非接触計測時のワイシャツ購入率は7割

ワイシャツ売り場では、2020年11月に「Bodygram」というシステムを導入した。前述の「D MEASURE」と同様に、性別、年齢、身長、体重などの項目を入力して、洋服を着たままで正面と横、2枚の写真を撮影すると採寸が完了する。

  • 「Bodygram」で採寸を行っている様子。性別、年齢、身長、体重などの項目を入力して、洋服を着たままスマートフォンで撮影すると採寸が完了する 撮影:マイナビニュース

    「Bodygram」で採寸を行っている様子。こちらはスマートフォンで撮影する

  • 採寸した結果はスマホアプリで確認できる

Bodygramは既に300人以上の人に利用されているそうだ。非接触での採寸により顧客に安心感を与えられる点が最大のメリットだが、計測する項目は24項目、これはフルオーダーで採寸するよりも多いとのこと。年配者はフィッターによる計測を好むが、アプリとフィッターと両方試したところ、計測値はほぼ同じという正確さだという。

加えて、Bodygramはリアルでの買い物よりもデジタルを好む層の取り込みにも一躍買っている。スタッフによると、20代~30代の男性がBodygramを試したいからと来店するケースもあるとのこと。実際にこの年齢層は、Bodygram利用の6割を占めている。

さらには、Bodygramを使って計測した後に購入に至る比率は7割に達しているが、通常ウインドーショッピング中に声をかけても購入に至る比率は3割程度というので、導入の効果は出ている。アプリは顧客自身のスマートフォンでもダウンロードできるため、自宅で採寸したデータで、代理購買につなげることもできるという。

そごう横浜店ではこれら非接触計測サービスをパッケージとして導入したが、もともとは現場のデータをデータセンターに集約するシステムを自社で開発していたという。だが、すぐに時代に合わせ、顧客のニーズに対応するためにパッケージを選択したそうだ。

D2Cも取り込む攻めの仕掛けにも着手

そごう・西武が傘下に入るセブン&アイ・ホールディングスが発表した2021年2月期決算によると、そごう・西武の営業収益は4404億8400万円(26.6%減)、営業損失66億9100万円となった。そごう横浜店の売上高も前年から26.1%減少している。商品別で落ち込みが激しいのが衣料、「何もしないままでは落ち込む。安心感を与える施策をいろいろとやっていく中で、非接触の取り組みも展開している」というのはそごう・西武でコーポレートコミュニケーション室 広報・CI担当 佐藤宏一氏。

背景には、コロナ禍で百貨店に求められているニーズが明確になったこともある。「わざわざ店頭にお越しいただく意味は、単に商品を買うだけでなく、自分のサイズを知りたい、相談をしたいから。そこで、安心にサイズを図っていただくことができるようにと考えています」という。

もちろん非接触の計測サービス以外にも、ECでは2021年2月にデパ地下の惣菜や弁当を宅配する「e.デバチカ」を西武池袋本店でスタートさせた。フードデリバリーは多数あるが、さまざまなブランドのものを選べる点はデパ地下ならでは。現時点では配達地域を池袋周辺に限定しているが、注文が100件に及ぶ日もあるという。

現在は商品受注部分を「出前館」に出店という形をとるが、今後はセブン&アイのラストワンマイルのプラットフォームを活用した独自の受注宅配サービスシステムを構築する計画だ。

また、化粧品は2020年8月より「Kireidepart」という情報サイトをオープン。毎月最終金曜日の夜にブランドとタイアップしてメイクアップ動画を配信するなどコンテンツ、そしてECの機能をもつ。PVは1000回、アーカイブは6500回ほど。確かなニーズを感じているという。

今後は、この秋にも西武渋谷店のパーキング館1階にD2C(Direct to Consumer)ブランドを集めた「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベース シブヤ)」を開設する予定だ。百貨店業態としては初の試みで、約700平方メートルのフロアにミレニアル世代やZ世代に人気のD2Cブランドが約40種類そろう。

「メディア型OMOストア」として、没入感のある空間を演出し、テーマごとに展示室を設けて世界観を出す。店頭商品は全てECでも買えるようにする予定だ。渋谷という立地は重要なポイントになる、と佐藤氏はみる。秋にはまた、メンバーズカードをアプリ化し、サインレス決済も可能にする予定だ。

百貨店の持つ立地、品ぞろえなどのメリットを生かし、コロナ禍で見えたリアルへのニーズを捉える取り組みに注目だ。