シャープが力を入れる「8K+5Gエコシステム」。9月に発売した120型の8K液晶ディスプレイや、2021年春の市場投入を目指して開発中の31.5型8K IGZO液晶ディスプレイなど、さまざまな8K関連機器が一堂に会するメディア向け展示会が都内で開催されました。

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    9月に発売開始した、120型8K液晶ディスプレイ「8M-B120C」

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    開発中の31.5型8K IGZO液晶ディスプレイ。2021年春発売を目指している

シャープの8K+5Gエコシステムは、同社だけでなく他の企業とも協力しながらお互いの持つ強みを組み合わせて、8Kを発展・普及させていく戦略です。放送分野だけでなく、医療やセキュリティ、検査システム、インフラ保守などさまざまな分野で8K技術を活用。「8Kの超高精細映像技術を核に、次々と新産業の芽を創出し、社会イノベーションを巻き起こす」ことを目指しています。

今回は、シャープが2020年春〜秋にかけて発売・提供開始した一般消費者向けの製品や、今後発売予定の業務用製品などが一堂に会する展示会となっていました。展示されていた製品をまとめて紹介します。

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    8K放送の22.2ch音声に対応した「AQUOSオーディオ」(8A-C22CX1)。8月に発売され、実売価格は税込79,000円前後

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    シャープのAndroidスマホ「AQUOS R5G」のカメラで撮影した8K動画を、液晶テレビ「AQUOS 8K」で再生しているところ。AQUOS 8K用の「コンテンツダウンローダー」アプリを活用

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    Dynabook「8K映像編集PCシステム」。Thunderbolt 3接続の外付けGPUボックス「Node Titan」(左)と、15.6型4K IGZO液晶を備えたノートPC「dynabook Z95」(右)を組み合わせている

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    CES 2019などに出展されていた、開発中の8Kビデオカメラ。マイクロフォーサーズマウントを採用している(デモ機のレンズは社外品)

国内最大サイズの8K液晶パネル搭載、120型「8M-B120C」

9月に受注生産で発売した、120型8K液晶ディスプレイ「8M-B120C」の実機を会場で見ることができました。

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    8M-B120C

国内最大サイズという、堺工場で製造した120型8K液晶パネル(7,680×4,320ドット)と、直下型LEDバックライトを搭載。明暗差のあるコンテンツも高臨場感で楽しめるHDR表示に対応しています。ディスプレイ部のみで約2.71×約1.56m(幅×高さ)という大きさで、フロアスタンドを装着したときの高さは約1.98m、重さは約206kgにもなるそうです。

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    重厚なフロアスタンドを本体下部に備えている

HDMI入力は、HDMI 2.0×4とHDMI 2.1×1を装備。8K映像をHDMIケーブルを4本使って伝送する方法と、HDMIケーブル1本で8K/60pや4K/120pを伝送する方法に対応します。独自形状のスピーカーとサブウーファーも内蔵。8M-B120Cで8K放送(NHK BS8K)を視聴したときの映像の精細さや迫力は圧巻のひと言に尽きます。

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    デモ機につながれた別売の8Kチューナー(下)

デジタルサイネージやパブリックビューイングなど公共空間への導入のほか、プロダクトデザイナーによるCADデータのレビューに使うといった、幅広い活用を見込んでいるそうです。

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    店舗やショールームなどでの利用が想定されている

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    60型4Kディスプレイを4枚つなぎあわせて120型相当の8K映像を表示する、従来の業務用インフォメーションディスプレイ。大画面を分割してコンパクトに持ち運べる利点はあるが、「画面を縦横に横切るベゼルが気になる」という声もあったそうだ。上記の8M-B120Cは、一枚ものの液晶パネルを搭載することでこの課題を解消した

IGZO液晶の31.5型8Kディスプレイ、約118万円で2021年春投入

さらに、HDR対応の31.5型8Kディスプレイを開発中。2021年春に法人市場への投入を目指しており、価格は税別約118万円を見込んでいるそうですが、説明員は「できれば100万円を切りたい」と話していました。

主に8K動画編集にたずさわるプロのクリエイターをターゲットとしており、「マスターモニターほどのきめ細かい調整ができるわけではないが、カラーマネジメントモニターとして出す予定」とのこと。また、高精細表示が欠かせない医療向けの展開も検討しているようです。

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    31.5型8K液晶ディスプレイのプロトタイプ

独自のIGZO液晶パネルを採用しているのが特徴で、IPS方式のため視野角も広くなっています。展示されていたプロトタイプの輝度は600cd/平方メートルくらいで、実際の製品ではもう少し上げて「よりHDRらしい映像」を作れるようにしたいとのこと。実際に画面から40cmほどの距離で8K映像を見ることができ、映像に映っているアクセサリーや食べ物、生き物などが画面の中に“本当にそこにある”ようなリアルさを体感できました。

インタフェースはHDMI 2.0×4、HDMI 2.1×1、DisplayPort×1を搭載。8K放送チューナーをつなぐことも可能です。なお、BNCなどの同軸入力は備えていません。

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    HDMIケーブル4本をつないで8K映像を表示していた

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    背面

ディスプレイ本体にはハードウェアキャリブレーション機能を搭載。モニター本体に色補正用のパラメーターを内蔵しており、経年使用による色ズレを補正可能で、x-rite製センサー(i1 Pro)に対応する予定です。また、パネルの輝度や色のムラを軽減するユニフォミティ補正機能を装備。

ほかにも、映像の輝度潰れを知らせる輝度警告や、色域外警告、映像のセンターやアスペクトなどを分かりやすくするマーカー表示などを備えています。

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    各種機能の詳細

8K放送の22.2ch音声に対応した「AQUOSオーディオ」

AQUOS 8Kテレビ「CX1」ラインと組み合わせて、8K放送の22.2ch立体音響を手軽に楽しめるというサウンドバー「AQUOSオーディオ」(8A-C22CX1)。8月に発売され、実売価格は税込79,000円前後となっています。

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    「AQUOSオーディオ」(8A-C22CX1)

8K放送で採用されている音声フォーマットである、MPEG-4 AACの22.2ch音声入力に業界で初めて対応したシアターバーシステム。視聴者の前方にスピーカーを設置するだけで、前後・左右・上下を含む360度の立体音響を創出する立体音響再生技術「OPSODIS(オプソーディス)」を採用しているのが特徴です。地上デジタル放送や4K放送の2ch/5.1ch音声信号などにも対応しており、リッチなサウンドが楽しめます。詳細はIT/AVコラムニストの海上忍氏によるレビュー記事を参照のこと。

スマホの8K動画を8Kテレビで再生「コンテンツダウンローダー」

シャープのAndroidスマートフォン「AQUOS R5G」などで撮影した8K動画を、液晶テレビ「AQUOS 8K」で楽しめるようにするアプリ「コンテンツダウンローダー」が9月からGoogle Playストアで無償提供されています。

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    AQUOS 8K向けのAndroid TVアプリ「コンテンツダウンローダー」

スマホの8K動画を、Googleドライブ経由でAQUOS 8K上で再生できるようにするアプリ。アプリをインストールしたAQUOS 8KにUSBメモリなどの外部ストレージをつなぎ、8K解像度のまま動画をダウンロードして大画面で楽しめます。8K動画はファイルサイズが大きいため、テレビの内蔵ストレージを消費せず外部ストレージに保存する仕組みになっているとのこと。

ダウンロードした動画は外部ストレージ内にアルバムのように保存可能で、8K写真や8K解像度以下の動画/写真にも対応しています。

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    コンテンツダウンローダーのファイル選択リスト

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    動画ファイルのダウンロードは、テレビなどを見ている間にバックグラウンドで行える

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    テレビの通知画面からダウンロード状況を確認できる

8Kで美術品を自在に体感。東博で実証実験の2回目を実施

間近で見たり、直接手に取ったりすることが難しい貴重な美術品や工芸品などの高精細画像を体感できる「8Kインタラクティブミュージアム」も展示されていました。70型8K液晶ディスプレイにタッチパネルを取り付けており、タッチ操作で自在に拡大・縮小・回転させることができます。

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    8Kインタラクティブミュージアムで工芸品(陶磁器)を表示しているところ

既に法隆寺(奈良・生駒郡)の大宝蔵院と、国立工芸館(石川・金沢市)で導入済みで、CEATECなどの展示会で8Kインタラクティブミュージアムのデモを見たという各施設の関係者から問い合わせがあり、導入が実現したとのこと。

東京国立博物館(東京・上野)でも8K文化財鑑賞ソリューションの実証実験が7月から8月にかけて実施されましたが(レポート記事はこちら)、11月10日から11月23日まで実証実験の2回目が実施されることが決定しました

ちなみに近年、刀剣への関心が高まっていることもあり、“8Kインタラクティブミュージアムで刀剣を体験したい”という要望が社内外から寄せられているとのこと。個人的にも実現に期待したいところです。

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    東京国立博物館(東京・上野)で、8K文化財鑑賞ソリューションの実証実験の第2回実施も決定

そのほかの8K関連機器の展示を以下、写真で紹介します。

Dynabook「8K映像編集PCシステム」を展示

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    「8K映像編集PCシステム」のイメージ。外部のスタジオなど出先ではノートPCで作業し、自宅に戻って外付けGPUボックスにつないで作業する、といった利用スタイルを提案している

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    外付けGPUボックスにはNVIDIA Quadro RTX4000を内蔵

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    8K出力はHDMI 2.0×4で行う。将来的にはHDMI 2.1対応のモデルを新たに発売することも検討しているそうだ

シャープ製8Kビデオカメラは「鋭意開発中」。8Kカムコーダの展示も

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    8Kのリアルタイムライブビューのデモ。マイクロフォーサーズマウントを採用した8Kビデオカメラの試作機が展示されていた。2019年に開発発表され、現在も「鋭意開発中」とのこと

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    背面モニターはバリアングル仕様

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    8K/60p映像の撮影/収録/再生/ライン出力が可能なカメラ・記録部一体型の業務用8Kカムコーダー「8C-B60A」(2017年発売)。シャープがアストロデザインの技術協力を得て開発した

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    8K映像などを出力する端子(左)を装備。記録用ストレージを搭載できる(「LOCK」と書かれたフタの内部)

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    「8C-B60A」をアストロデザインがカスタマイズしたカムコーダー「AA-4814-B」(2020年10月発売)