事業開発パートナーに新規サービスのユーザー、ビジネスアライアンス…企業は「(あらゆるジャンルの)人を探したい」ニーズを抱えている。「個人のつながり」を活用することで、そのような課題を解決に導くサービスが存在する。

企業からの「こんな人に会いたい」ニーズを掲載し、「応援したい」「共感した」と感じたユーザーが、ニーズに合った友人や知人を紹介し、課題を解決するプラットフォーム「Spready」だ。

雇用前提でなくても、企業は常に人探しをしている

どんな人でも知人を6人辿ると世界の誰とでもつながる-社会学の「6次の隔たり理論(Six Degrees of Separation)」だ。SNSの普及で6次から4次程度に縮まっているといわれる。この仮説を元に生まれたSpreadyは、2019年3月にβ版をローンチ、同年5月に正式ローンチとなった。

社会人の人探しというと、一般的に想定されるのは「転職(主には正社員雇用)」だろう。しかし、Spreadyでは転職につながる人探しのニーズは掲載しない。

新規事業立ち上げ時における社外の知見探しや、事業提携・パートナー探しなどを対象に掲載し、2020年8月末時点でサービスを通じた“おつなぎ件数”は1500件を突破した。

「これまで、組織と人は転職や就職など、雇用に関する形でしか出会う方法がありませんでした。しかし企業は、直接的な雇用を前提としなくても、人を探すという行為を常に行っています。採用を前提としない人探しのニーズを叶えるために作ったのがSpreadyです」

こう話すのはSpreadyの開発・運営を行う、スプレディ株式会社 代表取締役の佐古雅亮氏。

  • 右から、スプレディ共同創業者・取締役 柳川裕美氏、代表取締役 佐古雅亮氏、取締役・最高技術責任者 守宏知氏(写真はスプレディ提供)

このオンライン時代、産学連携や事業提携につながった事例や、ユーザーヒアリング、潜在顧客発掘、また副業や業務委託など、多種多様な新しいつながりを創出中のSpready。

前半ではSpreadyの仕組みについて、後半では同サービスを通じて生まれた、産学連携や事業提携などにつながった事例を佐古氏と共同創業者・取締役の柳川裕美氏に深掘りする。

「個人の信用」をベースに個人と法人が結びつく

こちらはSpreadyに掲載された案件の一例(※)だ。企業はサービス利用登録を行い、会いたい個人・法人の概要を決めて案件を掲載。すると、2つの方法で個人・法人と出会うことができる。

※取り上げた案件は記事掲載当時のものです。最新の案件はSpreadyサイトをご確認ください。

案件を目にした「スプレッダー」と呼ばれる個人ユーザーが、「招待URL発行」から友人・知人を招待するか、ユーザー自身が「自分が応募」からエントリーするか、そのいずれかのやり方でつながりが発生する。

2020年8月27日時点で、スプレッダーは2875名、利用法人社数は183社。スプレッダーの50%が30代で、35%が20代、13%が40代であり、社外との交流を行うことも多い、ビジネス現役世代を中心に利用されている。

「Spreadyに案件を掲載している企業には、スプレッダーから紹介を受けた個人・法人の他、スプレッダー自身の情報も伝わります。そのため、スプレッダーは必然的に『この人なら自信を持っておすすめしたい』という個人・法人を紹介することになります。スプレッダー個人の信用をベースに、つながりが生まれていく点がSpreadyの特徴です」(佐古氏)

どう考えてもその案件とは合わない個人・法人を紹介すると、スプレッダー自身の信用が低下する可能性がある。自分の名前で誰かを紹介する際に、その案件にマッチしていると思われる相手を慎重に考えることで、精度の高いつながりが発生しやすいとも言える。