AmazonはほかのECサイトに比べ、製品に不具合があった場合の返品・交換のフローがきちんと整備されており、手続きの際のストレスが少ないことが特徴です。一定の確率で初期不良の発生が避けられないPC周辺機器では、Amazonを利用するメリットは非常に大きいと言えます。
海賊版製品の多さやヤラセのレビューなど、何かと槍玉に挙げられることの多いAmazon。かつてに比べると、配達までの圧倒的なスピード感にも陰りが見えていることもあり、最近はAmazonに代えて他の通販サイトを使っているという例も、SNSを見る限りは少なくないようです。
もっとも、PCの周辺機器の購入に限れば、Amazonにはひとつの大きなアドバンテージが存在します。それは「製品に不具合があった場合の返品の容易さ」です。
今回は、ショッピングサイトの品ぞろえや価格、使いやすさを比較しただけでは見えづらい、Amazonの「返品フローの簡単さ」について、他のサイトと比較しつつ、Amazonの利点を見ていきます。
不具合のある商品はフォームから簡単に返品手続きが可能
まず、Amazonの返品について知っておきたいのは、不具合のある商品は、原則として30日以内であれば返品が可能であることです。
返品の方法は、購入履歴のページを開いて「返品」をクリック。理由を選択して、詳細を記入するフォームが出てきますので、そこに記入をすれば返品の受付が完了します。あとは、表示されたラベルを印刷して荷物に同梱し、指定の業者を使って発送するだけです。
この間、販売店(Amazon)およびメーカーとやり取りすることなく作業が進められるので、非常にスムーズです。返品ラベルは自動的に出力されるので手書きの必要はありませんし、荷物の集荷についても「ゆうびんID」を持っていれば、日本郵便のサイトに移動して集荷日時を指定するだけで済みます。
代替品については、多くは「再注文」という形になりますが、Amazonの自社製品、具体的には電子書籍端末の「Kindle」シリーズや、スマートスピーカーの「Echo」シリーズなどは、再注文の必要なく交換品が手配でき、かつ手配の翌日にはもう代替品が届くというスピーディーさです。
どうやらこれらの代替品は、通常在庫と別に管理されているようで、表向きには在庫なしと表示されている場合も、代替品がスムーズに届くことがあります。
他のECサイトでの不良品交換はこんなに面倒!
「Amazonだとどれだけ簡単なのか、いまいちピンと来ない」という人のために、一般的なECサイトでは返品交換時にどのような手続きを行う必要があるかを、3つの例を紹介しましょう。いずれもこの半年間に、筆者が実際に遭遇した事例です。
【ECサイトA】購入製品:USBデバイス
【返品の手続きと流れ】
購入元サイトに連絡したところ、メーカー対応なので直接連絡を取るよう指示される。症状を添えてメーカーに連絡したところ着払いでの返品を指示され、数日後に代替品が届くも再び不良。再度メーカーに連絡後、前回と同じく着払いで返品するがしばらく音信不通になり、2週間ほど経ってから突然代替品が到着。
【ここが困った!】
2回目の交換手配は1回目と違って経過報告もなく、突如届いた交換品には1回目には添付されていた報告書がないなど、対応に一貫性がない。途中経過が見えないのは、ユーザー側からすると困りもの。また、送り状の記入や発送手配はすべて自力で行わなくてはならず、多大な手間を要した。ちなみに、これらはすべてメーカーとのやり取りで、購入元サイトは一切関知しないというスタンス。
【ECサイトB】購入製品:HDDドライブ
【返品の手続きと流れ】
異音があり購入元サイトに交換を依頼するが、そのためには不具合の詳細を仕入先に報告して承認をもらう必要があり、かつ代替品の到着時に併せて回収を行うシステムとのことで、データの移し替えが行えない事態に。1週間ほどかけて交換にこぎつけるも症状は同一で、ロット不良と判断されて最終的には代替品も返品。
【ここが困った!】
購入元サイトから仕入先に連絡を入れて承認が取れるまでに中2日程度を要したほか、ロット不良が発覚するまでの約10日間、作業が進められない事態に。最終的には、Amazonで品切れ中だった在庫が復活していたため、そちらで購入して決着。
【ECサイトC】購入製品:照明器具
【返品の手続きと流れ】
到着時に部品の破損(外装の割れ)が発覚。購入元サイトに交換を依頼するが、現物の写真がないと応じられないとのことで写真を撮影して送付。交換を要望するも、現物の引取と同時でなければ不可とのことで、タイミングが合う日まで待って交換対応。
【ここが困った!】
交換自体はスムーズに行えたが、破損箇所の写真を撮影するために、すでに再梱包が終わっていた1メートル近いサイズの照明器具を再び開梱して撮影、改めて梱包する羽目に。
まとめると、これら他社サイトは、Amazonと違って以下のような手間がかかるということになります。
- 不具合の内容を報告し、承認をもらわなくてはいけない。書類の手書きが必要なことも
- 送り状の記入や集荷の手配はすべて自力で行う必要がある
- 交換になる場合、入れ替えのタイミングを指定できない場合がある
- 返品専用のフォームが用意されておらず、メールベースのため煩雑
購入元サイトの側からすると、これらは不正な返品を行わせないための対策も兼ねているはずで、少なからず合理性を追求した結果、こうなったであろうことは容易に想像できます。ある意味、「むしろAmazonが緩すぎる」のかもしれません。
とはいえ、不運にも初期不良を引き当ててしまったユーザーの側からすると、こうした返品交換にまつわる作業は、簡単であることに越したことはありません。こんな面倒なことをするくらいなら、手間がかからないAmazonを使おう──そのような結論になるのは、ごく自然なことだといえるでしょう。
とはいえ、極端すぎる返品は慎むべき
以上のように、Amazonでは返品作業においてユーザーになるべくストレスをかけないようフローが合理化されており、一定の確率で初期不良を避けられないPC周辺機器や家電では、Amazonを利用する価値は高いといえます。
もっとも、やや不安な点もないではありません。というのは、Amazonで返品を繰り返し行っていると、アカウントが停止される可能性があることが、過去にネット上でもたびたび報告されているからです。
これらは、不具合を伴わない極端な返品、例えば類似の製品を10個買って気に入ったもの以外をまるごと返品するといった、同社の返品システムをあからさまに悪用している場合に適用されるようですが、具体的な基準は明らかになっていません。
また、これらが数量ベースなのか金額ベースなのかも不明ですので、ふだん少額の買い物ばかりしていて、たまたま購入した高額な製品で返品が発生した時は、返品に不安を覚えることもあります。というのも、同社のコンテンツサービス、具体的にはKindleなどを利用している場合、アカウントが停止されると、購入済みのコンテンツが一斉に使えなくなりかねないからです。
Amazonでは、不具合のあった製品だけでなく、ユーザーの自己都合での返品も、未開封であれば送料負担での返品を受け付けていたりと、国内の多くのECサイトでは太刀打ちできないほど返品には寛容です。とはいえ、アカウントの停止につながったり、返品システムの存続を揺るがすような極端な返品は、利用者としても慎むべきでしょう。