ソニーは、ノイズキャンセル(NC)機能や独自の音質補正機能「DSEE Extreme」を搭載したワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」を9月4日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格(税別)は40,000円前後を見込む。カラーはプラチナシルバー、ブラックの2色。

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    WH-1000XM4(ブラック)

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    WH-1000XM4(プラチナシルバー)

ソニーのフラグシップ「1000X」シリーズの第4世代モデル。人気ヘッドホン「WH-1000XM3」のデザインを継承しつつ、NC性能や音質を高めており、スマホ向けアプリ「Sony|Headphones Connect」と連携して最適なリスニング環境を自動で実現するスマート機能も新たに追加。“テレワーク時代に活躍するヘッドホン”として訴求している。

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    WH-1000XM4

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    “テレワーク時代に活躍するヘッドホン”として訴求

WH-1000XM3との主な違いは、圧縮音源をハイレゾ相当までアップコンバートして再生する音質補正技術に、AI技術による深層学習を施した「DSEE Extreme」をソニーのヘッドホンで初めて採用したこと(従来は「DSEE HX」)や、NC機能において中高音域の低減性能を高めている点。

新たに、ヘッドホンを装着したまま会話できる「スピーク・トゥ・チャット」や、ヘッドホンの付け外しで音楽を一時停止/再生できる装着検出機能を追加。スマホやPCなど2台の機器と同時接続して、シームレスに切り替えられるマルチポイント接続にも対応する(発売時に提供開始するソフトウェアアップデートで対応予定)。

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    WH-1000XM4(プラチナシルバー)を装着したところ

専用設計の40mmHDドライバーユニットを搭載し、WH-1000XM4に合わせてチューニング。高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」に内蔵しているDAC・アンプにより、ワイヤレスでも高品質な音を表現できるという。

コーデックはSBC、AAC、LDACをサポートし、LDAC接続時もイコライザー調整が可能になった。ただし、従来サポートしていたaptX、aptX HDは、第4世代モデルでは非対応となっている。

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    専用設計の40mmHDドライバーユニットを搭載。左ハウジングに装着検出用の近接センサー・加速度センサーを搭載しており、この機構に合わせて音響特性を調整しているという

進化した高音質設計、“業界最高クラス”のNC性能

個人の装着状態や、大気圧への最適化を行う「NCオプティマイザー」や、ハウジングの外側に搭載したフィードフォワードマイクと、内側のフィードバックマイクを活用する「デュアルノイズセンサーテクノロジー」といった、従来機種のノイズキャンセリング(NC)技術をWH-1000XM4に継承。

さらに、「QN1」プロセッサと高性能なBluetoothオーディオSoCが連係して毎秒700回以上センシングし、そのときの音響環境に対してリアルタイムにノイズキャンセリング処理を適応する新たなアルゴリズムを採用。QN1の持つポテンシャルをさらに引き出して、NC性能を強化した。

具体的には、特に中高音域のキャンセル性能が上がっており、飛行機などの乗り物のほか、街中やカフェの中など人の声が多い環境でも静寂性を高めたとしている。

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    NC機能用のフィードフォワードマイク

従来機種と同様に、ヘッドホンを付けたままで、外の音を取り込みつつ音楽も楽しむ「アンビエントサウンドモード」に対応。また、Headphones Connectアプリと連携し、音質モードやNC機能の設定、外音の取り込みレベルなどを変えられる。

  • WH-1000XM4

    Headphones ConnectアプリのNC設定画面

ユーザーの行動に合わせてNCと外音取り込みのバランスを自動調整する「アダプティブサウンドコントロール」は、既報の通り、Headphones Connectアプリと連携してスマホのGPSを使い、自宅や職場、駅、ジムなどユーザーが「よく行く場所」を学習させて、その場所に応じたNC/イコライザーモードに切り替えられるように進化。WH-1000XM4でも利用できる。

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    アダプティブサウンドコントロールに引き続き対応

音質面では、リアルタイムで音楽を解析し、圧縮音源を最適な音にアップスケーリングする「DSEE Extreme」を新たに搭載。ウォークマンA100/ZX500シリーズの「DSEE HX」と同様にAI技術による深層学習を施しているのが特徴で、深層学習にはソニーミュージックがもつ豊富なハイレゾカタログを活用しているという。

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    音質補正機能「DSEE Extreme」を新搭載。アプリでこの機能をオフにすることもできる

従来のDSEE HXでは、たとえばハイハットの音など高域の補完に課題があったが、DSEE Extremeではより鮮明な音を実現。圧縮により失われた音源本来の周波数特性を高精度に再現し、「特に空間の響きや、打楽器、人の声などをこれまで以上にハイレゾに近づける」としている。

DSEE ExtremeはLDAC接続時も有効で、さらに従来はできなかった「圧縮音源のDSEE Extremeオン+イコライザー調整有りの再生」もできる(ハイレゾ伝送時はイコライザーのみオン)。

再生機器の仕様によっては、LDAC伝送時にDSEE Extremeが無効になる場合があるという。アプリでこの機能をオフにすることもできる。なお、有線接続時はDSEE Extremeは使えない。

ライター・山本敦氏が音をチェック!!

ソニー1000Xシリーズの音をよく知る、ライター・山本敦氏にさっそくWH-1000XM4の実機を聴いていただいた。


ノイズキャンセリングの実力

音楽再生との一体感を重視したノイズキャンセリング性能が一段と完成度を高めています。WH-1000XM3と同様に、NCオンにしたときに耳に感じるプレッシャーが少なく、音楽を再生していない無音状態の静寂にも奥行きを感じるほどノイズフロアが下がり、雑味がなくクリアな印象です。

持続的に響く低音域のノイズに対しては、WH-1000XM3と同様に高い消音効果が期待できます。たとえば、換気扇やエアコンのファンノイズはきれいに消音されます。カフェや雑踏など人が集まる場所でNCオンにすると、人の声による喧噪もバランスよくレベルを下げつつ、話し声の輪郭をぼかしてくれます。

音楽再生を始めると、話し声は意識しなければわからないほど消音されます。屋外を移動しながらWH-1000XM4を使うときは、アダプティブサウンドコントロールの外音取り込み機能を上手に使うように心がけたいです。

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サウンドの印象

ノイズキャンセリング機能をオンにした状態で、音楽再生をチェックしてみました。

WH-1000XM4は、従来のWH-1000XM3と比べて一段と音の密度が増しています。特に中低音域の土台がどっしりと安定し、リズムセクションは肉付きが良くなっただけでなく、筋肉質な弾力感と切れ味の豊かさが感じられます。アップテンポなロックやポップス、ダンスミュージックの最先端の楽曲と相性が抜群に良いヘッドホンだと思います。

ボーカル系の楽曲は声の輪郭に明瞭度が増し、音像が立体的により近く感じられます。艶っぽくふくよかな女性ボーカルの楽曲に思わずのめり込んでしまいます。余韻の雰囲気は、WH-1000XM3はクールな感じでしたが、WH-1000XM4では温かみが強くなっています。アコースティックギターやピアノなど、生楽器の濃密な音色と質感が楽しめます。クラシックのオーケストラは細かな音の粒立ちが鮮明なうえ、弦楽器の柔らかく滑らかなハーモニーに包み込まれるような心地よさが絶品です。

LDACコーデックでハイレゾ楽曲をワイヤレス再生すると、1000Xシリーズは中高域を中心とした解像度が高く見晴らしの良いサウンドスケープが楽しめます。歴代シリーズの持ち味はそのままに、WH-1000XM4では音楽の山谷がさらにくっきりと描かれるようになり、奥行き表現に臨場感と迫力が増しています。比べながら聴くと、WH-1000XM3による音楽再生が少し平板に感じられてしまうほどでした。

DSEE Extremeの効果はオン/オフを切り換えて聴くことができます。特にCDからリッピングした音源や、音楽配信系のコンテンツを再生する時に大きな効果が実感できると思います。機能をオンにすると、足下に吸い付くような低音の安定感が加わり、演奏全体に柔らかくシームレスな一体感が生まれます。ボーカルやアコースティック楽器の音の熱量もグンと引き立ちました。DSEE Extremeは基本的にオンのまま使って良しだと思います。

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