国際的な天文学者の研究チームは2021年6月16日、一昨年から去年にかけて世界を賑わせた「ベテルギウス」の大減光について、恒星内部のガスの動きによって低温の領域が発生し、それにより塵の塊が形成され、表面の一部が覆い隠されたことが原因とする研究成果を発表した。

欧州南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)を用いて撮影した、ベテルギウスの表面の画像から、明るさがどのように変化したかを分析することで、大減光の謎に迫ることができたとしている。

論文は同日付で論文誌『ネイチャー』に掲載された。

  • ベテルギウス

    欧州南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)を用いて撮影したベテルギウス。左から、2019年1月撮影、2019年12月撮影、2020年1月撮影、2020年3月撮影のもの。2020年1月ごろに大きく減光していることがわかる (C) ESO/M. Montarges et al.

ベテルギウスの大減光

ベテルギウス(Betelgeuse)は、太陽系から約500光年離れたところにある恒星で、オレンジ色に明るく輝いていることで知られる。オリオン座を形成する恒星のひとつであり、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに冬の大三角を形成している。

赤色超巨星と呼ばれる種類の恒星で、太陽の約20倍の質量、約1000倍の大きさで、太陽系の中心に置けば木星の軌道にほぼ到達するほどの規模をもつ。すでに恒星の進化の最終段階にあり、今後10万年以内に超新星爆発を起こすと考えられている。

ベテルギウスのような赤色巨星は、頻繁に明るさが変化することが知られている。進化の最終段階にある赤色巨星は、内部で核融合を起こすための燃料供給がなくなりつつあるため、エネルギーを放出するプロセスが変化。その結果、恒星が肥大化し、不安定になり、数百日から数千日の周期で脈動している。

  • ベテルギウス

    オリオン座と、ベテルギウスの位置を示した図 (C) ESO/N. Risinger (skysurvey.org)

しかし、2019年10月から2020年4月にかけて、ベテルギウスが最大で通常時の約40%にまで暗くなるというという現象が発生。通常、見かけの明るさは0.1~1.0等級だが、2020年2月7日~13日ごろには1.614±0.008等級まで低下し、「ベテルギウスの大減光(Betelgeuse’s Great Dimming)」と呼ばれた。

世間でも「すわ超新星爆発の兆候か」と大きな話題になったが、同年5月までには減光前の明るさに戻っていることが確認されている。

この大減光がなぜ起きたのかをめぐっては、世界中の天文学者が研究を続けている。そして今回、フランスのパリ天文台とベルギーのルーヴェン・カトリック大学の天文学者Miguel Montarges氏を中心とする国際研究チームは、欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)を使った観測から、ベテルギウスの南側の領域の温度が低下したことが原因で、塵の塊が形成され、表面の一部が覆い隠されたことが原因であることを示す研究結果を発表した。

ベテルギウスの表面は、星の中で巨大なガスの泡が移動したり収縮したり、膨らんだりすることで、定期的に変化していることが知られている。そして研究チームは、観測結果から、ベテルギウスが大減光する前に、大きなガスの泡を放出したと結論。そして、それにより星の表面の一部が冷え、その温度低下によってガスが凝縮。固体の塵となって表面に現れた結果、減光を引き起こしたと考えられるとしている。

Montarges氏は「今回私たちは、星の姿が数週間単位でリアルタイムに変化する様子を初めて目の当たりにしました。私たちは、宇宙塵(stardust)が発生する瞬間を直接目撃したのです。そして、塵の形成が、恒星の表面近くで非常に急速に起こることを示しています」と語る。

また、共同研究に参加したルーヴェン・カトリック大学のEmily Cannon氏は「今回のように、冷たく進化した恒星から放出される塵は、地球型惑星や生命体の構成要素になる可能性があります」と語っている。

今回研究チームは、ESOのVLTに設置されているSPHERE(Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch)という装置を使って、ベテルギウスの表面を直接撮像。また、ESOのVLTI(Very Large Telescope Interferometer)に搭載されているGRAVITYという装置のデータと合わせて、減光中のベテルギウスを監視し続けた。

Cannon氏は「このベテルギウスの発光現象の原因を解明するために、これらの装置は重要な役割を果たしました」と述べ、またMontarges氏も「この装置を使うことで、私たちはベテルギウスを点としてではなく、その表面の状態を詳細を分析し、現象が起きている間、監視し続けることができました」と述べている。

両氏はまた、ESOが建設中の超大型望遠鏡(ELT)が、ベテルギウスの研究に役立つことを期待していると付け加えている。Cannon氏「ELTは、圧倒的な空間分解能で、ベテルギウスを詳細に直接観測することができます。また、ベテルギウス以外にも直接撮像して表面を解析できる赤色超巨星のサンプルが大幅に増えることで、ベテルギウスの背景にある謎の解明に役立ちます」と語っている。

参考文献

Mystery of Betelgeuse’s dip in brightness solved | ESO
A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming | Nature