資生堂は、紫外線防御粉末の凝集体を細かく分散・維持する技術である「スムースプロテクトテクノロジー」を新たに開発、日焼け止めの製造プロセスに活用することにより、自社の従来製法よりも少ない紫外線防御粉末で効果的に日焼け止め効果を引き出すことに成功したと発表した。

  • スムースプロテクトテクノロジーの活用による紫外線防御効果の違い

    スムースプロテクトテクノロジーの活用による紫外線防御効果の違い(イメージ図)(出所:資生堂)

紫外線防御粉末は、油分になじみやすいように表面を疎水化処理しており、表面処理は完全ではないため、露出した未処理面同士が凝集し、製品中では分散しにくい状態となっている。そのため、強い凝集力を持つ粉末を日焼け止めに安定に配合する技術が求められていた。

  • 疎水化処理粉末の油分中で凝集するイメージ

    疎水化処理粉末は油分中で凝集する(日焼け止めの製造工程において、粉末を油分に分散すると凝集が起こりやすい) (出所:資生堂)

スムースプロテクトテクノロジーはこうした課題を解決するために開発されたもので、自社開発の分散成分を効果的に配合し、高圧での特殊な処理を行うことで、安定な分散状態を実現することを可能とした技術。実際に、同じ組成の紫外線防御粉末を含む分散物に対し、従来技術で分散させた場合と、スムースプロテクトテクノロジーで分散させた場合で紫外線防御効果の比較実験を行った結果、スムースプロテクトテクノロジーが従来技術に比べて、約2.9倍の紫外線防御効果を引き出すことを確認。同社では、同技術を活用することで、高い紫外線防御効果を維持したまま日焼け止めに配合する紫外線防御粉末を減らすことが可能になったとしている

  • 資生堂の従来製品と新技術スムースプロテクトテクノロジーの紫外線防御効果の比較

    同社従来製品と新技術スムースプロテクトテクノロジーの紫外線防御効果の比較。凝集を防ぐことにより紫外線防御効果が向上することが分かったという (出所:資生堂)

また、スムースプロテクトテクノロジーを活用した製品における、塗布時の白さ低減効果の評価も実施。塗布後の白さ、塗布時の粉末の伸びなどを比較した結果、従来技術に比べスムースプロテクトテクノロジーでは、同じ塗布量であれば白さが軽減されることがわかったという。

  • 従来技術とスムースプロテクトテクノロジーによる白さの比較

    従来技術とスムースプロテクトテクノロジーによる白さの比較 (出所:資生堂)

さらに紫外線防御粉末の分散工程にスムースプロテクトテクノロジーを導入して分散した疎水化処理粉末を用いた日焼け止めの電子顕微鏡による観察を実施。従来技術に比べスムースプロテクトテクノロジーによる分散の方が紫外線防御粉末が細かく、より微細に分散できていることがわかったともしている。

  • 電子顕微鏡による観察画像と画像の説明

    電子顕微鏡による観察画像(左)と画像の説明(右) (出所:資生堂)

加えて、スムースプロテクトテクノロジーの活用による、従来技術活用品との使用感触の違いについて独自開発による触感センサを用いて検証を実施。その結果、スムースプロテクトテクノロジーを用いた場合、日焼け止めを塗った際の肌への負担感や被膜感は減少され、より素肌に近い使用感触が得られることが分かったとしている。

  • 触感センサでの使用感触の比較

    触感センサでの使用感触の比較(出所:資生堂)

なお同社は、2014年に水や汗に触れることで紫外線防御効果が強くなる技術を開発しているほか、2019年に太陽などの熱によっても紫外線防御膜が強化される技術を開発してきており、今回の技術についても、高い紫外線防御力と心地良い使用感や白くならない塗布後の見た目の両立など、新たな価値を提供することにつながるものと説明しており、今後も幅広い視野から日焼け止め技術の開発を行っていきたいとしている。