東芝と東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は1月14日、量子暗号通信を用いて、数百ギガバイトを超えるデータ量の全ゲノム配列データを伝送することに成功したと発表した。これは、世界初だという。

量子暗号通信技術による鍵配信速度は、現時点で最大でも10Mbps程度であり、全ゲノム配列データのような大規模で秘匿性の高いデータ伝送の活用には課題を抱えている。

そこで両者は、東芝および東芝欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所が開発した高速量子暗号通信技術を用いて、規模かつ秘匿性の高いゲノム解析データを伝送する際、大規模データを一度に伝送するのではなく、次世代シークエンサーのゲノム解析データ出力を量子暗号によって逐次暗号化して伝送する技術を開発した。

  • 開発したゲノム解析データ伝送システムの概要

次世代シークエンサーの動作に合わせて、逐次データ伝送を行うことで、大規模な全ゲノム解析データの伝送処理における遅延を短縮することが可能としている。

両者は、開発した技術を用いて、東芝ライフサイエンス解析センター(仙台市青葉区南吉成)に設置した次世代シークエンサーを用いて、ToMMo(仙台市青葉区星陵町)までの約7km間に敷設された光ファイバー専用回線を介したデータの伝送実証を実施。

ToMMoが保有するDNA検体を対象とした、全ゲノム配列解析から出力される約2兆3000億塩基のヒトゲノム情報を、量子暗号通信によって逐次暗号化・逐次伝送させ、解析処理完了から遅延なく、リアルタイムで伝送できたという。

  • 伝送拠点と伝送経路の概要