米Appleは6月4日 (現地時間)、同社のWebサイトで「Speaking up on racism」と題したティム・クック氏 (CEO)からのメッセージを公開した。米国では、白人警官による黒人暴行死に端を発した抗議活動が急速に拡大。それに関連して略奪や暴行などが起こり、治安維持のために連邦軍を動員する意向を示したトランプ大統領に対して猛烈な反発の声が上がるなど、社会分断の様相を呈している。そうした中、多様性やインクルージョンを積極的にサポートしてきたAppleが人種差別問題に対する企業としての姿勢を示した。

  • 人種差別問題に声を上げるApple

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メッセージの中でクック氏は、差別問題の歴史を経て米国は成長し、必要な法改正が行われてきたものの、現実にはその保護が普遍的に適用されているとは言いがたく、有色人種のコミュニティは今も差別とトラウマに耐えていると指摘。これまでの長い人種差別の歴史、そして無慈悲な暴行による死が起こった現実に、今の恐怖、痛み、そして怒りが引き起こされたことを正しく認識しなければならないとしている。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、今は多くの人が1日も早く快適な日常を取り戻したいと強く願っている。しかし、その日常は全ての人に当てはまるものではなく、平等と正義が築かれた理想的な日常を私達が目指さなければならないことを、黒人暴行死と事件に衝撃を受けた人々の反応が「悲劇的に証明しました」としている。

Appleは人々が世界をより良いものに変える力となるテクノロジーの創造をミッションとしてきた。その精神に従って引き続き、重要なリソースやテクノロジーが不足している学校システムを支援し、有色人種コミュニティに不平等をもたらす環境と戦い、またEqual Justice Initiativeのような人種問題の解決に取り組む組織に寄付を行うことを約束。目を背けられている痛みが今も多く存在する現実を踏まえ、Appleのアプローチや取り組みを再検証し、企業としてインクルージョンや多様性をさらに推進していくという。

大学までアラバマ州で過ごしたクック氏は、若い頃に様々な差別を目の当たりにしたことで、多様性やインクルージョン、人間らしさを重んじる考えを持つようになった。「Speaking up on racism」の最後に、同氏は敬愛するマーティン・ルーサー・キング Jr.牧師の「Today, our very survival depends on our ability to stay awake, to adjust to new ideas, to remain vigilant and to face the challenge of change」という言葉を紹介し、現実の問題から目をそらさず、新しい考えを受け入れ、警戒心を持ち、そして変化に挑むことの価値を訴えている。