2011年6月に初のChromebookが発売されて今年で10年。既報のように、3月9日(米国時間)にGoogleがChrome OSの節目となるアップデート「Chrome OS M89」を発表した。そして「Chromebookの誕生10周年」を祝福するWebサイトなどを公開した。Chrome OS M89と共に、Chromebookは新たな10年に踏み出す。
Chromebookの10年をふり返ると、最初のChromebookが登場する前にGoogleが行ったパイロットプログラムが今日の成功の礎になった。Chromebookはクラウドとの連携に基づいたモダンなPCデバイスとして話題になったものの、Webアプリしか利用できなかった当時のChromebookに対する個人PCユーザーの反応は冷ややか。しかし、シンプルに使えて、安全で管理しやすいPCデバイスを求めていた教師や教育機関のIT管理者の関心を集め、パイロットプログラムのフィードバックを通じてGoogleは教育市場におけるChromebookの大きな需要を確信した。
2011年にAcerとSamsungが初のChromebookを発売。2012年、よりパソコンに近い感覚でブラウジングできるAuraユーザーインターフェイスを導入。当時、教育市場にiPadが急速に浸透したが、キーボードと350ドル前後からという価格競争力、G Suiteを武器にChromebookがじわじわとシェアを伸ばし始めた。
シンプルなクラウド・マネージメント・ソリューションによるデバイス管理、学習エクスペリエンスが向上。低コストである以上に、扱いやすく、数多くのデバイスを容易に管理できる機能が評価を高めて、2014年にChromebookは米国で最も販売された教育用デバイスになり、それからトップを維持し続けている。
2-in-1コンバーチブル型、USB-Cポートを備えたChromebook Pixelなど、Windows PCと歩調を合わせるようにChromebookも進化。2016年にはChromebookでGoogle Playストアが使えるようになり、教育市場以外にも利用者が広がり始めた。2017年にTitan Cセキュリティチップをサポート。2019年にはビジネス向けソリューションとなる「Chromebook Enterprises」が登場している。
米国以外の国でも公立学校でChromebookの採用が拡大し、Googleによると2019年4月時点で教育分野におけるChromebook利用者は全世界で4000万人以上。Chromebookはクラウドと連携してどこにいても学べ、仕事を進められるようにデザインされている。2020年、新型コロナ禍でリモート授業やテレワークへの対応が求められると、ビデオ会議機能を見直し、デバイスの直送を実現するゼロタッチ登録を用意するなどリモート環境のソリューションを充実させた。現在、Google Classroomの利用者は全世界で1億5000万人を超える。パソコン向けOSのいくつかの調査において、2020年にmacOSを上回り、Windowsに次ぐ第2位の地位を占める存在になった。
コロナ禍を経て、教育やビジネスにおけるPCの必要性が変わっている。学生や教師は、どこにでも持ち運べてパワフルで、生産性を高めてくれるデバイスを求めている。Chrome OS M89の新しいスクリーンキャプチャ・ツールでは、授業の記録に不可欠なスクリーンショットやスクリーン録画をクイック設定もしくはショートカットで利用できる。キャプチャしたファイルはToteに表示され、最近使用したファイルに簡単にアクセスできるほか、ピン固定してプレゼンテーションやグループプロジェクトに必要な重要なファイルを管理できる。クリップボードが5つのアイテムの保存に対応し、アプリ間を行き来しながらコピー&ペーストする手間が軽減する。8つのDeskをサポートしているので、クラスごとに別々のDeskを割り当てるといった使い方が可能になる。シンプルであり続けながら、ニューノーマルな学び方や働き方においても生産性を落とさないように改良されている。
新たな10年に踏み出すのはChrome OSだけではない。教育分野向けのChromebookだけでも、CES 2021でASUSが発表した「Chromebook CX9」「Chromebook Flip CM5」を含む40以上の新製品が登場するという。