とある同業のライターと雑談していたとき、「Windows Update(の更新プログラム)は即適用」という姿勢で意気投合したことがある。他方で別ジャンルのライターはSNSで「PCを使おうとするとWindows Updateが始まって仕事にならない」とつぶやいていた。

確かに、Windows XPやWindows 7のService Packの時代からOSのアップデートは一仕事だったが、Windows 10時代になっても同様の意見は見聞きする。筆者のように前のめりでWindows 10を最新の状態に保とうとするのは、少数派なのかもしれない。

Windowsストアアプリとゲームを対象としたクロスプロモーションネットワークを展開するAdDuplexが米国時間2020年10月29日に公開した「AdDuplex Report for November 2020」によれば、Windows 10 バージョン20H2の適用率は全体の8.8%だという。先月のレポートでは1.7%だったため、少しずつだが増えている。

ただしもっとも多いのは、Windows 10 バージョン2004の37.6%。続いてWindows 10 バージョン1909の36.4%だ。このレポートは約10万台のWindows 10 PCを対象に調査しているが、MicrosoftはWindows 10を実行しているデバイス数は世界で10億台であると表明している。すると、Windows 10 バージョン20H2を適用済みのPCは1億台未満の約8,800万台となる。

  • 2020年11月時点のWindows 10バージョン別インストール率(画像はすべてAdDuplexのレポートから抜粋)

Microsoftは機能更新プログラムによる未処理のバグや、未発見の不具合を起こさないため、2018年10月からロールアウト範囲を段階的に拡大してきた。下図のように、Windows 10 バージョン20H2のロールアウト速度は、グラフの角度を見てもWindows 10 バージョン2004やバージョン1909と類似している。

  • 2016年8月以降のWindows 10をバージョン別に推移をグラフ化したもの

少々古いが、ここで別の情報を。2018年7月にMicrosoft MVPのSusan Bradley氏が投稿した2つの記事(#1#2)は、コンシューマーユーザーとITプロフェッショナルを対象に、月例の更新プログラムや機能更新プログラム(現在は年2回の提供)に関する満足度を調査した結果である。

たとえば「機能更新プログラムはビジネスに役立つか」との質問には、「まったく役に立たない」がトップ。コンシューマーユーザー(n=823)の35.6%(293人)、ITプロフェッショナル(n=1,122)の35.03%(393人)が投票している。筆者のように「非常に便利」と感じているのは、コンシューマーユーザーの1.94%(16人)、ITプロフェッショナルの1.96%(22人)にすぎない。

ただ、「希望する機能更新プログラムの提供頻度」は、34.52%(291人)のコンシューマーユーザー(n=843)と、39.29%(442人)のITプロフェッショナル(n=1,125)が、「2年に1回」を望んでいる。Microsoftが掲げる「WaaS(Windows as a Service)」と乖離した結果だ。しかし、現状の「年に2回」を望んでいるコンシューマーユーザーは34.28%(289人)、ITプロフェッショナルは39.20%(441人)。「2年に1回」を望む層と、「1年に2回」を望む層は拮抗している。

この拮抗は、2通りのユーザー層が存在することを示しているのだろう。

1つは、機能更新プログラムによる仕様変更に伴い、以前のバージョンでは問題なく動作していた機能やソフトウェアが支障を来した経験を持つユーザー。もう1つは、WSL(Windows Subsystem for Linux)に代表されるように、Windows 10の利便性を大きく押し上げる機能に満足しているユーザーだ。

ゲームプラットフォームのSteamが毎月実施するハードウェア&ソフトウェア調査では、OSの95.65%を占めるWindowsのなかで64ビット版Windows 10が89.28%、32ビット版Windows 10が0.13%、合わせて89.41%だった(2020年10月時点)。あくまでPCゲームを楽しむユーザーが対象なので、世の中の状況を一部切り取った数値だ。前述した10億台という数字が示しているように、Windows PCをビジネスやプライベートで利用するユーザーの大半がWindows 10を使用している。読者諸氏は、「変わらないWindows 10」と「常に変化するWindows 10」、どちらをお望みだろうか。