最新のDACチップを左右チャンネルに独立配置。電源も強化
Astell&Kernはいつも新製品の開発を始めるときに、当時最先端のオーディオ技術を貪欲に採用してきたブランドです。KANN ALPHAはESS Technologyの最新DACチップ「ES9068AS」を左右独立のデュアル構成で搭載。精緻でありながらパワフルなサウンドを引き出せるDACチップです。
DACフィルターによるサウンドカスタマイズも可能で、PCM 192kHz/24bitまでの音源であれば、3種類のフィルターから好きなものを選んで自分好みの音に作り込めます。
小型化された多数の部品を新設計の基板上に整然と配置することによって、本体をサイズアップせずに電源のパフォーマンスを強化しています。連続音楽再生は最長約14時間半まで対応するスタミナは圧巻です。
処理パフォーマンスの高いクアッドコアCPUを積んでいるので、メニュー操作のレスポンスはとても良好です。KANN ALPHAには最新世代のユーザーインタフェースが搭載されているため、スマホから本格的に音楽を聴くためのハイレゾプレーヤーにステップアップを検討している方にも良い選択肢になるでしょう。
スマホ並みに豊かな拡張性
KANN ALPHAはシンプルに楽しめるハイレゾプレーヤーですが、スマホ的な拡張性に富んだ使い方もできます。
OSはAndroid 9をベースとしていますが、独自にインタフェースを作り込んでおり、Google Playストアからのアプリ追加には非対応です。その代わりに「Open APP Service」を活用することで、SpotifyやAmazon Music、Apple Musicといった音楽ストリーミングサービスのアプリがインストールできます。KANN ALPHAをWi-Fiに接続して、各サービスの楽曲をストリーミング再生したときの音質はケタ違いにハイレベルです。
Bluetoothのオーディオコーデックは、ハイレゾ相当の高品位なワイヤレス再生が楽しめるLDACとaptX HDをサポート。Bluetooth接続の安定感は以前よりも増しています。
プレーヤーの設定をUSB DACモードに切り換えてからPCに接続すると、CDからリッピングしてPCに保存している音源ファイルや、音楽配信サービスの楽曲が、KANN ALPHAが内蔵する高性能DACとバランス接続を通してさらにいい音で聴けます。
新旧KANNを聴き比べ。音質はどこが変わった?
KANN ALPHAのサウンドはゼンハイザーのハイレゾ対応イヤホン「IE 800 S」をつないで聴きました。IE 800 Sは付属の変換ケーブルを使うと4.4mm/2.5mmバランス接続と、3.5mmアンバランス接続に切り換えて聴けるプレミアムイヤホンです。
KANN ALPHAは3.5mmアンバランス接続の音質も十分に素晴らしいのですが、2.5mmバランス接続に換えてみるとボーカルの輪郭線がより鮮明になり、音像が立体的に迫ってくるような手応えがあります。
アップテンポなロックやEDMの楽曲を聴くと、初代KANNよりもリズムの足場が一段と安定して躍動感に鋭さが加わったことがわかります。低音域の足場が固まったことで、中高域のサウンドにも自然な広がりが生まれ、あらゆる音楽の雰囲気を華やかに引き立てます。
4.4mmバランス接続に換えてみると音質はさらに一皮むけて良くなりました。2.5mmバランス接続で聴いた音に比べると、音の歪みや雑味が格段に少なく、透明な静寂が広がる様子まで感じられます。アコースティックギターによるコードのカッティングはきれいに粒が立ちます。大編成のオーケストラによる演奏を聴き比べてみると、2.5mmよりも4.4mmのバランス接続で聴くほうが楽器の音色が鮮やかになり、音のふくよかさや艶めきの違いが明確になります。低音もぎゅっとタイトに引き締まるようです。
ヘッドホンをゼンハイザーの「HD 820」に交換して、4.4mmバランス接続の音を再び確かめてみました。インピーダンスの値が300Ωと高めなヘッドホンですが、音の輪郭は繊細な描写を保ったまま、オーケストラの明るい金管楽器やボーカルの活き活きとしたエネルギー感が存分に楽しめます。KANN ALPHAは、ハイクラスのヘッドホンが備える実力も余すところなく引き出せるハイレゾプレーヤーであると言えます。
KANN ALPHAの価格は税込149,980円にもなりますが、あらゆるヘッドホン/イヤホンの実力を余すところなく引き出す高出力アンプ内蔵ハイレゾプレーヤーとして、ユーザーの期待に応える懐の深さを実感させてくれるでしょう。