電子契約と電子サイン

話題は、電子契約と電子サインに移る。

コロナ禍によるテレワーク/リモートワークの普及や電子帳簿保存法関連で、この2つが注目されて久しい。鈴木氏によると、これらで使われるテクノロジーは既に成熟しているため、セキュリティやベンダーの信頼性に気を配る必要はあるものの、テクノロジーに関する心配は無用だという。

電子契約/電子サインで使われる電子契約サービスは、電子契約書のファイルに電子サインとタイムスタンプを付与するもので、電子契約や電子サインのコア部分となるものだ。

実際に利用するには、契約書を作成するプロセスやワークフローといった社内システムとの連携を考慮する必要があり、また取引先が使用している電子契約サービスとの関係も考えなければならないと鈴木氏は指摘する。

「コアは契約締結ですが、その周りも同時に考えていく必要があります」(鈴木氏)

  • 印鑑と電子サインの比較

電子契約や電子サインの最も重要な部分として、鈴木氏は印鑑との違いを挙げる。

印鑑では印影を表示すること自体が重要となるが、電子サインや電子署名では、誰が処理したのかをシステムにログとして記録することが重要になるという。

例えば既に導入が進んでいるワークフローでも、誰のIDでログインして処理したかを記録しており、社外向けよりも社内で従来認印を使っていたような用途で用いられるようになってきているとのことだ。

こうした記録を社外向けにも使用できるようにしたのが、電子サインとなる。ドキュサインやAdobe Sign、クラウドサインといったサービスが知られており、これらはベンダーが記録を保持している点がワークフロートの違いだと鈴木氏は説明する。ベンダーが持つID情報と電子サインを紐付けし、文書の電子サインをクリックすると誰が処理したのかを確認できる仕組みで、現在最も注目されているという。

公的な申請などにも使用可能になっている電子署名では、電子証明書を用いる。認証局が本人確認を行った上で電子証明書し、それをベンダーが文書に添付する。このように電子証明書は厳格だが、より手軽に使用したいというニーズから、電子サインへの注目度が高まっていると鈴木氏は解説する。

これらワークフロー、電子サイン、電子署名のどれをどの場面で使うかについては、法的な定義もガイドラインもまだ無いという。鈴木氏によると、電子サインについては今後法制化が進む流れにあるとのことだ。

鈴木氏は電子契約や電子サインは今すぐ検討すべきと力説し、リードは経理・法務部門としながらもIT部門が積極的に支援する形が望ましいと説く。これは、IT部門では監査対応や訴訟対応ができないためだという。

導入にあたっては、システム連携の可能性や複数の電子契約サービスの使用を考慮に入れ、適用範囲の自社ポリシーを作成すべきだとのこと。最初から社内全体に広げるのではなく、軽めの契約書や同意書から始め、世間の動向を見ながら裾野を広げていこうという流れにあると鈴木氏は解説した。