薄暗いだけで腰砕けるAFに驚かされる

あと、キットの24-50mmを装着しているときには気づきにくかったZ 5の弱さが24-200mmでは出やすかったような気もする。当初は快適さを感じるのみで進めることができていたZ 5による撮影なのだけど、時を経るごとにけっこう「あれれ?」って思わせることが増えてきたのだ。で、それが最初に気になりだしたのは24-200mmを使っているときだった。使用頻度が高かったから、たまたまそうなっただけなのかもしれないけれど。

一番、気になったのはAFの挙動だ。暗所……いや、暗所とは呼ばないであろうちょっぴり薄暗い状況で早くもAF動作時のゲインアップが目につき始め、同時にAFスピードが目に見えて遅くなることに驚かされた。AFが暗さや低コントラストに対し弱音を吐くに至る閾値が異様に低い感じなのだ。え? この薄暗さでもうダメなの? という感じ。

要するに、ローライトAF(デフォルトでオンになっている。AF-S時に作動)の発動タイミングがやたらに早いってこと。さらに、ローライトAFが動作しているときのファインダーorモニター表示は「スローシャッターで切り取った画をゆっくりコマ送りで見せられる」感じのコマ落ち表示になるのは他のZも同様も、そのときのファインダー(モニター)表示が視覚に与える違和感(扱いにくさ)はZ 5が目立って大きいという一面もある。

しかも、そのような多大な違和感を感じさせてまで真剣に一生懸命ピントを合わせてくれようとしているのに、ローライトAFが動作しているときは結局ピントが合わせられずに終わることが多いというトホホな現実も。AF補助光が有効な範囲ではそうはならないけれど、その“好条件”にハマることは現実には少なく、AF補助光を光らせたくない(あえてOFFにする)ことも現実にはままあるものだ。

いやはや、少しばかり暗い場所で撮ろうとしているだけなのに、まさかここまで負の連鎖を感じることになるとは……。本当に暗いところではもちろん、普通の蛍光灯照明がある室内でもスムーズに撮れないことがあるというのは、初心者に優しいとは言い難く、ベテラン陣にも納得は得にくいのではないだろうか。高感度画質も1世代前の味わいだし。

ひとことで「フルサイズの24MPセンサー」といってもグレードはさまざまなのだろう。わかりやすいところでは、Z 6やZ 7とは違いZ 5のセンサーは裏面照射タイプではないし、その他の要素、例えば読み出し速度とか感度にも「お値段通り」ともいえる何かしらの違いがあるのかもしれない。ミラーレス機のAFはイメージセンサー頼り。いや、ミラーレス機は、AFのみならず“すべて”をイメージセンサーの能力に掌握されているといっても過言ではないのである。

  • 画面のど真ん中で一点AFを動作させているのだけど、この明るさ状況で早くもZ 5のAFは号泣レベルの泣きを入れてくる。ブワッとゲインアップしファインダー像がガッと明るくなるのに、ピントがなかなか合わないのだ。ツラい……(NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR使用、24mm、ISO1400、1/25秒、F5.6、-1補正)

  • あくまでも個人的には、AFスピード全般や暗所で見せるAFがらみの各種挙動は、比較対象がアレだけど、Z 50の方が実力は上であるとの印象を抱くことになった。ということは、つまり、イメージセンサーのグレードはZ 50の方が上ってこと? 確かに、わりと濃厚にZ 50を使い続けてきている立場からすると、Z 50のAPS-Cセンサーって、一眼レフ「D500」の流れを汲む、どちらかといえばハイグレードなタイプなんじゃないかという気がしないでもない。ユーザーの贔屓目かもしれないけれど(NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR使用、24mm、ISO100、1/1000秒、F5.0、-1補正)

  • 273点のフォーカスポイントを活かせば、AFに頼る撮影でもフレーミングはほぼ自在。そして、暗くなけりゃAF動作に不満を感じることも少ない。ただ、スピードはちょっと控えめかな?(NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR使用、200mm、ISO640、1/1000秒、F6.3、-1.3補正)

  • EVFの表示クオリティは高く、撮影時の視認性と仕上がりイメージの把握については、100%納得の使い心地が得られている。一方、撮影済み画像の拡大確認をEVFで行うときは、特にピント精度を含む細部の描写再現について、実際の写りとは異なる印象の画が出力されているように感じることが多かったようにも思う(NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR使用、24mm、ISO800、1/1000秒、F4.0、-1補正)

うーん、ジツに難しい。Z 5は、基本いいカメラだ。低感度域の画質も24MP機の中ではトップレベル。ナチュラルかつリアルな質感描写を後ろ盾とするとてもよい画を紡いでくれる。でも、AFに関しては、シビアにユーザーを選ぶカメラであるという大どんでん返し。

ちなみに、今回の試用では「AF-S+シャッターボタン半押しによるフォーカスロック」を行っての撮影で、1コマレリーズした後も半押しを維持する(撮影後のシャッターボタン戻しを半押し位置までにとどめ次のレリーズを行うという手順を踏む)撮影を行っても、1コマ撮影後に即、再度のAF動作が行われてしまう動作に終始。おかげで、シャッターボタン半押しによるフォーカスロックを行ったままの連続的な撮影が思い通りにできなかったのだけど、聞くところによると仕様上は「シャッターボタンの半押しを維持すればフォーカスロックも維持される(Z 6やZ 7と同様の動作が行われる)」ハズとのことで、試用した個体に特有の挙動だった可能性も。そんなこんなを含め、AFに関しては、どうにもこうにもあまり良い印象が得られていないというのが正直なところなのだ。

ってな感じの複雑な感情を捨てきれないまま判断するならば、私なら、そうだなぁ、もう少し頑張って予算を確保し、性能が高いレベルで安定しているZ 6を買うことにするような気がするなぁ。Z 5をきっかけにZ 6の購入に踏ん切りがつくって、なんだかウマく誘導されちゃってる気がしないでもないけれど、「Z 6 II」と「Z 7 II」の影響で初代Z 6は実勢価格面でも魅力をグーンと増すハズ(希望的観測)。なぁんてことを秋の夜長に考えていたら、なんだかホントに買っちゃいそうな気がしてきたんですけど~。すでにZ 24-200mm f/4-6.3 VRを所有しているってのがデッカイ墓穴になりそうなんですけどぉ~~(笑)。

  • Z 5はオートフォーカスまわりの挙動が気になり、期待していた「Z 50のフルサイズ版」には及ばない仕上がりだ……と結論づけた落合カメラマン。先日正式発表になった「Z 6 II」「Z 7 II」の仕上がりと、旧世代となる「Z 6」「Z 7」の価格動向が早くも気になっている様子