日本テラデータは6月30日、5月に日本の消費者1000人を対象に実施した「新型コロナによる消費者行動と意識への影響」調査の分析結果を発表した。同調査は、新型コロナウイルスと関連した消費者の不安、不自由、孤立、情報について、同社の委託によりLucidがインターネットパネルに対するアンケートを実施したもので、性別、年齢、地域を日本の人口統計の割合にもとづき、1000サンプルから回収した。

新型コロナウイルスの蔓延は、消費者の購買行動や消費形態を変えただけではなく、消費者の意識そのものに対しても影響を与えたと考えられ、インターネットが普及した現在、消費者のライフスタイルも多様化している。男性よりも女性がパンデミックの影響への不安感が高く、政府からの支援も期待できないと感じる傾向があり、SNSを利用した情報発信の傾向は男性の方が強く、女性は政府に対する不信感も抱きやすいため、女性ほど誠実な態度で接することが求められる。

  • 男女別にみた不安感のグラフ

    男女別にみた不安感のグラフ

  • 男女別にみた政府への不信感のグラフ

    男女別にみた政府への不信感のグラフ

  • 男女別にみた情報発信のグラフ

    男女別にみた情報発信のグラフ

最初に新型コロナのパンデミックが始まった北海道での不安感が強く、情報サービスが整っている関東では情報過多の状態でもあり、逆に不安感を煽っているほか、核家族の多い関東では依存せずに自分で何とかするといった意識が強いという。

30代では、自治体・政府が何とかしてくれるという依存意識が薄れ、自分で何とかしなければならいという意識が最も強くなる傾向があり、現在直面している高齢化社会をサポートすることへの負担感、今後年金があてにならないとう絶望感などと相まって、自らを律してなんとかしていかなければという強い意識の表れだと考えられるとしている。

また、直接収入に影響を受けた消費者の不安感は高く、自らなんとかしなければならないという意識が強くなり、自己判断を下すためにも情報収集とSNSを利用した情報発信を介して、自分の考え方を表す傾向が高まることから、企業は詳細な情報開示が求められるという。

  • 30代の危機意識が高いという

    30代の危機意識が高いという

さらに、経営者ほど不安感を強く抱き、SNSを利用して自らの考えを社員・社会に発信し、企業としての信頼感を維持するように努め、社員・社会もそれに納得しようとする傾向にある。

  • 経営者は不安を抱えている

    経営者は不安を抱えている

これらの状況を踏まえて、同社では3つの提言をしている。1つ目は「消費者を正しく捉えるには、消費者の行動データだけでなく、意識データを考慮する必要がある。しかしながら、一般的に意識は測定できないため、行動データおよび状況データから推測する。機械学習を活用しながら、消費者の意識変化を捉えることが求められる」。

これは、企業も消費者と直接オンラインでつながるDirect-to-Consumerの機会が増加し、消費者に直接役立つ(寄り添う)アドバイスやサービス提供が求められ、企業は自社の製品・サービスの利用状況、利用者のコメント、今後の見通しなどについて積極的に開示し、消費者の意思決定をサポートすることで、消費者との信頼関係を築くようになるという。

新型コロナウイルスによる影響で消費者は生活での不安感、孤立感、情報格差などの意識が高まり、特に若い世代の男性は自分で何とかしなければという自己管理の必要性を強く抱くようになるとともに、SNSを介して自らの意見を発信する意向が高まり、企業からの情報提供が期待される。消費者と企業が直接つながり情報をやりとりすることで、お互いの信頼関係を築くことが、これからの企業体質として重要なポイントになる。

2つ目は「社会交流の単位が縮小した分散組織では、小組織または個人単位での判断を下す状況が多くなる。個人の情報発信傾向は高まり、企業も情報提供を求められる。このような状況では、企業はあらゆるチャネルからVoC(Voice of Customer)をリアルタイムに捉え、AIを活用しながら適切にリスポンスする必要がある」。

新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、これまで利用しなかったオンラインサービスを新たに利用するようになった消費者も多く、従来はサービスを利用していなかった消費者のうち、インターネットバンキングで8.0%、ネットショッピングで18.3%、デリバリーサービスで5.5%が、今回初めて利用するようになった。

これらサービスをいまでも利用していない消費者の意識と比較すると、不安感、孤立感、政府・自治体への不信感などの意識が緩和される傾向が見られ、新たな生活様式が求められるウィズコロナの時代に、多様なオンラインサービスは消費者に利便性をもたらし、実際に体験することで不安や孤独感を低減させるのに役立つとしている。

3つ目は「対人を回避した新しいオンラインサービスが台頭する中、その普及のためには、いままで以上に体験させ、消費者の自己実現を支援することが重要となる。ユーザは体験をSNSで共有し、企業はフィードバックにもとづいて修正する協調的創造が必要となる。企業が提供するサービスでは、初期段階からフィードバックを受け入れアジャイルな継続的改善が求められる」。

これからのウィズコロナ時代、消費者の新たな行動様式による変化を適切に捉え、企業と新しい関係を構築するにはアナリティクスが重要となり、企業は消費者の意識や意向を捉えて速やかにフィードバックすることが求められ、それを実践することが企業価値を向上させる新たなポイントであることが判明したという。