日本マイクロソフトは1月28日、金融分野のデジタルトランスフォーメーションにおける最新の取り組みを紹介する説明会を開催。金融機関向けの新たな協業プログラム「Microsoft Enterprise Accelerator - Fintech/Insurtech」を発表した。
説明会の冒頭、日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 金融サービス営業統括本部 統括本部長 綱田和功氏は、「クラウド製品のAzure、Office 365、Dynamics 365は非常に伸びている。全産業のDXが進み、クラウドの導入が増えている。日本の金融機関でも、1回目の緊急事態宣言以降、クラウドの利用が伸びており、Teamsの利用はコロナ前の10倍に増えており、Azureの利用も倍になっている。Teamsはリモートワークや非対面営業での利用、Azureはリモートワークのためのバーチャルデスクトップで、DX系のワークロードはまだ小さいが、企業のモダナイゼーションが着実に進んでいる」と語り、コロナによってクラウドシフトが加速しているとの認識を示した。
そして、金融機関が2025年の崖を乗り越えDXを進めていくにあたり、現在の重厚長大な金融機関のレガシーシステムを放置すると、既存システムの維持に費用がかかり、DXのための予算が確保できないと指摘。
DX実現のためには、業務基盤の「レガシーシステムからの脱却技術的負債の解消」と、「新たなビジネスモデルの模索迅速な意思決定と具現化」の両方をやっていかなければならないとした。
そして、ITインフラ、ルール・ガバナンス、IT人材の近代化をした上で、データの収集・洞察・活用を中心としたITシステムの再編成が必要だとした。
「FgCF for DX」を発表
日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 金融イノベーション本部 藤井達人氏によれば、デジタル時代の金融サービス変革の方向性としては、オープンバンキング/インシュランス、超パーソナライズされた体験の提供、データインテリジェンス、自律型サービスへの進化の4つの方向性が考えられるという。
藤井氏は金融機関がDXを推進するためには、デジタルフィードバックループが重要だとした。これは、データの収集・洞察・活用を通じて、継続的に変革をし続けることだ。
同社は2019年に、金融機関が業務変革を実現する基盤を構築するためのガイドとして、リファレンスアーキテクチャ「Financial-grade Cloud Fundamentals」(FgCF)をGitHubで公開した。しかし、このなかでは、デジタルフィードバックループをカバーできていないため、昨年からFgCFにおけるデジタルフィードバックループに関するリファレンスアーキテクチャを整備する作業を行い、今回、「FgCF for DX」を発表し、今後公開していくとした。
マイクロソフトの赤間信幸氏はその内容をブログの中でFgCFについて、
「FgCF(Financial-grade Cloud Fundamentals)は、赤間が金融営業チームに異動してきてから様々なお客様に行ってきたコンサル内容を、汎化して一般公開しているものです。内容としては、
・ゼロトラスト型マルチクラウド環境を念頭に置いて、どのように OA 環境やデータセンタ環境を構成すべきかという全体構成論
・仮想ネットワークや Azure AD、IaaS VM など、Azure 技術に関する実践的な視点からの解説
・より具体的に IaaS VM や PaaS Web Apps, AKS などを利用してどのようにシステムを構成すべきかのリファレンスアーキテクチャ
などを含んでおり、短時間スパルタ方式で Azure を勉強したい人にも向いています。」
と紹介している。
「FgCF for DX」は、デジタルフィードバックループの実現に向けた技術基盤を整備するためのテクニカルガイドで、IT 基盤、人材、データのあり方を示しているという。
新たなパートナープログラム
また、同社は同日、金融機関のDX推進を支援する新たなパートナー協業プログラム「Microsoft Enterprise Accelerator-Fintech/Insurtech」を発表した。
これは、パートナー企業と協働で金融機関の変革を促進するプログラム。このプログラムは、金融機関の金融サービス変革の方向性の4つのうち、フィンテック・インシュアテック領域(金融サービスの機能を外部の異業種やスターアップに提供するもの)の強化に向けたもので、マイクロソフトは、パートナーと連携して金融業界のモード2(環境の変化に対応する競争力強化に向けた変革)における提案力の強化を図り、最新テクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進するという。
このプログラムでは、Azureやブロックチェーンなどのマイクロソフトのテクノロジーと、パートナー企業のソリューション、データ分析能力や情報管理基盤などを組み合わせることで、金融機関が取り組む新たな収益源確保につながる変革を支援。
具体的には、オープンAPIによるオープンバンキングやオープンインシュランスなどを通して、自社の金融機能を外部企業に提供し、デジタルでの販売チャネル拡大を図る金融機関のニーズに対応するという。
藤井氏新たなパートナー協業プログラムを発表した背景について、「海外では、マイクロソフトはグローバル金融機関と提携して、伴奏パートナーとしての地位を獲得している。日本市場でも金融機関と戦略的パートナーシップを実現していきたい。そして、グローバルで得た知見を日本でも活用し、先進的なPOC、その先の実案件につなげていきたいと思っている。現在は12社のパートナーに参加していただいているが、今後は30社まで拡大していきたい」と語った。