かつてのケータイユーザーには懐かしく、スマホネイティブ世代には斬新なデザインの5G対応折りたたみスマートフォン「motorola razr 5G」が、3月26日に日本でも発売されます(SIMフリー版は直販の「MOTO STORE」価格で179,800円)。発売を前にモトローラのプレミアム・フラグシップ製品担当ジェネラルマネージャー、ジェフ・スノー氏が、日本のメディアからの取材に応じました。

  • razr 5Gを手にするモトローラ プレミアム・フラグシップ製品担当ジェネラルマネージャーのジェフ・スノー氏

    モトローラ プレミアム・フラグシップ製品担当ジェネラルマネージャーのジェフ・スノー氏

「moto razr」のデザインに最新技術を詰め込んだ

2000年代に折りたたみの携帯電話で一世を風靡した「moto razr」ですが、約18年の時を経て現在に再び誕生したのは、6.2インチの大画面有機ELディスプレイを折りたたむことができる、5G対応のスマートフォン。スノー氏によればプロダクトデザインチームには、当時の製品に携わっていた人もいるとのこと。

そうした理由もあってデザインに「オリジナルのニュアンスを生かすことができた」といいます。「オリジナルの『moto razr』は革命的で、あれだけの薄さに当時はまだ珍しかった金属のマテリアルを使用するなど、業界を刺激するものでした。今回の『motorola razr 5G』のデザインは、そのオリジナルにより近いものになっています」。

とはいえもちろん、中身はまったくの別モノです。「motorola razr 5G」は、その名の通り5G対応を含む数多くのテクノロジーが採用された、スマートフォンとなっています。

閉じた前面には2.7インチのクイックビューディスプレイも搭載。カメラは約4,800万画素のメインカメラに加えて、約2,000万画素のインカメラも備えています。また2度端末をひねるとクイックビューディスプレイにセルフィー用のカメラが起動するなど、「Moto Actions」と呼ばれる操作にも対応。CPUにはQualcomm Snapdragon 765Gが採用されています。

  • 開いたときの厚さは7.9mm。オリジナルの「moto razr」を彷彿とさせるスリムなデザインとなっています。中央にヒンジを設け、ここで折りたためるオドロキの構造

閉じるとディスプレイがカーブして収まる

さまざまなテクノロジーの中でも特に、「ディスプレイを折りたたむメカニズムの開発には、多くの投資をしてきた」とスノー氏。閉じたときにディスプレイがヒンジ内にティアドロップ型に収納され、ディスプレイの負荷を低減するしくみは、特許も取得しているといいます。

日本では未発売だった前モデルからも改良が加えられていて、ディスプレイの収まりが良くなっているとのこと。「5Gに対応するなど新たなテクノロジーを追加して、なおかつバッテリーを長持ちさせつつ、前モデルよりもかなりコンパクトになっています。ルック(見た目)だけでなく、実際に触ったときのフィール(操作感)も良くなっている」と説明します。

「折りたたむ技術にだけでなく、クイックビューディスプレイや5Gなど他のテクノロジーについても、これだけのサイズの中に全部を詰め込むのはとても難しかった。ただそのおかげで、非常に魅力的で現代的なスマホになっていると思います」(スノー氏)

秘密は画面下の「出っ張り」! 主要機能を収める

同じく折りたたみディスプレイを採用する「Galaxy Z Flip 5G」が1枚の板を真半分に折ったような形状なのに対し、「motorola razr 5G」はオリジナルの「moto razr」と同様に、ディスプレイの下側が出っ張っていて、閉じたときにその凹凸が合致するデザインになっています。

この出っ張った部分は「moto razr」としてのアイコンであると同時に、「中にはスピーカーが搭載されていて、音質の良さを確保するための重要な役割を担っている」とスノー氏。SIMカードスロットもここに収納されているほか、アンテナも入っていて、「開いてるときも閉じているときも、アンテナの性能がきちんと発揮できるようになっている」といいます。

  • スピーカー、SIMカードスロット、アンテナなどを収納する出っ張り部分。「moto razr」のアイコンであると同時に、さまざまな機能を担っています

また「Galaxy Z Flip 5G」は90度曲げた状態で置いて使うこともできますが、「motorola razr 5G」のヒンジは途中で止められる仕様にはなっていません。そこを補助するように、クイックビューディスプレイにより、閉じたままでも写真撮影やアプリが利用できるようになっています。

「かなり時間をかけて考えたのは、閉じた状態での体験。まず高品質なメインカメラで自撮りができるようにしました。これは大きなイノベーションだと思っています。またスマホを開いた状態でかけた電話を、途中で閉じてスピーカーフォンで続けたり、閉じた状態で受信したメールの続きを、開いて大きなディスプレイで読むこともできます。このようにさまざまなユースケースを考えた結果、今回は“閉じた状態でいろんなことができる”ことに注力しました」。

  • 背面のクイックビューディスプレイがあれば、閉じた状態でさまざまなアプリを利用できます。クイックビューディスプレイに表示するアプリや、並び順はカスタム可能。カメラのほか電話もかけられるようになっています

なおこのヒンジではオリジナルの「moto razr」のように、片手で端末を振ってシャキーンとディスプレイを開くこともできます。

「前モデルのユーザーに対して実施した調査では、99%の人が1日に100回ほどディスプレイを開けたり閉めたりしています。これは5年間で20万回にもなりますが、その使用に耐えられるように機械的、工学的な検討もした上で開発しています」とスノー氏。「振って開く使い方を推奨しますか?」という筆者の問いに対し、「大丈夫です。私自身もやっていますし、損傷などは発生しませんので安心してください」と答えてくれました。

目指したのは「もっとポケットに入れられる」スマホ

「moto razr」を冠したスマートフォン自体は、実はこれが初めてではなく、これまでにも複数の端末がリリースされています。それらは1枚板の一般的な形状でしたが、そもそもモトローラはなぜ今回、折りたためるスマートフォンを作ろうと思ったのでしょうか?

その理由についてスノー氏は「コンパクトなスマホを持ちたいというニーズが市場にあるから」だと説明します。

「昨今のスマートフォンはどんどんサイズが大きくなっていますが、スマホを1日中手に持っていたい人ばかりじゃない。コンパクトに折りたたんで、ポケットに入れて持ち運べると同時に、従来の大きさに広げて使えるものが必要だと考えました」。加えて「今のスマホはどれも同じようなルック&フィールになっているので、デザインを刷新するというか、フレッシュなものにしたかった」とも。「ファッションステートメントのように、持ってワクワクできるようなスマホにしたいと考えた結果です」。

大画面化するスマートフォンをコンパクトに持ち歩くために開発された「motorola razr 5G」ですが、折りたためるスマートフォンの中には、ディスプレイを横に開いてタブレットに近い大画面が使えるものもあります。モトローラでも「横でいくのか縦でいくのか、どんなカタチでサイズはどれぐらいなのか、何かベストかをじっくり考えた」といいます。

「折りたためるディスプレイはこれからどんどん伸びていく領域だと思いますし、そのエコシステムに我々が参画できることをうれしく思っています。ただその第一弾としてはまず、従来のスマホがポケットに入らないというニーズに応えたいと考えました。今はまだ折りたたみは高価なので、横開きの場合はスマホとタブレットを2台持ちしたほうが安価になってしまう。となると一台二役にする価値はあるのか。我々が考えるターゲットのニーズを満たすということでは、今回は一致しなかったので、横ではなく縦型になったということです」。

最後に折りたたみスマートフォンの現状について「今はまだ参画メーカーも製品も数が限られてるし、新しいテクノロジーで価格も高いので、ユーザーが少ないのは致し方がない」と語ったスノー氏。

一方で「これから多くのメーカーが参入してくれば、コストも下がってイノベーションも進む」との期待も。またそうした状況になっても、「モトローラの技術は将来に繋げていけるものだというふうに、自信を持っています」と語りました。