安価・手軽なツール紹介で中小企業のニーズにも対応

現在、国を挙げて導入が進められているテレワークだが、企業規模で導入の目的などの違いはあるのだろうか。

湯田氏によると、中小企業の場合、社員が辞めるのを防ぎたいというきっかけから、テレワークの導入を検討するケースが多く、次に採用を有利に進めるためという視点が多いそうだ。例えば、「1人しかいない経理担当者が結婚を機に退職してしまうのは困る。あの人が辞めてしまうくらいなら、コストをかけてでもテレワークを導入しよう」といった話はよく聞くそうだ。

一方、大企業では、制度の整備という視点からの導入が多いが、転居や移動に伴う引き継ぎをテレワークでサポートするといったやり方も増えてきているようだ。

また、中小企業ではコストが重視されがちだが、セキュリティを保ちながら容易にテレワークを実現する手法を知ることで、一歩踏み出す機会にもなっているという。

「例えば、サーバの購入が必要ではないかと悩んでいる方に、『USBタイプのリモートアクセスツールを自宅のPCに取り付けるだけで、月額1000円程度でテレワークを実現できますよ』と案内すると、『だったら、やってみよう』となることも多いですね」と湯田氏。

安価に利用できるツールの紹介に加え、サテライトオフィスの検索や簡易な勤怠管理機能も提供するスマートフォン・アプリ「TOKYOテレワークアプリ」を無償で提供するなど、東京テレワーク推進センター自身もテレワーク導入のハードルを下げるソリューションを提供中だ。

  • 「TOKYOテレワークアプリ」では、近隣のサテライトオフィスなどを検索できる

  • 「TOKYOテレワークアプリ」の「簡易テレワーク勤怠管理」機能を使えば、自分の勤怠を記録して報告もできる

無料訪問相談や採用マッチングイベントも利用可能

さらに、基本的な情報収集や体験をした後で必要となる部分のサポートも充実している。就業規則の改訂や労務管理など、深掘りした情報が欲しい場合は、センターに常駐する社会保険労務士に相談することができるほか、複数ある助成金の活用に関する相談も行える。導入については、事業所を訪問して個別にコンサルティングを無料で受けることができる。

「方針策定、現場の実態調査などをコンサルタントが行います。コンサルティングの基本的な流れは存在しますが、その企業に合った柔軟な対応も可能で、中には最後の回は社員研修にしてほしいという場合もありますし、経営層の説得を支援することもあります。制度整備や上司への説明は外部の人間のほうがスムーズに進むこともあるので、うまく利用していただきたいですね」と湯田氏。

さらに、採用につながる求人マッチングイベントも毎月開催している。最初に、求職者向けのテレワーク就労の心得セミナーを開催し、その後で参加企業による企業説明会が行われ、最後に就職面接会へとつながる。毎回多数の求職者が参加し、採用決定が出る人気イベントだ。

「ブランクのある方だけでなく、現役で働いている方の参加も多いようです。制度面や実施実態について、『今の会社はこうだけれど』といった切り込んだ質問も出てきます。当初の目的は情報収集だったけれど、当日に説明を行った企業に就職することになったという例もあります」と、湯田氏はマッチングイベントが活発に利用されている様子を語った。

東京都でテレワークが導入されている企業は、2017年時点では6.8%しかなかったが、2019年には25.1%まで増えている。さらに、求人募集もテレワークを導入していることを明記すると応募数が1.6倍になるというデータもある。

加えて、2020年の東京五輪開催時は、交通混雑を避ける方法としてテレワークの活用が推奨されており、働く人においてもニーズが高まっているのがわかる状態だ。

情報のアップデートができていない自覚がある場合はもちろん、自社のテレワーク活用に不安がある場合、コスト面・制度面での対応に悩んでいる場合など、テレワークに関する課題を抱えている企業には、とりあえず1度利用していただきたい施設だ。