三重大学は7月1日、過去39年にわたる観測値の分析と数値シミュレーションにより、アフリカのサヘル地域(サハラ砂漠のすぐ南に位置する帯状の半乾燥地域)で雨雲が大きく発達すると、日本上空の高気圧の引き金となり、結果的に日本の猛暑の一因となっていることを発見したと発表した。
同成果は、三重大 生物資源学研究科の中西友恵大学院生(研究当時)、同・立花義裕教授、同・安藤雄太研究員(研究当時、現・新潟大学特任助教)らの研究チームによるもの。詳細は、地球規模の気候を扱った独・学術誌「Climate Dynamics」に掲載された。
日本での異常気象の原因としては、エルニーニョなど、太平洋の熱帯の気候条件による影響を考察する研究が盛んだが、遠く離れたアフリカの熱帯地域の気候・天候の影響という視点は、これまで見過ごされてきたという。そこで研究チームは今回、日本やアジアの異常気象のメカニズムを、この新たな視点から解明することに挑んだという。
サヘル地域は、サハラ砂漠のすぐ南に位置し、雨季と乾季が明瞭なサバンナ気候の土地だ。大西洋に面した地域から紅海に面する地域まで、東西に帯状に広がっている。同地域に属する国家としては、セネガル、モーリタニア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダンなどがある。
サヘル地域の雨季は6月ころから9月ころまで、大量の雨が降るという。この大雨を降らす雨雲はサヘル全域の上空を広く覆い、この広域で発生した雲がアフリカ北部上空の高気圧を強める。その結果、その高気圧は欧州上空を吹く偏西風を蛇行させ、その蛇行が偏西風の下流に位置する東アジアや日本にまで続くこととなるが、その偏西風が蛇行することで、蛇行の山と谷に対応して高気圧と低気圧が発生し、それらが同一の場所に長く停滞し、異常気象をもたらすという。その蛇行に伴って日本上空の高気圧が強まり、日本の天候に影響を及ぼすという。
このことから、サヘル地域で雨雲が発達すればするほど、日本上空の高気圧が張り出し、猛暑になりやすいことが結論づけられたと研究チームでは説明する。実際、日本で観測史上最高の猛暑を記録した2018年は、サヘル地域でも記録的な雨量が観測されているという。
サヘル地域は南米のアマゾンに次いで雨雲が活発な陸域だが、研究チームでは、サヘル地域だけでなく、ほかの熱帯陸上の雲の活動の影響を調べることで、中高緯度の異常気象に関する研究に新たな展開がもたらされることが期待されるとしている。