在宅ワーク普及のきっかけとなった新型コロナウイルス感染症の拡大から数カ月。将来の働き方についての研究も進んでいる。ワークライフバランスやリモートワーク、職場や仕事に関する最新の研究を題材に執筆を行うロンドン在住のAdi Gaskellさんは、Forbesの記事「New Research Suggests The Future Of Work Is A Flexible One」でニューノーマルのキーワードには柔軟性が欠かせないことを述べている。

英ケント大学で社会政策学のHeejung Chung博士がはじめたWAF(Work Autonomu Flexibility and Work-Life Balance)Projectは、コロナ禍以前からフレックスタイムや在宅勤務の有効性、労働の自律性と柔軟性を研究している。同プロジェクトは5月から6月のコロナ禍に、英国在住の約1500人を対象にサーベイを行っている。

対象の約7割が18歳未満の子供を持つ親で「家族」と「職場」の衝突が如実に表れるであろう在宅勤務の調査。以前より生産性が上がったと回答したのは平均で30%という結果だが、単身女性の39%、男性の36%に対して母親である女性は26%、父親である男性は27%と、やはり子供を持つ立場では、簡単に生産性を上げることは難しいようだ。

仕事が家事の妨げになると回答する母親は49%(同意32%、強く同意17%)、父親は40%(同意30%、強く同意10%)。家族が仕事の時間の妨げになると回答する母親も同じく49%(同意37%、強く同意12%)、父親は32%(同意27%、強く同意5%)と、やはり母親が仕事と家事の衝突に遭遇してしまう現実を示している。

一方、多くの家事で男性のサポートも試みられている。調理56→50%、洗濯掃除65→56%、ルーティンな子供のケア60→47%、非ルーティンな子供のケア52→44%、教育60→55%とコロナ前の調査と比べると女性の家事も減少している。サポート度合いに関するアンケートでは必ずしも男性の言い分が額面通りでは無いようだが、いずれにしてもコロナという職場・家庭にまたがる突然の禍に対して、協力して柔軟に対峙している様子が窺える。

Adi Gaskellさんは、多くの苦労を伴うコロナ禍の勤務であっても過半数がコロナ収束後も、現在の家族の時間と仕事の両立に柔軟性をもって対応したいというデータに触れ、そのためにはより多くの企業側のサポートが必要なことを説いている。

実際、英国でのこの調査では管理職の90%が従業員の在宅ワークを支持すると回答、72%の従業員が自分の上司はコロナ禍の間ワーク・ライフ・バランスに配慮してくれたと回答している。また、ビジネスアプリケーションをSaaSで提供する企業Zohoが、リモートワークのための電話によるヘルプラインを設置し、ツールではなく人間的なアプローチで個々の従業員の事情に応じた対応に力を入れていることを紹介している。

"Flexible"は、情緒的な斟酌という意味ではない。Oxford Languagesの辞書によると"able to be easily modified to respond to altered circumstances"と出てくる。環境に応じて状況をすばやく修正して対応することだ。人それぞれの状況を一律に対応するのではなく、相手の事情や得手不得手をよく知ることで、それに応じた代替で応対することだ。互いをよく知ることで、限られた条件下でも可能性を広げられる。