米国時間の6月10日にAndroidの次期メジャーバージョン「Android 11」のベータ版「Android 11 Beta 1」の提供が始まった。
Android 11 Beta 1は、最終版のAPIを使用してテストするビルドであり、Google Playでの公開が始まる。Android 11開発の大きなマイルストーンだが、GoogleはこれまでBeta 1のリリースを2度延期していた。最初は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による延期。例年ベータ版をリリースしてきた開発者カンファレンスGoogle I/O (5月開催)が完全中止になり、その時点で開発スケジュールを見直し、ベータ版については公開を急がず、開発コミュニティが変化に対応できるように5月にデベロッパープレビュー4をリリースして調整した。2度目は、6月上旬の米国の社会情勢の不安定化の影響。6月3日にオンラインイベント「Android11: The Beta Launch Show」の開催を予定していたが、米国で白人警官による黒人暴行死に端を発した抗議活動が拡大したため、オンラインイベントを中止してBeta 1のリリースも延期した。
Beta 1のリリースが遅れたものの、今後は7月にBeta 2、8月にBeta 3をリリースする予定。現時点で、最終版のリリース時期は当初の予定通り「2020年第3四半期」となっている。
Android 11 Beta 1を導入できるデバイスは、Pixel 2/XL、Pixel 3/XL、Pixel 3a/XL、Pixel 4/XLなど。Pixel用Androidベータプログラムに登録することで、OTA (Over-the-Air)アップデートを受けられるようになる。
Android 11の強化ポイント
Beta 1のリリースによって、Android 11の正式版の全容が見えてきた。開発者向けブログでは、Android 11 Beta 1のテーマとして「ピープル」「コントロール」「プライバシー」の3つを挙げている。バージョン1.0のリリースから今年で12年目になるAndroidは、豊富な機能を備えた成熟したモバイルプラットフォームである。Android 11でもたくさんの機能の追加や強化が行われるが、新規の機能追加ではなく、今ある機能を改善し、ユーザー体験の向上に力を注ぐことに軸足を置いたアップデートになっている。
ピープルは、Andoridをよりユーザーセントリックにする改善であり、例えば通知エリアにメッセージング・アプリ用のConversation (会話)セクションを設けた。デバイスで使用している全てのメッセージング・アプリの通知を一カ所で確認でき、返信したり、または重要な会話に優先フラグを付けるなど、通知から全ての会話に対応できる。また、新機能の「Bubbles」に対応するアプリなら、メッセージング・アプリとの間を行き来することなく、オーバーレイのユーザーインターフェイスを使ったマルチタスクで会話を継続できる。
オンデバイスAIとフェデレーションラーニングを活用したサポートも強化点の1つ。ユーザーのプライバシーを保護しながらインテリジェントにユーザー向けの提案を行う。例えば、Android 11のGboardで入力すると、関連した絵文字やテキストを自動的にオートフィル機能で提案する。
コントロール関連では、照明、サーモスタット、カメラ、ロックといったGoogle Homeアプリで管理するスマートデバイスの操作が改善される。電源ボタンを長押しすると現れる画面にHomeセクションが設けられ、照明の明るさや部屋の温度を調節したり、ドアの鍵のロック/アンロックなど、Homeアプリにアクセスすることなくすばやく操作できるようになる。電源ボタンの長押しからアクセスする画面ではほかにも、電源オフ、再起動、緊急情報、Google Payなどを利用できる。
また、画面上部からスワイプダウンで引き出せるクイック設定でメディア・コントロールにアクセスできるようになる。再生操作のほか、接続しているヘッドフォンやスピーカー、TVなどを簡単に切り替えられる。
プライバシーでは、マイクやカメラといったセンサー類、位置情報などへのアクセスを許可する「アプリの権限」の管理が強化される。従来の「許可」「アプリ使用中のみ許可」「許可しない」に加えて「1回だけ許可」を与えることが可能。試用目的のアプリは「1回だけ許可」にしたり、最初は「1回だけ許可」を与えてアプリのふるまいを確認するといった使い方が可能。また、不要な権限の許可が増え続けないように、長い間使用していないアプリのアクセス許可を自動的にリセットするようにした。リセットされたアプリを起動すると、「アプリの権限」の設定画面が再び表示される。