以前から、Microsofがクラウド経由で実行するWindows 10の開発に着手しているというウワサがある。たとえばMicrosoft Azureで利用するVDI(仮想デスクトップ基盤)のWVD(Windows Virtual Desktop)は、2019年9月から一般提供を開始して一定の評価を獲得してきた。現在なら十分なネットワークインフラさえ確保できれば、手元のPC資源は最小限に抑えて、費用を支払いながらクラウドパワーを利用できる。また、GPU性能を必要する3D CADをVDI環境で利用する場面も増え、「GeForce NOW」のようにPCゲームのクラウドサービスも登場した。
MicrosoftウォッチャーのMary Jo Foley氏は一連の流れに対して、Microsoftが「Cloud PC」に注力し始めていると推測しているが、その一端が見えてきた。Microsoftが米国時間2021年2月3日に公開した公式ブログでは、「Windows 10 in cloud configuration」と題して、Windows 10をクラウド環境に最適化する設定を披露している。
「Cloud Configuration」はMicrosoft IntuneとConfiguration Managerを組み合わせ、クライアントデバイスのセキュリティや管理を行う「Microsoft Endpoint Manager」において、クラウドベースの構成をWindows 10に施すというものだ。ユーザーアカウントはAAD(Azure Active Directory)に登録し、デバイス情報もMicrosoft Intuneでクラウド管理用に登録することで、最新のセキュリティ更新プログラムも適用する。
対象となるのはWindows 10 Pro・Enterprise・Educationだが、IDおよびアクセス管理が必要であることから、Microsoft 365 E5未契約の場合、ユーザーあたり1,610円/月(税別、年間契約)の「Enterprise Mobility+Security E5」のライセンスが必要になるだろう。
ここで強調したいのは、Cloud Configuration = Cloud PCではないということ。Microsoft Teams、Microsoft Edge、OneDrive for BusinessといったMicrosoft 365 Apps(Office 365)に加えて、Win32アプリや業務アプリを利用する企業ユーザー向けの構成を容易にする存在だ。これまで社内やデータセンターで稼働していたオンプレミスサーバーがクラウドに移行しているように、クライアントもクラウドへシフトするのは明らかだろう。
そこにたどり着くまでの道のりは遠いが、着々と準備は進んでいるようだ。Microsoftは2020年6月にCloud PCチームのプログラムマネージャーを募集しており、リークしたアドレスにアクセスすると、「Cloud PCを使用できない」とのメッセージが現れる(Microsoft 365ベースのサイト)。
料金やプランは現時点で不明だが、WVDが従量制課金であることを踏まえると、Cloud OSは月額固定制となるのではないだろうか。漏れ聞こえてくる話を聞く限り、Cloud PCはPCゲームを楽しむユーザー向けではなさそうだが、VDIとは異なるクラウドOSの可能性は高い。