Windows 10XのWin32アプリに関する仕様変更や、そのWindows 10Xを搭載するSurface Neoのリリース時期が2021年以降に延期、Windows Virtual Desktopを基盤としたクラウドベースのWindows OS開発といった興味深いウワサが流れている。しかし今回は、Microsoftが米国時間2020年7月22日から開催した年次イベント「Microsoft Inspire 2020」で発表したMicrosoft Edgeの新機能に注目してみたい。
Microsoftは、民間のサイバーセキュリティ製品のテストや調査、分析を行うNSS Labsが今月発表したWebブラウザーのセキュリティ調査結果を引用し、Microsoft Edgeがフィッシングおよびマルウェアセキュリティレポートで最高得点を獲得したことを公式ブログで強調している。
現在のMicrosoft Edgeは、悪意のあるサイトやダウンロードから保護する「Microsoft Defender SmartScreen」や、低評価のアプリをダウンロードしない「望ましくない可能性のあるアプリをブロックする」といった機能でマルウェア保護を実現。加えてWindows 10側も、Windowsセキュリティによるリアルタイム保護機能を備えることで、ほぼ万全の防御姿勢を構築している。その結果、先の調査結果でも95.5%の高得点を獲得した(Google Chromeは86.9%、Mozilla Firefoxは85.9%、Operaは79.2%)。
新たに加わる「プロファイルの自動切り替え」機能は、Microsoft EdgeでMicrosoftアカウントと同時にAzure AD(Active Directory)アカウントを使っているユーザーに有用な機能である。各アカウントには、フォームに入力した内容や資格情報などの各種情報が格納されるが、Microsoftアカウントに業務で用いるデータがひも付くのは好ましくない。
筆者が目にした限りでは、日本マイクロソフト関係者はInPrivete機能を使ってMicrosoft Azureなどを操作していた。「プロファイルの自動切り替え」機能が備わることで、Microsoft Edgeが使うプロファイルが自動的に切り替わり、個人と業務の各種情報も切り替えが可能になるという。今回、Microsoft Edge(バージョン86.0.585.0)にAzure ADアカウントを新たに追加して動作を確認してみたのだが、プロファイルの変更をうながすメニューは現れなかった。
また、個人的に期待していたのは、モバイル(iOS・Android)版Microsoft Edgeのコレクション対応だ。コレクション機能については別記事『Edgeの「コレクション」を活用する』を参照いただくとして、肝心の同期機能が動作するまで若干の時間を要した。
iOS版は、デフォルト設定でコレクションが同期対象に含まれていない。そこでお気に入りなどと同じように同期対象に加えてから約30分、アプリを起動し続けたところ、ようやくコレクションが同期することを確認できた。その後、モバイル版で一部のコレクションを削除したところ、PC版のコレクションには即座に反映。もう少し使い込んでみないと分からない部分はあるが、十分に有用であると思っている。
このほかにも、PDFの編集や読み上げのサポートをはじめ、54言語に対する翻訳機能がGA(一般提供)に達して安定版Microsoft Edgeでも利用可能になったという。Microsoftは現在、Microsoft AzureやMicrosoft Dynamics 365などクラウドビジネスソリューションに注力しているが、Windows 10やMicrosoft Edgeなど消費者向けソリューションもきちんと開発を続けているようだ。