人気バトルロイヤルゲーム「Fortnite」を開発・提供するゲームメーカーのEpic Games(以下Epic)が、モバイルアプリストアの収益配分モデルや課金システムに異議を唱え、プラットフォーマーであるAppleとGoogleに反旗を翻した「Epicの乱」。ドラマ『半沢直樹』を見ているような現実離れしたスピーディな展開で、この2週間で一気に視聴率を……いや、注目を高めた。その対立は「ダビデとゴリアテ」のように見なされ、ジャイアント・キリングが起こる可能性にも話題が及んでいる。

しかも、このダビデは単なる弱小な羊飼いの少年ではない。

Fortniteのユーザーアカウント数は今年5月時点で3億5,000万を超えた。Netflixの共同CEO、リード・ヘイスティングス氏に「ライバルは他のストリーミングサービスではなくFortnite」と言わしめる強力なコンテンツホルダーである。8月6日に17億8,000万ドルの資金調達ラウンドを発表した時の評価額は173億ドル(約1,830億円)だ。

弱小とはいっても相手がAppleとGoogleだからであって、今回の戦いぶりも含めて喩えるなら、4年前の大統領選に出馬したドナルド・トランプ氏だ。ファーストレディから上院議員、国務長官と米国政治の中枢で大きな力を築いてきたヒラリー・クリントン氏に対して、実業家トランプ氏の不利が予想されたが、メディアを知り尽くしたタレントでもある同氏は「メキシコとの国境に壁を作る」というような極端な主張を展開する掟破りの選挙戦略で米国民の分断を煽り、結果的に「もしトラ」を現実にした。Epicの戦いぶりも劇場的で、そして掟破りである。

  • Appleに反旗を翻すEpic

    次のアップデートでiOSデバイスのFortniteプレイヤーとはプレイできなくなるから、8月23日にEpicは「#FREEFORTNITEカップ」を開催、商品の1つに腐ったリンゴのような「タルトタイクーン」を用意

では、Epicもジャイアント・キリングを起こせるだろうか。8月24日にカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で、EpicがAppleを相手に起こした訴訟のヒアリングが行われ、「Epicの乱」の全体像やEpicの狙いが少しずつ明らかになってきた。