R6ではカメラ周りのアップデートが一度行われていますが、AF性能を含めて今後の性能向上も期待したいところ。

「LEITZ PHONE 1」という名称からも分かるとおり、後継機種も期待できるブランド名ですので、今回得られたノウハウを元に、今後のさらなる新機種にも期待したいところ。

モノクロセンサーとカラーセンサーのデュアルカメラを搭載したスマートフォンなんてどうでしょうか。HUAWEI Pシリーズでなくなってしまったのがもったいない仕組みだったので、復活して欲しいところです。