東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2019年のM&A件数は143件で、前年(127件)より16件増え3年連続の増加となった。

2008年以降の12年間でも2008年(111件)を上回り最多となった。日銀による金融緩和を受けて企業の資金が潤沢にあることや人手不足などが背景にあるとみられる。

M&Aの取引金額は6832億円で、前年(1959億円)の3倍以上となり、3年連続の増加となった。ただ、2008年以降の12年間では、ソフトバンクグループがフィンランドのモバイルゲーム開発会社Supercellを約7700億円で売却した大型案件のあった2016年(1兆2286億円)に次ぐ2番目だった。

  • IT・ソフトウエア業界の2019年のM&A

金額トップはソフトバンクのヤフー子会社化の4564億円

取引金額のトップはソフトバンクが5月8日にヤフー(現Zホールディングス)の第三者割当増資を約4564億円で引き受け子会社化すると発表した案件。

ソフトバンクはヤフー株の持ち株比率をそれまでの12.08%から44.64%に引き上げ、役員派遣などを通じてヤフーを連結子会社(支配力基準)することにした。

ソフトバンクとヤフーはそれまでも通信関連事業で業務提携していたほか、Eコマース(電子商取引)を中心に協業を進め、2018年6月にはスマートフォン決済サービスの新会社PayPayを共同出資で設立していた。

ソフトバンク関連ではソフトバンクが11月18日に、子会社のZホールディングスと、モバイルメッセンジャーアプリ大手のLINEを2020年10月に経営統合すると発表した案件があった。その後、同案件に関してはソフトバンクとLINEの親会社である韓国のNAVERの両社が共同で2020年5月-6月にLINEをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化することを公表した。買付代金は3720億円に達する見込みという。

取引金額の2位はブリヂストンが1月22日に、オランダのトムトムのモビリティー関連事業を買収すると発表した案件。

ブリヂストンは欧州子会社を通じて、オランダのトムトム傘下で車両の運送データなどモビリティー関連事業を手がけるトムトムテレマティクスを9億1000万ユーロ(約1138億円)で買収することで合意した。

トムトムは運送や個人向けモビリティー分野のデータ基盤を提供し、ドライバーや運行状況に関する様々なデータ管理などを通じて走行の安全性や効率性、生産性の向上を目指している。

ブリヂストンは車両やタイヤの稼働状況に関するビッグデータを活用することで、商品開発やメンテナンスサービスの品質向上につなげる。

2019年のM&Aでは、このほかに取引金額200億円台が2件、100億円台が2件、100億円未満10億円以上が12件、10億円未満が44件、取引価格非公表が81件あった。