TISは7月29日、オンラインによる記者会見を開き、スーパーアプリを提供する事業者と外部パートナーのWidget(ミニアプリ)とのスムーズなビジネスコラボレーションを実現するPAYCIERGE(ペイシェルジュ)の「Widget配信プラットフォームサービス」を9月から提供すると発表した。

  • 「Widget配信プラットフォームサービス」の概要

    「Widget配信プラットフォームサービス」の概要

スーパーアプリは、日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリを指し、メッセージングやSNSに加え、公共料金・店舗・旅行・配車・金融などスマホで一般的に行われるサービスを備え、別々のサービスが一貫したユーザー体験のもとで統合されているのが特徴。

一方、Widgetはスーパーアプリ上で提供されるWebViewを使った軽量アプリケーションで、スーパーアプリのIDに紐づけることでダウンロード不要、ログイン不要、決済設定が不要となる。

  • Widgetの概要

    Widgetの概要

TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット モビリティサービス部 シニアプロデューサーの高島玲氏は「先行する中国はネイティブアプリからミニアプリに重心がシフトしている。また、オンラインを前提にオフラインを再構成することを前提としたサービスのありようが求められ、アフターコロナでオフラインビジネスのデジタル化が急速に進む可能性が高い。また、顧客体験を向上することが必須であり、自社サービスに加え、親和性のある他社サービスを組み座せてユーザーに選ばれるプラットフォームを確立していくことが必要だ」との認識を示す。

  • TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット モビリティサービス部 シニアプロデューサーの高島玲氏

    TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット モビリティサービス部 シニアプロデューサーの高島玲氏

また、同氏は「日本でもLINEやPayPay、NTTドコモ、auがスーパーアプリ戦略を公表している。自社サービスだけでなく、他社サービスを早く、多く集めることが重要となり、新サービスを利用することで多くのミニアプリとの接続が短期間で可能になる」と述べた。

新サービスは、1つのアプリの中で店舗予約や決済など日常生活のさまざまな場面でサービスを提供したいスーパーアプリ事業者と、そのスーパーアプリ上でサービスを展開させたいWidget事業者をつなぐプラットフォームだ。

新サービスを活用することで、スーパーアプリ事業者はWidgetを集める手間やそれに関わる業務などを削減できるほか、Widget事業者は自社のWidget開発/運用の負荷を低減し、短期間で複数のスーパーアプリに配信できるという。

具体的には、スーパーアプリ事業者はWidgetとの接続、審査、問い合わせなどの業務/システム運用を同社に一括して任せることが可能なことに加え、自社でWidget事業者を集める手間を削減し、新たにWidget事業者と接続する際も自社でつなぐよりコストを抑えることを可能としている。また、Widgetによる自社アプリの機能充実と共通IDによる経済圏の価値向上(SDK:ソフトウェア開発キット)の取り込みにより、Widget配信プラットフォームのすべてのサービスが利用できる。

Widget事業者は、自社のWidgetをスーパーアプリと短期間で接続を可能とし、ユーザーのUXに配慮したWidget事業者が開発しやすい技術/環境を提供するほか、スーパーアプリをまたがる匿名ID(Widget 仮想ID)を提供するとともに、複数のスーパーアプリという販売チャネルの獲得、開発/運用負荷の低減(Widget配信プラットフォームに接続すれはスーパーアプリの個別対応が不要)が図れるという。

エンドユーザーは、アプリごとのダウンロードが不要、会員登録の負荷軽減になり、共通IDでさまざまなサービスとシームレスにつながることでモバイル上での新たな顧客体験を可能としている。

スーパーアプリ向けの主な機能は、初期開発において、規約同意・紐づけ情報保有を実施。ユーザーがスーパーアプリ上で利用したいサービスを選択するとIDを連携し、ウォレット内の機能やデータへのアクセスを認可。Widget向けに提供するアプリの機能に合わせてAPIを装備しており、同社がWidgetの審査、問い合わせを含めた業務運用/システム運用を実施する。

Widget向けの主な機能は、1つのWidgetで複数のスーパーアプリに機能を提供でき、Widget開発者は共通化された処理を呼び出すだけですべてのプラットフォームに合わせた処理を可能(抽象化)としている。Widget表示にPWA(Progressive Web Apps:モバイルWebサイトをネイティブアプリのように動作させる仕組み)を採用することでスピーディーな挙動を実現し、ユーザーにとっての操作性を向上すると同時に、Widget開発者向けにIDE(統合開発環境)を提供し、構築をサポートするという。

  • 「Widget配信プラットフォームサービス」のビジネスモデル

    「Widget配信プラットフォームサービス」のビジネスモデル

今後、同社では3段階で新サービスを拡張し、Step1ではスーパーアプリ事業者向けにWidgetを管理/配信する基盤を提供するITサービス事業、Step2ではWidget事業者向けにスーパーアプリをまたがり匿名IDを紐づけするCRM実現データ、ETL(システム間データ連携を効率的に構築するためのツール)事業、OMO機能群を提供するCRMサービス事業、Step3では広告代理店などにWidget表示エリアの広告枠を提供するアドサービス事業を計画している。

  • 今後「Widget配信プラットフォームサービス」を拡張していく

    今後「Widget配信プラットフォームサービス」を拡張していく

構築環境は堅牢なサービスプラットフォームとして同社が管理しているAmazon Web Services(AWS)基盤上に実装する。提供価格はスーパーアプリ事業者向けが導入サービスは個別見積、運用サービスは10Widgetまで20万円/Widget/月、11Widget以降は10万円/Widget/月となる。また、Widget事業者向けが無償(スーパーアプリ事業者、Widget事業者間で送客手数料等の経済条件がサービス利用料と別に発生することがある)。

導入期間は、Widget化の導入期間は最短で3カ月~を想定し、同社では新サービスを通信キャリア・鉄道事業者・銀行などのスーパーアプリ事業者と、飲食予約・モバイルオーダー・医療予約などの生活サービスを提供するWidget事業者向けに提案し、2025年までにスーパーアプリ事業者20社、Widget事業者200社の獲得を目指す。