事前に噂されていた「ARM Mac」が現実のものとなった。Appleは6月22日(北米時間)、開発者向けカンファレンス「WWDC 2020」の基調講演で、「Mac」のメインプロセッサを現在のIntel製から、自社設計の独自プロセッサへと移行する計画を正式に発表した。PowerPCからIntel Coreへと移行した、2006年のいわゆる「Intel Mac」の登場以来の変更となる。
基調講演のなかで「Apple Silicon (アップルシリコン)」と呼ばれた今回の新たなMac用プロセッサは、高性能なiPad Proや、省電力なApple Watchのプロセッサ開発の経験を活かし、Mac OS向けに最新のテクノロジを加えたものだという。基本的にはiOS向けのAシリーズを発展させたARMアーキテクチャがベースのSoCで、高性能な独自GPUや、AI向けのニューラルエンジンなどを統合している。基調講演では現行iPad Proが採用するA12Z bionic SoCのシステム上でMac OSをスムーズに動作させるデモも披露した。
AppleはmacOSの次のメジャーリリースである「macOS Big Sur」で、今回のApple Siliconへの最適化を行うとしている。MacがARMベースのAシリーズSoCに移行することにより、iOSアプリとiPadOSアプリをMacで利用することが容易になる。Appleは開発者に対し、Intel Macをサポートしながら、ARM Macでもそのままネイティブ動作する単一コードのアプリを簡単に作成できるようになるとアピールしている。
開発者向けにはUniversal App Quick Start Programの提供を開始する。このプログラムでは各種ドキュメントやサポート、macOS Big SurとXcode 12のベータ版、そしてA12Z Bionic SoCベースのカスタム版「Mac Mini」を開発キットとして用意する。
Apple Siliconを採用する最初のARM Macは、2020年の年末に製品が市場投入される見込みだ。一方で、Intel Macについてもサポートを継続すると説明しており、Intelベースの新しいMacの開発も引き続き行っているという。AシリーズSoCの特徴から予想すると、少なくともしばらくの間は、例えばモバイル用途での電力性能が求められるMacBook AirのようなMacはARM Macへ移行しつつ、Mac Proなどトップ性能が求められるMacではIntel Macを、といった使い分けがされるのかもしれない。