携帯電話の料金プランが、2021年3月に大きく動く――。トレンドの一つを表すキーワードとしては、「20GB・2,980円」と「オンライン専用」の2つに注目だ。ここでは、ソフトバンクが提供する「SoftBank on LINE」について、読み解きたい。
大手3キャリアの新プラン発表の現状
まず、月20GB・月額2,980円プランの発表で先陣を切ったのは、NTTドコモだった。20年12月3日に、オンライン専用の新プランとして「ahamo(アハモ)」を発表。2021年3月からの提供開始を予定する。
これに続き、ソフトバンクも2020年12月22日に、新プランを発表した。特に「SoftBank on LINE」として紹介された新ブランドコンセプトでは、月20GBを月額2,980円(以下すべて税別)で利用でき、ahamoの対抗プランとして注目されている。
残るKDDIについては、具体的な新プランがまだ発表されていないが、KDDIの高橋社長は2021年1月に新プランを発表する予定であることを明らかにしている。また、KDDIは2020年10月30日に、MVNOとして「KDDI Digital Life」株式会社を設立したことを発表している。このKDDI Digital Lifeは、シンガポールのCircles Asia社と協業し、デジタルネイティブ世代向けの通信サービスを提供する予定のため、NTTドコモやソフトバンクと同時期に何らかの対抗プランを投入してくるのでは、と予想される。
「SoftBank on LINE」とは何なのか
さて、ソフトバンクが提供する「SoftBank on LINE」は、多くの報道で新ブランド名のように扱われているが、ソフトバンク、およびLINEが公開したプレスリリースを見る限り、あくまでブランドコンセプト名として記載されている。「新ブランドのブランド名などの詳細は、決まり次第お知らせします」と但し書きがあるように、新ブランドの仮称として考えておくのがよさそうだ。
SoftBank on LINEは、ブランドコンセプト名の通り、格安SIMサービスの「LINEモバイル」を元に構成される。LINEモバイルについて触れておくと、MVNO(仮想移動体通信事業者)として格安SIM市場に参入したのが、2016年秋のこと。2018年春には、ソフトバンクが資本業務提携を発表し、LINEモバイルの株式51%を取得した。そして、2021年3月に予定するLINE株式会社とZホールディングス株式会社(ソフトバンクグループの持株会社)の経営統合を機に、ソフトバンクはLINEモバイルの100%子会社化と、吸収合併に向けて検討を進める段階にある。
そのため、現在MVNOとして通信サービスを提供しているLINEモバイルでは、新サービスと入れ替わるように新規受付を終了する。ただし、既存ユーザーにとっては、SoftBank on LINEへ移行せず、LINEモバイルとして利用し続ける選択肢も残る――と報じられている。
新しく生まれるSoftBank on LINEは、MVNOではなく、ソフトバンク下のMNO(移動体通信事業者)として通信サービスを提供。ソフトバンクの4G・5G回線を共通して利用できるほか、ネットワーク品質もソフトバンクと同等であるとうたわれた。一方、通信キャリアとしての「ソフトバンク」ブランドとは別物であり、すでにソフトバンクがサブブランドとして展開している「ワイモバイル」と似たような立ち位置になるのだと理解しておきたい。
ただし、SoftBank on LINEのサービスや契約に関するすべての手続きはオンラインのみで受け付け、店舗は展開しない。ここがワイモバイルと大きく異なる点だ。サービス契約後のサポートについても、オンラインのチャットサービスを中心に対応するとしており、LINEアプリを活用した手続きができることも特徴だ。
SoftBank on LINEのプラン内容
SoftBank on LINEで提供される新プランは、月額2,980円で月20GBの高速データ通信が利用可能。「○カ月は何円」というような期間限定の割引は設けられず、基本料金が2,980円で常に一定だ。通信量が20GBを超えた場合にも、最大1Mbpsの通信速度で使い続けられることもトレンドをおさえている。通信量の追加チャージも1GBあたり500円と安価な部類だ。
さらに、LINEモバイルの特徴を引き継ぎ、「LINEがギガノーカウント」として、LINEをゼロレーティングの対象とすることもポイント。ただしこの対象は、LINEトークやLINE通話などが予定されており、機能や条件によっては使い放題の対象外となる点に留意したい。
通話料金については、標準で5分以内の国内通話が無料だ。5分超過時には「30秒ごとに20円」の通話料が発生する。月額1,000円を上乗せすると、国内通話がかけ放題になるオプションも提供される。
そのほか、eSIM向け通信プランの提供も明らかになっている。こちらはNTTドコモの「ahamo」では明言されておらず、いまのところSoftBank on LINEならではの特徴だ。
SoftBank on LINEの概要(金額は税別)
- 基本使用料:月額2,980円
- データ容量:20GB+「LINEがギガノーカウント」
- データ容量超過時の通信速度:最大1Mbps
- (LINEアプリのLINEトークやLINE通話はデータ消費に含まれない予定)
- (1GB/500円で高速データ通信容量を追加可能)
- 通話料:5分以内の国内通話が何度でも無料
- (5分を越えた場合は30秒ごとに20円)
- (一部を除く5分以上の国内通話が無料になるオプションを月額1,000円で提供予定)
SoftBank on LINE、どんな人にオススメ?
まず前提として、SoftBank on LINEは基本的にはオンライン専用として提供される。メインターゲットは、オンライン経由の申し込みに抵抗がなく、チャットサポートもスムーズに受けられるような、ある程度のITリテラシーを持つ層だろう。
申し込みを店舗で行いたい人や、有事の相談時にサポート窓口へ行きたいような人は、不要なトラブルを避けるためにも、SoftBank on LINEの契約は慎重に検討したい。料金が抑えられている反面、サポート面は割り切っていることを理解しておくのが重要だ。
月額2,980円で月20GBの4G/5G通信を利用できる価格は、やはりリーズナブルで魅力的に映る。特に、日常のコミュニケーションツールとしてLINEを頻繁に利用する人ならば、LINEの通信データ容量を除いて20GBを利用できる点は大きい。
例えば、ソフトバンクの段階定額制プラン「ミニフィットプラン」を使っている場合は、1GBまでの利用で3,980円がかかった。もしSoftBank on LINEへ移行すれば、より安い価格で、多くの通信量を使えることになる。コロナ禍で外出頻度が減り、通信料金を少しでも節約したいという人には待望の選択肢となるはずだ。
ソフトバンクグループ内でブランドを移行する場合も、契約解除料、番号移行手数料、契約事務手数料はすべて0円。ソフトバンクやワイモバイルで既存プランを契約していたユーザーにとっては、検討する価値は大きいだろう。
SoftBank on LINEで注意すること
注意点もいくつかある。例えば、SoftBank on LINEでは、キャリアメールは利用できないとされる。アカウントサービスなどの登録にキャリアメールを使用している場合には、乗り換え前に登録アカウント(やメールアドレス)の変更が必要になる。そのほかの周辺サービスの連携有無についても、逐一確認する必要があるだろう。
家族割引を利用している場合にも注意が必要だ。ソフトバンクとワイモバイル間で家族割引が適用されないように、ソフトバンクとSoftBank on LINE間でも適用なし。ソフトバンクを契約している家族のうち、一人だけSoftBank on LINEに移行してしまうと、そのぶんの家族割引が適用できなくなる点は理解しておきたい。
さらに2020年の時点では、対応端末の提供状況が明らかなっていないので、今後の情報がカギになる。iOS、Android問わず、最新のハイエンドモデルをセット購入するような運用ができるかどうか、現時点ではわからないため、どのような運用がベターなのかは判断がつかない。
ちなみに、NTTドコモやauから乗り換える価値があるかどうかは、手数料の有無を考えると厳しいところだ。冒頭で述べた通り、NTTドコモは「ahamo」を提供しているし、au(KDDI)も3月までにサブブランドからeSIM向けプランを用意してくる可能性が高い。正確な評価は、もう少し、提供サービスの細部が明らかになった段階で、初めてできるようになると思う。