ビジネスジェット機と保安検査と出入国

ビジネスジェット機は「VIPがお望みの時にお望みの場所に飛ぶための手段」という色彩が濃いから、民航の定期便を利用する時とは違うところがいろいろある。

まず、保安検査。そもそも、保安検査とはハイジャック対策のためにやるものであり、不特定多数の乗客が乗り込む民航機だからこそ、必要になる。素性が知れている特定少数の人しか乗らないビジネスジェット機では、乗客が機体を乗っ取る事態は考えにくく、保安検査の必然性がそもそもないのだ。

次に、ターミナル。空港によって事情が異なるが、近年、ビジネスジェット機の受け入れに力を入れている羽田空港みたいに、民航機とは別にビジネスジェット機専用のターミナルを用意する事例がある。(参照 : 羽田空港Webサイト)

また、アメリカでは、民航機が使用する空港とは別に、ビジネスジェット機など、個人レベルの機体を受け入れる空港が存在する場合がある。

ただ、保安検査が必要ないといっても、出入国まで好き勝手にやられたのでは問題だし、禁制品の密輸なんてやられても困る。だから、ビジネスジェット機用のターミナルにも当然ながら、税関・出入国・検疫(CIQ : Customs, Immigration and Quarantine)の施設がある。

日本の場合、常に人員を張り付けておくほどのニーズはないので、離着陸のための時間枠(スロット)や駐機スペース(スポット)の確保、使用許可の申請、CIQ人員確保の連絡、といった手続きが事前に必要になる。(参照 : 国土交通省Webサイト)

本当に好き勝手に出入りできるわけではない(ことになっている)のだが、定期便の旅客機を使用する場合と比較すると、抜け穴があるのではないか、との懸念はあった。そして実際、その通りの事件が起きてしまったわけだ。

なお、専用ターミナルがない空港では、定期便の利用者と同じルートでCIQの手続きを行うことになる。専用ターミナルがある場合と比べると時間の面で不利だが、定期便の発着とかち合わなければ、あまり問題にはならないと思われる。

ビジネスジェット機の正体を知るには?

最後に、オマケみたいな話を1つ。

民航機と違い、オーナーと運航会社が同じとは限らない上に、複数のオーナーが共同所有していれば、特定のオーナーに合わせたカラーリングを施すわけにもいかない。だから、外観だけ見ても、ビジネスジェット機の正体(というと大袈裟だが、機種、オーナー、運航会社など)を知るのは難しい。

しかし、どんな飛行機でもどこかの国で登録はなされているわけで、登録記号がわかれば、正体を知る役に立つ。大抵の場合、登録記号でネット検索をかければ、なにがしかの情報は出てくる。目撃あるいは撮影した時点で誰が乗っていたか、まではわからないにしても。