10月14日~16日にかけて神奈川県のパシフィコ横浜にて開催されているバイオビジネスに関する展示会「BioJapan 2020」にて、山口県産業技術センターのブースでは、スペース・バイオ・ラボラトリーズならびにテクノウェルが、重力制御装置「Gravite(グラビテ)」を用いたデモを行っている。

Graviteは、回転を利用して重力の方向を変えることができる装置の1種で、直行二軸のまわりに試料を360°回転させ、重力ベクトルを時間軸で積分することで、国際宇宙ステーション(ISS)と同じ1000分の1Gの微量重力環境を実現することを可能とするもの。制御手法を変えることで3G程度までの過重力環境も構築できるという。広島大学大学院 医系科学研究科 生体環境適応科学研究室の弓削類 教授が長年の研究成果をもとに開発したもので、2015年には米国航空宇宙局(NASA)ケネディ宇宙センターの微小重力シミュレーションセンターに同装置が2台設置されるなど、海外での活用も進んでいるという。

同ブースでは、同装置を用いて、幹細胞の分化を抑制し、高効率で高品質な幹細胞培養手法を確立したことの紹介が行われていた。

ちなみに、あまりに各所からの引き合いが強く、現行機種はすべて販売に回してしまっているため、デモは初期バージョンのGraviteを用いて行われていた。海外などからは、より大容量に対応したGraviteの開発要望が来ているとのことで、今後、完全滅菌への対応などを含め、開発を進めていきたいとしている。

  • Gravite

    Graviteのデモの様子

また、同じブース内では、山口県下の企業が有するさまざまな技術の紹介がGravite以外にも行われている。例えば伸和精工、アノード、水戸工業の3社による高粘性培地用スフェロイド作製装置は、高粘性培地中に細胞懸濁液をスポッティングし、均一なスフェロイドの形成を効率化するシステムで、これまで人手で行っていた作業を機械化することで、細胞の死滅を軽減できるほか、デッドボリュームの最小化を図ることができるため、再生医療の低コスト化を図ることが可能になるという。

  • 高粘性培地用スフェロイド作製装置

    ブースでは、高粘性培地用スフェロイド作製装置の動作を説明する動画も流されていた

山口県としても、近隣の大学の研究成果であるシーズと、地場の産業界の持つ技術を活用することで、バイオ分野に限らず、社会のニーズに対応するソリューションの開発、事業化などを図っていきたいとしており、今後も積極的に産業活性に向けた取り組みをしていきたいとしている。