Microsoftの音声アシスタント「Cortana(コルタナ)」、日本語を使う我々が使う場面は多くないだろう。英語で提供されるサービスは比較的豊富だが、日本語環境で利用できる機能はさほど多くないからだ。Cornataは発表直後から積極的に使ってみたが、結局残ったのはリマインダー程度だった。

現在のCortanaは、イタリア、インド、オーストラリア、カナダ、スペイン、ドイツ、フランス、ブラジル、メキシコ、中国、日本、米国、英国の13カ国8言語で利用可能だが、Microsoftは2020年1月31日をもって、iOS用とAndroid用のCortanaアプリは多くの国で使えなくなると発表した。日本語でもアナウンスされていることから、日本市場も対象であることが分かる。Windows 10 Insider Preview 20H1の「設定」から「Cortana」を取り除いたことも証左となるだろう。

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    Windows 10 Insider Preview ビルド19028の「設定」。Windows 10 バージョン1909にある「Cortana」がなくなっている

MicrosoftはCortanaをMicrosoft 365の生産性アプリに統合させることを目指しているが、リマインダーやタスクであればMicrosoft To-Doという代替アプリが存在する。前回の記事ではマイピープルの廃止に触れているので、Microsoftが次々とWindows 10の機能を廃止しているように見えるかもしれない。

ただ、Cortana自体の開発は継続される。米国時間2019年11月20日の公式ブログでは、アプリ化したCortanaの新機能に触れている。メール作成や閲覧、予定の作成や確認、アプリの起動が可能になるというが、本稿執筆時点では英語環境のみで利用可能。日本語環境では一切の動作を確認できない。

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    Windows 10 Insider Previewに提供が始まったアプリ版Cortana。日本語環境では設定も不可能

歴史を振り返ると、2014年4月の開発者向け年次カンファレンス「Build 2014」で初登場したCortanaは、2015年にリリースしたWindows 10に搭載し、2015年末にはiOS版やAndroid版も登場した。しかし、音声AIアシスタントはCortanaに限らず、AppleのSiri、AmazonのAlexa、Googleアシスタント、LINEのClovaなどいくつもある。競争において、Cortanaは劣勢に立たされた。

2017年8月にはCortanaとAlexaのコラボレーションを発表し、2019年1月にはMicrosoft CEOのSatya Nadella氏が「協調の道を選んだ」と海外メディアが報じている。Windows 10のタスクバーとCortanaの分離を実装したのはこの頃だ。2019年5月には、UWPアプリ版Amazon AlexaをMicrosoft Storeで公開している。

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    Build 2014で披露したCortanaのデモンストレーション。Joe Belfiore氏も懐かしい

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    Windows 10で動作するAmazon Alexa。ロック画面からも利用できる

稼働デバイス数が9億に達したWindows 10だが(2019年11月時点)、今後Cortanaの主戦場はWindows 10のみとなる。このままMicrosoftがCortanaというソリューションを収縮させるのか、英語圏で基盤を作り上げた上で再び他国語圏で展開を始めるのか、現時点では分からない。前述のとおりMicrosoftは、CortanaをMicrosoft 365の生産性アプリへ統合させると述べているが、Office 365の生産性向上につながる部品のひとつに埋没するのではないだろうか。ただ、個人向けMicrosoft 365の噂を踏まえると、また別の道も見えてくるはずだ。「Cortanaにもサヨナラ」と言わざるを得ない状況に一抹の寂しさを覚える。

阿久津良和(Cactus)