ソフトバンクは6月22日、第35回定時株主総会を開催。宮川潤一社長が登壇し、今後の事業戦略を語りました。なお新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、株主には総会への来場を自粛するよう呼びかけており、原則としてオンライン配信のみの実施となっています。

  • 社長に就任して初めての定時株主総会にのぞむ宮川潤一氏

国内の1,000兆円市場でビジネスしていく

株主総会の冒頭、まずは定款の変更に関する決議が行われました。感染症の拡大・天災地変の発生などにより株主の参集が困難と認められた場合に、株主総会をオンラインのみで開催できるように定款を変更する、という内容です。最終的に株主の3分の2以上の賛成を得て承認可決されています。

  • 株主総会の冒頭、定款の一部変更について決議

プレゼンにおいて宮川社長は「増収増益にこだわった経営をやり遂げていきます」と説明します。ソフトバンクはもはや単なる通信会社ではなく、キャッシュレス、小売、モビリティ、物流、ヘルスケア、保険金融、スマートシティ、エネルギーなどすべての国内市場(規模にして1,000兆円)を対象にビジネスできるとアピール。5G、AIなどデジタル分野において圧倒的な顧客接点を活かせるとし、「デジタル化が遅れている日本国内で社会課題を解決するとともに、日本で成功したビジネスモデルは世界にも展開していきたい」と意気込みました。

  • 1,000兆円の国内市場を対象にビジネスしていく

  • 圧倒的な顧客接点を活かしていく

このあと株主から寄せられた質問に、宮川社長が一人で回答していきました。主な内容は以下の通りです。

――役員報酬が高すぎるのでは。

「金額の妥当性についてですが、国内の時価総額・営業利益がトップレベルの企業として、外部サーベイの基準も参考にして設定しており、妥当と判断しています」

――今後の株主総会はすべてオンラインになるのか。

「想定外の事態で会場を設けることが困難な場合に、選択肢を増やすのが目的です。平時にオンラインのみで開催する考えはありません」

――情報漏えいが相次いだ件で、セキュリティの課題はどう考えているのか。

「責任を痛感しています。これまでも情報セキュリティを重要な課題として認識し、対策に注力してきましたが、本件を受けて情報資産管理の再強化、業務用パソコンの利用ログを監視するシステムの導入などにより、再発防止へ取り組んでいます。セキュリティ対策に終わりはないと考え、引き続き対策していきます」

――現在の株価がIPOの公募価格を下回っている件について。

「現状を重く受け止めています。私自身も株主であり、この課題を解決していきたい。そのため企業価値の向上に向けて、ありとあらゆる努力をしていきます。企業として増収増益にこだわり、成長を進めていく。これが一丁目一番地です。我が国の遅れてしまったデジタル化について全力でサポートして挽回し、デジタル先進国を目指すことで国とともに成長していきます。高齢化社会への課題解決に向き合い、国民の全員が幸せに生活できる社会を目指す。ひいては世界の人々から必要とされる企業になる。これを遂行していきます」

――スマホの利用料金はまだ下がるのか。

「世の中の注目度の高いトピックと理解しています。お客さまの利用形態にあわせて、ソフトバンクでもさまざまなプランを提供し続けていきます。一方で電気、水道、ガスに並ぶ4つめの社会インフラとして、通信の重要度が増しています。特に5Gのインフラは産業の基盤となるため、重要度が増してきました。ネットワークの運用、通信サービスの提供を考えたバランスの良い最適な価格に設定していきます」

――女性の社外取締役の登用計画について。

「企業価値の向上に寄与する資質、能力、専門分野の深い知見を備えていることなどを考慮し、取締役会全体のバランスも考えて選定しています。女性の社内役員の登用も検討を続けていますが、もともと通信業界は男性の比率が極めて高い。この現状を打破すべく、女性社内役員を登用できるよう、中長期的に育成して実行していきます」

――女性が活躍するための取り組みについて。

「私をオーナーとした『女性活躍推進委員会』を設置し、女性の経営人材をつくっていきます。2030年には女性の管理職者数を少なくとも現在の倍まで増やしたい。2035年にはその比率を20%までに増やします。ダイバーシティを推進することで、さならなる企業の成長を目指していきます」

ちなみに現在、女性の管理職は338名。管理職全体の7.1%となっており、この比率をもっと上げていきたいと話していました。

――コロナ対策について教えてほしい。

「まずは収束を心から願っております。今やるべきはワクチン接種。国の職域摂取の取り組みにも、いの一番で手を上げました。ソフトバンクグループ全体の社員、家族、近隣の一般の人を含めて、25万人規模で摂取を行うことを発表し、昨日より摂取を開始しています。販売店など人と接する業務、ネットワーク運用センター、コールセンターなどクラスターが発生しやすい場所の勤務者を優先。今後、全国の15箇所で実施を予定しています。職域摂取の完了後は、構築したノウハウをフル活用し、会場を開放して多くの方に利用してもらえるようにしていきます」

――アフターコロナの事業見通しは。

「コロナで企業、社会のデジタル化の需要が高まりました。引き続き、さまざまな課題を解決することで法人事業をさらに成長できると見ています。またオンラインショッピングの利用が、消費者の生活スタイルに根付きました。ヤフー、zozoなどのeコマースが引き続き成長します。テレワークもさらに浸透していくでしょう。オンライン教育、オンライン診療も拡大していく。これらも大きなビジネスチャンスと期待しています」

――MONET(モネ)の事業見通しはどうなっているのか。

「トヨタ自動車との合弁会社で、ホンダ、日野自動車など、国内のメーカーのほとんどに賛同いただき、出資いただきました。今後、国内では都市一極集中、少子高齢化などの社会課題が顕在化していきますが、これらをMaaSで解決していくべく、MONETを育てているところです」

現在は地方交通のあり方、移動診療所、モバイルクリニック、移動コンビニなどの観点で実証実験中であり、ハンドルのない自動車が日本を作っていく時代が来ることを期待していると説明しました。

――PayPayとLINE Payの統合予定について知りたい。

「国内のQRコード決済、バーコード決済については、2022年4月を目処にPayPayに統合することを目指しています」

なお、海外ではLINE Payを継続していきます。

――海外戦略の中期目標はどうか。

「頭のなかにあります。まだ公の場で説明はできませんが、我社の10年を語るうえで重要なテーマになります。大きな成長エンジンになる。皆さまの前で発表できるものを早く積み上げていきたい」

――Zホールディングスを上場させる意義は。

「ソフトバンクとZホールディングスで、ビジネスモデルは違います。Zホールディングスは公開企業として事業内容を開示しながらやっていく意義があると思いますし、ソフトバンクKK(株式会社)のグループとして川邊健太郎社長とは細かく連携して、明日のサービスをつくろうと議論しています。KKでできること、Zホールディングスでできること、それらを分析しながら一緒に展開しています。今後とも両社とも成長できるよう、手と手をあわせて進めてまいります」