NTTドコモ、中央復建コンサルタンツ、京浜急行電鉄(京急)、横須賀市の4者は3月26日、5G(第5世代移動通信システム)とAI(人工知能)を使用して鉄道インフラをリアルタイムに遠隔から自動監視する実証試験に成功したと発表した。2021年4月以降、同実証で構築したシステムのさらなる高度化と鉄道事業およびその他領域における本格運用検討を行う方針だ。

  • 実証実験のイメージ

今回の実証は、2020年12月21日から2021年2月12日にかけて、京急の久里浜工場で実施された。4K映像を5Gで伝送し、網内クラウド環境(MEC)においてAIディープラーニングにより解析した後、解析結果を遠隔地にリアルタイム配信したとしている。

検証では、通常時の車両監視と災害時を想定した線路点検を対象とした。車両監視では、固定4Kカメラとサーマルカメラで車両の床下機器を撮影し、台車の疑似的な亀裂やブレーキパッドの摩耗、機器収容箱ハンドルの開き、車軸温度の上昇の検出を試みたとしている。

線路点検では、ドローン上の4Kカメラで線路を撮影し、飛来物などを想定した大きさ・状の異なる障害物の検知を検証。各解析結果は、遠隔PCにリアルタイム配信された。

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  • システム構成と利用機器

車両監視では、4K映像を5G伝送しMECでAI解析後に遠隔地へリアルタイム配信する技術を使い、映像の取得から遠隔地への配信まで0.94秒で実現したという。AI解析では、幅1mmの擬似的な亀裂を検出し、ハンドル、ブレーキパッド、車軸温度は、試行ごとに対象の異常検出に成功している。

線路点検ではドローンとの通信に、Wi-Fiの構成に加えてドローン上の5G端末(上空)と5G基地局(地上)が直接通信可能な構成を導入。各構成において、4K映像を5G伝送しMECでAI解析後に遠隔地へ配信するまで、1.26~1.33秒で実現したという。AI解析では、10cm角の木片から身長170cmの人まで、試行ごとに対象の異常を検出成功したとしている。

5G端末の上空利用では、Wi-Fi区間を28GHz(ミリ波)の実験局に置き換えて検証。5Gの上空利用は、現状では設備や電波干渉調整などの課題があるが、将来的には映像伝送と無人地帯の目視外飛行を通じた新たな産業創出(被災状況確認や医療、建設管理など)につなげる。

中央復建コンサルタンツとドコモは今後、5Gと高速AIディープラーニング、4K映像配信、ドローンなどのデバイスを使用して本格運用を検討する。鉄道事業における課題解決には京急と、他の社会インフラにおける課題解決には横須賀市と連携して取り組む他、他の事業者への水平展開を推進していく方針だ。