来年も教育や5G等に注視。NTTとIOWN構想も規格制定中

12月10日、インテルが定例のプレスセミナーを実施しました。

インテルの鈴木国正社長は、これまでのインテルがコンピューターの民主化で中心的な役割を果たしてきたことを踏まえ、次は「データの民主化だ」を今後の志とすると発言。

従来から進めている「6つの柱」に引き続き投資を行い、ヘテロジニアス環境(xPU)とそれを支えるoneAPIの推進、ソリューション別のプラットフォームの強化と製造技術のさらなる進化を推し進めると説明しました。

  • インテルの「ゆく年くる年」。来年もxPU戦略、将来はシリコンフォトニクス

    インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏氏

  • 今後インテルは「データの民主化」に注力すると発言

  • 現在進めているxPU戦略は変わらず。製造技術の進化の中にはマルチダイパッケージを使い「(他の)ファウンダリの活用も一つの選択肢」と7nmプロセス製品をインテルだけでなく外部ファウンダリー製造品を使う可能性について示唆していました

来年、2021年はいくつかの取組のうち、特に教育におけるDcX(Data Centric Transformation)と5Gに付いて紹介していました。

  • 2021年の取組は8分野を取り上げていました

教育分野においては現在小中学校で進められているGIGAスクール構想の次として高校生向けのGIGAスクール実現に向けたPCの提供と教員向け教務用モバイルPC導入の支援と、幅広い形での一人一台の教育用PC実現に対して支援。

さらに教育でのDcXの推進によって教育データ活用に向けた取り組み(参考記事)に加え、STEAM教育向けに対しSTEAM Lab環境(最新のテクノロジーを使用したアプリケーションやコンテンツを高性能PCを体験できるスペース)の導入検討をパートナーとおこなっていると言います。

  • 教育分野は現在進みつつあるGIGAスクール構想後の取組も含みます。教育データの利活用に関しては議論が起きそうな感じです。ちなみに今年7月に小中高に対しての支援策(アンケート等に回答することで2021年4月まで無償利用)「DISおてがる遠隔授業パック」は現在16校に提供中

5Gに関しては今後ユースケースが広がることを期待する一方、日本独特なローカル5Gにも具体的に取り組みを示したいと発言。

その先、NTTと進めている次世代情報通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」も5月にNTTと共同研究契約を締結し、ソニーを含めた3社で業界フォーラムIOWN Global Forum, Inc. を設立しており、世界の大手企業が参画しています(参考記事)。

  • IOWNは光中心なのでNTTもインテルも技術的強みのあるところ。ちなみにローカル5GはMNOではない会社が無線局免許を取って敷設するものでセキュリティに強みがあります。対してプライベート5GはMNOが基地局を設置し保守を代行するマネージドサービスです

今年はxPUとoneAPIが進展、新技術も続々登場予定

引き続き技術本部の土岐英秋氏が技術的な紹介をしました。今年はxPU戦略を進め、新しいGPU「Xe」も製品を投入したと紹介し、特に大きなところとしてoneAPIと説明。xPUは必然的にヘテロジニアスな環境になるため、oneAPIが効率的なプログラミングをするために必要な技術であると言います(参考記事)。

  • インテル 執行役員常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏

  • 今年の主なイベントを紹介。dGPUは今後ライバルと互角に戦える存在になるのでしょうか?

  • TigerLakeで採用された10nm SuperFinやXe、oneAPIと今年も話題が多かったなぁと思います

今後に関しては12月に行われたIntel Labs Day 2020から3つの技術を紹介していました。Intelの研究開発部門「Intel Labs」は中長期的な技術を開発する部門です。

  • 12月に行われたIntel Labs Dayからも紹介。こちらは製品化が当分先の研究分野です

Integrated Photonicsはデータのやり取りを電気信号ではなく光で行うというものです。今後の爆発的なデータ量の増大によってデータ転送にかかる電力も爆発的に増えるということが課題となっています。

そこでIntelはシリコン技術で光を扱う技術を開発中で、プロトタイプでは光を出すレーザー、受け取る受光素子、増幅器、マルチリンク変調器をすべて実装しているいいます。この技術は将来のデータセンターに留まらず、鈴木氏から紹介されていたIOWNにも繋がるような印象です。

  • 爆発するデータ=爆発するデータ転送ということで、この部分に焦点を当てたのがIntegrated Photonics。すでに必要要素を盛り込んだ試作チップが出来ています。マルチダイ製品の性能向上になると面白そう

Neuromorphic ComputingもAIにおけるエネルギー増大問題を解決するものです。土岐氏はドローンの自動運転で障害物をよけるという動作を例にして、小鳥はたった2gしか脳みそがないものの当然ながら障害物を避けて飛び、必要なエネルギーも今のAIの1/350と少ないと紹介。この技術を進める事でAI推論の効率性を上げるものになるといいます。

  • Neuromorphic Computingも電力効率に着目しています

Quantum Computingに関しては今後ISCCで詳細が発表されるだろうと前置きして、量子ビットをコントロールするHorse Ridge IIを紹介しました。

量子コンピューターの中核部分である量子ゲートは-273.15℃の絶対零度に近い環境下にあるので、コントローラーはそこから離さないといけないのが大変であると説明していました。

現在、量子ゲートを制御するために、コントローラーから同軸ケーブルを引いて電波でコントロールしています。しかし、将来実用的な量子コンピューターを作るために多くの量子ゲートをコントロールするためにはさらに多くのケーブル配線が必要となりこれが障害となります。前製品のHorse Ridgeは4Kと半導体としては極低温で動作するのが特徴で、より量子ゲートに近い所で動作したので、Horse Ridge IIはこの特徴をさらに推し進めているのかもしれません。

  • 70年代のTVで出てきたコンピューターが磁気テープユニットだったように、今の量子コンピューターがTVで出てくる場合、多くは制御部だったり冷却部だったり……この写真もドラム缶のように見えるユニットしか見えません

最後にAI学習用プロセッサ「Habana Gaudi」を紹介しました。GaudiはIntel傘下にあるイスラエルのHabana Labs社が2019年に発表したAIのトレーニングに最適化された製品です。今月AWSで採用されることが発表されました。土肥氏は従来のGPUベースのEC2インスタンスよりも最大40%の価格/性能比があると紹介していました(AWSでは2021年前半に提供開始予定)。

  • GPU以外のサードパーティAIアクセラレーターが誰でも使えるというのは多分初のようで、これは快挙ですね