続いて、リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏が「After/Withコロナ時代においての新人育成のニューノーマル」について説明した。

  • リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏

桑原氏は「昨今の新型コロナウイルスの影響により、正解がなく不確実なVUCA(※1)環境は加速された。新入社員の育成において、マネジメントのアップデートの最大の機会となっている」と述べ、「発想のアップデート」と「育成のアップデート」の両方を同時に行っていくことが重要であるとした。

(※1)Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語。現在の社会経済環境が予測困難な状況に直面しているという意味。

発想のアップデート

「若者は未熟だ」「若者を組織に適応させる」「教育とは教えるものだ」といった考えを重視しているマネジメント層は少なくないはずだ。しかし、コロナによって加速されているVUCA環境においては、「若者の個性を十分に生かす」「逆に若者のから学ぶ」というスタンスを持つことが重要とされるという。

桑原氏は「若者から学び生かすべき具体的なポイントとしては、世の中の役に立ってるかどうかを重視するソーシャルインパクトの視界、デジタルネイティブの知識・リソースなどが考えられる」との分析を示した。

  • 新人育成におけるニューノーマルの方向性

育成のアップデート

「何を育てるか」に関すの考え方もアップデートしなければならない。以前までは、「言われてきたことをできる力」や「正解を遂行する力」が新入社員に求められていたが、今後は「自分で考え学び、探究する力」を育てていくべきだという。

  • Try & Learnサイクル

その具体的な手順として、同社は「Try & Learnサイクル」を推奨している。「(1)Focus:目的・相手の期待を具体化する→(2)Action:自分なりに試行錯誤し、考えを深めていく→(3)Reflection:失敗・成功経験から内省し、次に生かすといったサイクルを繰り返すことで、自身の成長と仕事の成果につながるとしている。

同時に「どう育てるか」のアップデートも必要だ。従来の育て方では、「上司から部下へ」「これまでの経験・正しいやり方を教える」が主流であったが、VUCA環境においては「自律的な学びを支援し、ともに考え学びあう」受信・共創型の育成が求められるという。

具体的には、以下のようなことが有効だそうだ。

  • 答えは言わずに考える視点だけを提示する
  • 本人の素直で率直な思考・感情を妨げない(忖度させない)
  • 意見を伝える場合は、材料・選択肢を渡すイメージ(決めるのは相手)
  • すぐ答えが返ってこない場合は、じっくり待つ

桑原氏は「新入社員の行動を阻害するのは、やる気や能力よりも『不安と恐れ』。不安や恐れを取り除き、心理的安全を築き上げることで、新入社員の挑戦を促すことができる」と話した。自分自身がありのままでいられる環境が、個々人の能力を最大限に引き出すということだ。