ソニーは1月27日、同日の深夜に発表したフルサイズミラーレス「α」シリーズの新製品「α1」(ILCE-1)の説明会を実施。現行のデジタルカメラでは最高峰の撮影性能を誇るα1の実機を展示するとともに、製品の開発の狙いや改良点などを解説しました。

  • 3月19日に販売を開始する「α1」(ILCE-1)。価格はオープンで、予想実売価格は税別80万円前後

EVFの見え具合は一気にステップアップ

ソニーによると、ミラーレスカメラを購入した人のなかで「写真だけしか撮影しない」「動画だけしか撮影しない」という人は少数派になり、写真撮影と動画撮影の両方を日常的に楽しむ「ハイブリッド派」が増えているといいます。写真と動画の両方の撮影性能を引き上げ、撮影シーンや被写体の種類を問わず、撮りたいと思ったシーンを確実にとらえられるようにしたのがα1だとしました。ソニーはα1を「αシリーズのフラグシップ」と位置づけています(ソニー自身は、これまでのα9シリーズをフラッグシップと呼称したことはないとのこと)。

  • 本体サイズはα9シリーズとほとんど同じ。一眼レフのフラッグシップモデルとは異なり、縦位置グリップ一体型とはしていない

実際にα1を試してまず感じたのが、EVF(電子ビューファインダー)の自然で精細な表示です。約944万ドットの高精細な有機ELパネルを用いているだけでなく、リフレッシュレートを240fpsに引き上げたため、表示が精細なだけでなくカメラを左右に振っても残像はほとんど感じられず、しっかりと像が確認できました。一眼レフカメラの光学ファインダーと比べてもそん色のない仕上がりになったと感じます。

リアルタイム瞳AFは、動物に加えて新たに鳥に対応。木々の間に隠れている鳥も、瞳さえキャッチできれば枝葉にピントが合うことなくビシッと捉えてくれるので、野鳥撮影派は注目といえます。従来機種と同様に、メニューから人物、動物、鳥のどれを有効にするかを設定する必要があります。

  • 操作ボタン類のレイアウトはα9 IIとほぼ同じ。リアルタイム瞳AFは、新たに鳥認識AFにも対応した

進化したのは鳥認識AFだけではありません。人物を対象としたリアルタイム瞳AFは、アルゴリズムの改良で精度が30%も高まり、横向きや上向きなど角度がある状態の顔をとらえやすくなりました。さらに、瞳検出の演算を最大120回/秒に引き上げたことで追従精度が高まり、人物がこちらに振り返った際なども素早く瞳をキャッチできるようになったといいます。もともと精度の高さで定評のあったαのリアルタイム瞳AFですが、さらに性能を底上げしたのは驚かされます。

高速連写は、AE/AF追従で30コマ/秒に進化しました。α9と同様に連写時も無音でファインダーがブラックアウトしないので、まるで動画を撮影しているかのように5000万画素の高精細な写真が撮影できます。

高速連写で注意したいのが、AF-Cモードで撮影する場合、一部の交換レンズは最高連写速度が20コマ/秒や15コマ/秒に制限されること。30コマ/秒のAF-C撮影は、フォーカス用のレンズを動かすアクチュエーターが強力である必要があるそうです。ソニー純正レンズはほぼ最高速での撮影に対応しますが、サードパーティー製の交換レンズはすべて15コマ/秒となるので、その点は頭に入れておく必要がありそうです。

  • α1のWebサイトに掲載しているAF-Cモード時の連写速度一覧。ほとんどの純正レンズは30コマ/秒での撮影に対応するが、サードパーティー製レンズは一律で15コマ/秒に制限される

背面液晶はα9シリーズと同じくチルト式としています。動画撮影ではα7S IIIやα7Cのようなバリアングル式モニターのほうが利便性が高いのですが、チルト式を採用したのはスポーツカメラマンの利用を見込んでの決断だといいます。

  • 標準サイズのHDMI端子を採用する

  • メモリーカードスロットはCFexpress Type AカードとSDXCカードの両方に対応したデュアルスロットとなる

  • ミリ波対応の5Gスマートフォン「Xperia PRO」と組み合わせれば、撮影した映像の表示や高速転送ができる

α1は、現行のデジタルカメラとしては最高水準の撮影性能を搭載し、安定した動画撮影を可能にする放熱性能を備えつつ、このクラスでは一般的な縦位置グリップ一体型とはせず、α9シリーズと同等の小型軽量サイズを継承した点が注目できます。「カメラのフラッグシップモデルは大きく重い」という常識を覆す新世代の高性能ミラーレスとして、プロカメラマンや映像クリエイターに支持される1台となりそうです。