日本でも本日2日にサービス提供が始まったAppleの定額動画配信サービス「Apple TV+」ですが、性描写と暴力描写が大嫌いなAppleが意外な措置をとっているようだと分かりました。

  • Appleの定額動画配信サービス「Apple TV+」

先日、提供が始まったゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade」では、徹底的にR15+以上のコンテンツが排除されています。iPhoneアプリを配信するApp Storeでも同様で、「App Store Reviewガイドライン」では、「不適切なコンテンツ」として「人間または動物の殺害、負傷、拷問、虐待のリアルな描写」「美的または情緒的な感覚ではなく、性的興奮を引き起こすような、性器または性行為の明確な記述または表示」が挙げられています。厳しい審査の目をすり抜けるケースもごくまれにあるようですが、アプリやゲームは見つかったらすぐに削除されてしまいます。

ところが事情が異なるモノがありました。それは映像コンテンツとApple Booksです。

まずはApple Booksから見ていきましょう。「ブック」アプリを開いて、検索窓にそれらしい文字列を入力してみました。結果はご覧の通り。アプリのトップからは分からないようになっていますが、どうやら「小説/文学」および「マンガ/グラフィックノベル」の中に「アダルト」と題された下位カテゴリーが存在するようです。ジャンルとして分類されているので、「トップブック」としてランキングも表示されます。

  • Apple Booksで販売されている18禁と思われるコンテンツ群

これらのタイトルが18禁コンテンツなのかどうかは判然としません。Apple Booksではその表示がないからです。しかしながら、Amazon.co.jpで同じタイトルを探してみると「警告 アダルト商品」と表示されます。Amazon.co.jpではいわゆる有害図書、東京都青少年の健全な育成に関する条例では不健全図書と呼ばれている出版物は指定を受けると商品が削除されるようになっていますが、そうでない商品は警告を表示はするものの販売は継続されるようです。Apple Booksでも同じなのかどうかは分かりませんが、少なくともAmazon.co.jpでは「アダルト商品」の警告が表示されるタイトルが販売されています。

  • iPhoneでは閲覧できないようですが、Macで「iTunesプレビュー」を見てみるとアダルトカテゴリーが設置されているのが分かります

続いて映像コンテンツです。「TV」アプリを開いて、劇場公開当時R18+指定になっている作品を探してみました。『ニンフォマニアック』『アイズ ワイド シャット』『ピアノ・レッスン』『アデル、ブルーは熱い色』などなど、次々と18禁映画が出てきます。

  • 「TV」から購入およびレンタルできる18禁コンテンツ群

どういうことなのでしょう? 性描写と暴力描写についてはヘイトレベルの姿勢で臨むAppleの、まさかのお目こぼしです。

あくまで想像ですが、映画に関しては映画倫理機構、出版物に関しては出版倫理協議会といった業界に於ける事実上の自主規制団体のチェックを通ってるからOKという判断なのではないでしょうか。もっとも映画に関しては、例に挙げた作品は芸術性の高い作家が手がけている、有名な映画賞を受賞していることから、Appleとしては、こういった評価を獲得しているコンテンツを排除するのは恥ずかしいことと認識しているのではないかと思われます。ブランドイメージを重要視するAppleにとって「芸術作品を理解できない無教養な人が集まってる企業」のレッテルを貼られるのはなんとしても避けたいはずです。

これは審査はしても「検閲」はしないと宣言しているのに等しいです。国家を例に挙げると、政府は威信にかけて、自分たちの文化商品を誇示しようとします。それが国際競争力を高める武器となると考えているからです。国際芸術祭の開催はその典型と言えます。フランスやドイツでは、国際芸術祭での展示や助成の対象となる作家やイベントに対して、それらがどのような形式をとるかを重要視しますが、内容について口出しすることはあまりありません。何故なら、作品やイベントの検閲をしている、自由な表現が軽視されていると国際社会で非難を浴びるのが嫌だからです。実際、政府を批判する内容が含まれていたとしても、しっかり助成金が降りている作品がいくつも存在します。Appleも同様のスタンスをとっているに違いありません。自分たちの威信にかけて、検閲はせず、存在を誇示しようとしているのです。

その状況下で注目したいのが、サービス提供が始った定額動画配信サービス「Apple TV+」です。スタート時に8本の作品が視聴できるのですが、その中で『ザ・モーニングショー』『SEE 暗闇の世界』『ディキンスン 若き女性詩人の憂鬱』『フォー・オール・マンカインド』『ゴーストライター』はなんと年齢制限指定が「18+」。半分以上が大人向けの内容になっているのです。今後配信が決まってる作品はあと7本ありますが、このうち『ハラ』『サーヴァント ターナー家の子守』『真相 〜偽りの重み〜』が「18+」になっているのが分かっています。なんと、「Apple TV+」のコンテンツの多くは、18歳未満お断りとなる模様なのです。

  • 「Apple TV+」は18禁コンテンツ目白押しなのが明らかに

これらのオリジナル作品で、どこまで性描写と暴力描写が果たしてあるのかは分かりません。リチャード・ギア主演の復讐譚『バスタード』は内容が社会正義に反するという理由で制作が中止になっていることから、変な期待はしないほうが良いのかもしれません。

ともあれ、日本でも「Apple TV+」始まりました。月額600円となっていますが、7日のトライアル期間があるので、全作品を見ようと思えば見られるのではないでしょうか。一部のApple製品購入者には1年間無料のキャンペーンも用意されています。果たしてどの程度まで大人向けなのか、その目で確かめてみては?